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『祈願上手』(毎週ショートショートnote)

この神社は願い事を叶えてくれると評判で、
それを聞いた友人に(半ば強引に)誘われて
わざわざ休みを返上して来てみたはいいが
いざ願い事という時になって
そういえば上手な祈願の仕方というのが必要らしい
と言い出した。

「祈願に上手もへったくれもないだろう。
とりあえず何でもいいから願い事すればいいんじゃねえの?」
「でも、絶対に叶えて欲しい事なんだよ」
「どっかに書いてないのかよ」
俺たちは2手に分かれて境内をうろうろと探し回った。

その時、少女たちの会話が聞こえてきた。
「ほんとアナタって祈願上手よね」
「やっぱりアナタにお願いして良かった」
俺は少女たちに声を掛けた。
「君たち上手な祈願の仕方を知ってる?」
ストレートの黒髪を日本人形のように肩のあたりで揃えた少女が
俺を見た。
「知ってるのは上手な祈願というより、、、」

「下手な祈願はとても危険ということ。
例えば、あの人のように。」
少女が指さす先には
探すのを諦めた友人が願い事をする姿があった。

(410文字)


<あとがき>
最初は、
少女が上手な祈願の仕方を教えたあとに
「上手だから叶うとは限らないからね」と言って
いたずらっぽく微笑む
というラストにするつもりでしたが、
たらはかにさんの「怖いといえばホラーよね」の一言で
方向転換しました。

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