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地域通貨の6割が3年以内に休止する2つの理由

はじめまして!
株式会社ナンバーワンソリューションズの佃と申します。

今回が初投稿になりますので、まずは私の所属する会社について簡単にご紹介します。
弊社は「テクノロジーを通して世界平和を実現する」というビジョンに向かい、ブロックチェーン技術を用いたシステム開発及びコンサルティングサービスを提供しております。

ブロックチェーンと言えば、この6月に日本政府は『経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)』の中で「分散型デジタル社会の実現に向けて必要な環境整備を図る」ことを明記しました。

これを受け、今後は分散型デジタル社会に向けて新規事業を検討される方々がより一層増加することが想定されます。
より良い日本社会を築いていくため、弊社で入手する情報を留めるのではなく、公開可能な情報は記事にして投稿することで皆様のお役に立てることを願い、note投稿を始める運びとなりました。

ひいては弊社の技術力を活かし、皆様の事業を実現し発展するためのお力になれば幸いです。

それでは、今後とも宜しくお願い致します。

3年以内に6割の地域通貨が休止

初投稿となるこの記事では、弊社にお問い合わせの多い「地域通貨」をテーマに書いていきたいと思います。

地域通貨と聞いて皆さんは何を思い出されるでしょうか?
20年ほど前に地域振興券を発端として地域通貨ブームが興り、最近ではポストコロナにおけるインバウンド増加を目的としたGo To トラベル地域共通クーポンが発行され、メディアでも再び話題に挙がりました。
この20年間の動きを見ていくと、日本では延べ600以上の地域通貨を発行しています。
ただし、開始して3年以内に6割近い地域通貨が休止しており、10年以上稼働している地域通貨は全体の15%強に過ぎません。※¹

今回の記事では、そもそもなぜ地域通貨が発行され、どのようなケースで上手くいかないのかを見ていきたいと思います。

地域通貨を発行する2つのねらい

先ず、なぜ地域通貨は発行されるのでしょうか?
発行される理由としては大きく以下の二つが挙げられます。

  1. 都市部や海外への貨幣流出を防ぎ、地域内で経済を回してほしいから

  2. 疑似的に、貨幣の流通量を増やすことで経済を回すため

それぞれの理由を詳しく見ていきます。

  1. 貨幣の都会や海外への流出を防ぎ、地域内で経済を回してほしいから
    昨今、多くの地方自治体は少子高齢化の影響を受けた過疎化と、それによる税収の低下に悩まされています。さらにIT化が進むこの時代、生活に必要なものは、インターネットを通じてさほど高くない手数料で買えるようになりました。エンタメもインターネットやNetflix(ネットフリックス)といったサービスで賄うことができてしまうために、対策を打たなければ地方の中にお金が残っていかない現状があります。その対策の一環が、地域通貨の発行です。
    地域の中でのみ循環するお金を作り、地域で稼ぎ、地域で消費してもらうことを目的に地域通貨が発行されます。

  2. 疑似的に、貨幣の流通量を増やすことで、経済を回すため
    地域内での経済の循環の創生といった理由に加えて、単純に地域内に存在する通貨の量を疑似的に増やすことでインフレーションを発生させ、消費の増加を狙うといったことも発行の理由として存在します。

これらの理由から発行元としては、地方自治体や、地域の商店組合などが主導することが多いです。

地域通貨が継続できない2つの理由

しかしこれまで、数多の地域通貨が誕生しては、ひそかに消えていきました。
上記のようなメリットがあるにも関わらず、地域通貨は何故うまく継続せず、地域の仕組みとして残りにくいのでしょうか?
数々の理由があるかとは思いますが、地域通貨が根付きにくい理由として以下が挙げられます。

  1. 多額の運営コストがかかり、採算が取れなくなるケース

    運営費がかなりかかるというのが、この取り組みが続かない一番の理由ではないでしょうか。紙ベースで地域通貨を発行する場合、運営費が大体発行額の20%ほどかかると言われています。*²
    アプリなどのデジタルベースで行う場合も、サーバの運営費や、ハッキング対策のセキュリティにかかってくる費用など、色々な費用がかかってきます。
    そして、費用対効果が釣り合わないと廃止されてしまうケースが多く見受けられます。

  2. 広告宣伝の不足によって普及しないケース

    これもまたコスト関連ではありますが、多額の広告宣伝費がかかってくることがボトルネックとなり得ます。
    ここで言う広告宣伝費には、二種類存在します。

    • お客さん(ユーザー)を増やすことを目的とした広告宣伝費

    • 導入店舗を増やすことを目的とした広告宣伝費

      お客さん(ユーザー)の数を増やすために広告やキャンペーンを打ち続け、お客さんを集めて離さない努力が必要になります。また、地域通貨が交換の媒介を担う”通貨”である以上、使用するユーザーだけでなく使える店舗を増やすことが必要不可欠です。そもそも、使える店舗が少なければ定着率は下がり、お客さんが離れてしまいます。
      ですので、導入店舗はできる限り増やさなければなりません。ただし、導入してもらうにあたっての妨げとなるのが、導入手続きの煩雑さです。
      紙媒体の場合、偽造防止のためのセキュリティコストや経理をつける際の手間が発生してます。デジタルの場合はそれに加えてシステム導入にかかるコストと、レジ業務の選択肢の増加も加わります。
      なので、導入コストを上回るほどのメリットがなければ、地域通貨と連携する店舗は少なくなる傾向があります。

      普及のためにお金を十分にかけなかった場合、先述したように、地域通貨が存在はしても使い所が少ないために、地域活性の効果も縮小し、ユーザーも離れて行ってしまいます。

次回は、以上の上手くいかない理由を鑑みて、どのようにすれば上手く地域に根付いた通貨を運営することができるのかを考察していきたいと思います。

参考文献:
*¹日本における地域通貨の現状と課題:http://www.yu-cho-f.jp/wp-content/uploads/2021winter_articles05.pdf
*²(アド・スタディーズ Vol.70 2019 p33):https://www.yhmf.jp/as/.assets/vol_70_p33-36.pdf