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『失恋墓地②』(毎週ショートショートnote)

「このニュースの墓地って、うちの墓もあるそこの墓地だろ?」
聴こえてくるテレビのニュースにネクタイを結ぶ手を止め
リビングの妻に向かって声をかけた。
妻はあまり興味がなさそうに、それでもどれどれと
テレビのボリュームを少し上げた。
「あそこは失恋専門の墓地だから盗むものなんて何もないぞ」
「墓泥棒じゃなくて墓荒らしみたいよ。
ある一角がむちゃくちゃに掘り起こされてたんだって。
荒らされたのは比較的新しい区域だったから
あなたの先祖代々の墓のある辺りは無事みたいよ」
「どっちにしても気味悪いな」
私が上着に袖を通しながら妻の隣に立った時には
テレビは見飽きたCMを流していた。

仕事から帰宅すると周りが何やら騒がしい。
妻から聞いた話では、供養されたはずの失恋たちが
墓を荒らされたことで墓地の周りにいた人たちに取り憑き
泣き喚いたり人を襲ったり自殺騒ぎまであったらしい。
(暴かれたのがうちの墓だったら、、、)
私は過去の失恋のことを思い出していた。

(410文字)

<あとがき>
最初は、隣の家の奥さんのことが好きになり
告白するも拒否された過去を持つ私が、
墓荒らしが出たというニュースを見て
妻に内緒で先祖代々の墓に埋葬した失恋が
暴かれないか冷や冷やするというお話でした。


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