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『男子宝石』(毎週ショートショートnote)

古来、男は一人前と認められない間、男子と呼ばれ蔑まれてきた。
認められるには国や部族により様々ではあるが
何某かの儀式が伴うのが一般的であり、よく知られるのは
「バンジージャンプ」「鞭打ち」「刺青」などである。
かつて私の村にも一人前の男として認めるための儀式が存在した
と古い文献に記されている。

この自然界は「陽」と「陰」という相反する2つの要素で成り立っており
同じ性格のものが重なると力が増幅されると信じられている。
日、春、夏、昼、東、南、火、男など積極的な性格のものが「陽」
月、秋、冬、夜、西、北、水、女など消極的な性格のものが「陰」
宝石もその性格によって「陽」と「陰」に分かれることから
一人前と認められたい男子は、同じ「陽」の性格を持つ宝石を求めて
こぞって危険な山に入っていったとある。

しかし「陰」の宝石に魅入られて自らが宝石と化し
帰ってこなかった男子も少なくなく、
今でもたまに村の山からはそんな「男子宝石」が採掘される。

(410文字)

<あとがき>
「男子」「宝石」と聞いて真っ先に『陰陽論』が思い浮かびました。
次に思い浮かんだのは、山の奥にいくつもの男の子の姿をした宝石が
立っている風景でした。
これらをなんとか結び付けられないかと考えた結果、
このような形になりました。

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