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ゲーテ「ファウスト」:CGユングの感想への感想
こんにちは。
ゲーテの「ファウスト」の感想の追加を投稿する。
一応、「ファウスト」は読み終わったが、ファウストを読もうとしたきっかけである精神医学者C.G.ユングのファウストへの感想の詳細を「ユング自伝」に当たったので紹介して感想の感想を書く。
悪魔が必要だと考えたことは、「ユング自伝1」にこんなふうに書かれている。
彼ら(アダムとイヴ)は神の完全な創造物であった。神は完全なものだけを創り給うのである。それなのに彼らは。神が望んでおられないことをして最初の罪を犯した。そんなことがどうしてできたのだろうか。(中略)
それは神がアダムとイヴ以前に悪魔を創られたことからも明らかたった。明らかに悪魔は、アダムとイヴに罪を犯させることができたのである。全能の神は、アダムとイヴが罪を犯さなければならないように全てを調え給うた。だから、彼らが罪を犯したのは、神の意志であった
p64
ユング自伝 1―思い出・夢・思想
悪魔とはいえ、それは排除できるものではなくて、まさに必要悪と言う捉え方をすると、ゲーテの「ファウスト」の様な下支えが欲しかったと言えよう。こんなふうに「ユング自伝1」には記されている。
それ(「ファウスト」)は、奇跡的な鎮痛剤のように私のたましいに染み込んできた。「ここについに」と私(ユング)は考えた。
「悪魔を真面目に取り上げ、彼―――完全な世界を創ろうとする神の計画の裏をかく力を持っている敵との血縁関係を結んだ誰がいる。」
P94
ここからは、ユングの「ファウスト」への感想になる。ありていに言うと、あまり、高い評価ではない。
私(ユング)はファウストの行動を残念に思った。というのは、私の考えでは、彼(ファウスト)はあれほどまでに一面的であってはならず、またあんなにたやすく欺かれてはならないのだったから、彼はもっと賢明でしかも道徳的でなければならなかったのである。
自分のたましいをそんなにあっさりと賭け事で失うなんて、彼はなんと子供じみていたことか!
P95
これは確かに道徳的であるべきとは私も感じるところ。ただ、悪魔メフィストフェレスとの契約では、” 『幸せだ、このまま時が止まればいいのに。』と呟いたら魂をメフィストフェレスに譲る”であった。
ファウストがもっと悪人であれば、幸せを感じてもそれを言葉にしない、時が止まればいいのにとも言わなければ、相当長期にわたって悪魔をこき使って欺くことができる。あっさりとは思わないのは私の方がより悪魔か?
ファウストには明らかに空虚な議論をまくしたてる輩のようなところがあった。私はその戯曲の重みが主としてメフィストフェレスの側にあるという印象を持った。たとえファウストのたましいが地獄に落ちていたとしても、それは私を悲観にくれさせはしなかったろう。彼はそれに価する。
P95
私は、多くの人の命を直接間接に奪ったファウストが天に昇って行ったことには共感していないので、ユングのこの感想にもほぼ同意。
私は終わりのところで「欺かれた悪魔」という考えを好まなかった。というのは、結局メフィストフェレスは愚かな悪魔にすぎなかったのだから。しかも彼が無邪気なかわいらしい天使たちに騙されるのは、論理に反していた。メイフィストフェレスは全く違った意味で欺かれた様に私には思われた。
つまり彼は、あのあまり際立ったところのない仲間たるファウストが、真っ直ぐにずっと来世まで、そのペテンを持ち込んだために、その約束されていた権利を受け取っていなかったのであった。そこには明らかに彼のおとなげなさが認められ、私が思っていた如く、彼は偉大な神秘の奥義を伝えるには値しなかった。
私なら彼に、煉獄の火を経験させたであろうに。真の問題はメフィストフェレスの側にあると私には思われた
p95
ファウストは地獄に堕ちるべきは私も思う。
彼の全体像は、私に深い感銘を与え、私は彼が母の神秘さとかかわりを持っているように漠然と感じたのであった。とにかくメフィストフェレスと終わりでの偉大はイニシエーションの伝授とは、私には意識界のきわでの素晴らしくまた不可解な経験として残ったのであった。
P95
この文章で、“母の神秘さ”とは何を示唆しているのか私はわからない。
遂に私は、悪とその普遍的な力とのわかる人々、そして--もっと重要なことに――人間を暗黒と苦悩から解放する際に悪が果たす神秘的な役割のわかる人々がいる、あるいはいたことがあるとの確証を見出した。
私のみるところでは、その程度までなら、ゲーテは預言者にふさわしかった。だが、私には、彼がメフィストフェレスをちょっとした悪戯や少将にごまかしのかどで放逐してしまったのは許せなかった。
P96
メイフィストフェレスにもっと魔力と花を持たせてもよかったとは私も感じる。
それは私にはあまりに神学的であり、またあまりにも馬鹿げた無責任なことに思え、ゲーテもまた悪が無害になるあの巧妙な手口にかかってしまっていたのが、私を深く悲しませたのであった。
P96
この文章については、私はよくわからないところ。
その戯曲を読んで、私はファウストがいい加減な哲学屋であったこと、哲学から転向しているにもかかわらず明らかにそこから真理に対する確かな感受性を学び取っていることを発見した。
その時まで私は、哲学について実質的には何も聞いたことはなかったのであったが、今や新しい望みが見え出した。ことによると、こうした問題を解明しようと努力して来、私のためにそれらに光を投げかけることのできる哲学者たちがいるかもしれないと私は考えた。
P96
この文章も理解できていないところ。ただ、哲学に傾倒しカントの『純粋理性批判』の考察に至ことになるようだ。
結局、あまりゲーテについてもその作品である「ファウスト」にも高い評価を与えていない印象を持ったのが結末だ。
「ファウスト」の完成までには相当の年月を要しているそうだが、現在の小説、映画、ドラマ、アニメあたりのストーリーと比較しても詰めの甘さを感じた。登場人物の心理描写や哲学、倫理観に物足りなさを私でも感じた。ユングならば尚更であったろう。
これまで投稿してきた私の「ファウスト」の感想はこちら。
序章
第1章 【悲劇第一部】メフィストフェレスとファウスト
第2章 恋に落ちたファウスト
第3章 ファウストとマルガレーテ
第4章 罪
第5章 ワルプルギスの夜
第6章 【悲劇第二部】第一幕 いつわりの国
第7章 第二幕 古代のワルプルギスの夜
第8章 第三幕 ファウストとヘレネー
第9章 第四幕 戦
第10章 第五幕 ファウストのたましい
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こころざし創研 代表
ティール・コーチ 小河節生
E-mail: info@teal-coach.com
URL: https://teal-coach.com/
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