【シリーズ連載】 監禁少年 #4-2
人間とは、どれだけ恵まれていようとないものねだりをしてしまう生き物である。
いつも同じ窓からの景色。
いつも同じ天井。
いつも同じ時間に帰ってくる彼。
昨日も今日も、
きっと明日も明後日も、毎日、毎日、毎日。
「このままじゃダメだ」
口を衝いて出た言葉は、
いつもと同じ部屋に溶けていった。
徐に携帯を開き、求人サイトを見る。
今は彼の手の内にある、僕の生活。
握られている、人間としての生活。
その手から、離れてみようと思った。
バレたらきっと怒られてしまう。
けれど、彼に迷惑を掛け続けるわけにはいかない。
罪悪感だって勿論あるし、なんて心の中で言い訳をしながら履歴書を書いた。
出来上がったその紙を見て、僕の人生は数行で済んでしまうほどちっぽけで簡単なものだったのか、と少し笑えた。
この冷たい箱の中では
生きているのか死んでいるのかわからない。
今日僕は、久しぶりにその箱の蓋を開けた。
つづく
写真:No,44
作家:rin
モデル:鈴木 裕大
ロゴデザイン:育
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?