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『セヴン・アイズ』第2話

「腹減ったな」
ジュンローは、反対車線にある
ファミリーレストランの駐車場に向けて
ハンドルを切った。
突然目の前を横切られた対向車が
慌てて急ブレーキをかけ
ジュンローの運転する車を避けようと
ハンドルを切った拍子に歩道に乗り上げ、
ファミリーレストランの回転する看板の
鉄柱にぶつかって停まった。
ジュンローはその前を
何事もなかったかのようにすり抜けると
2台分の駐車スペースに車を停めて
ファミリーレストランの中に入っていった。

ジュンローとミツオが案内も待たずに席に着くと、
ウェイトレスが怯えた表情で水を運んで来た。
2人の前にグラスを置く手が震えている。
なんとか水をこぼすことなくグラスをテーブルに置き、
次にメニューを手渡そうとしたとき、
ジュンローが口を開いた。
「水をもうひとつ、氷抜きで」

「か、かしこまりました。
お連れ様がお見えになられるのですか」
そう尋ねたウェイトレスに
ジュンローは静かに告げる。
「連れが来なくちゃ水は出せないか?」
「申し訳ございません、すぐにお持ち致します」
ウェイトレスは逃げるように引き返すと
水の入ったグラスをジュンローの前に差し出した。
ジュンローは黙ってグラスを受け取ると、
グラスに浮かぶ氷を指でつまんで
床に捨てながらつぶやいた。
「氷はいらねぇって言ったのによ、、、」
そして、自分の左目に指を持っていったかと思うと
目玉をえぐり出した。

「ヒッ!」
ウェイトレスは短い悲鳴をあげ、その拍子に
メニューを床に落としてしまった。
ミツオはそれを拾いながらジュンローに言った。
「何度みても、それだけは慣れねぇなぁ」
そして、固まっているウェイトレスの顔を見上げ
「こいつ、義眼なんだよ」と微笑みかけ、
「俺、ガーリックステーキにライスとスープのセットね」
と言った。

ジュンローはグラスから義眼を取り出すと
水気を切って再び左目に装着した。
「乾くと疼くんだよ」
そしてメニューも見ずにウェイトレスに向かって言った。
「ハンバーグステーキとライス、ポテトは大盛りで」

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