光る貝を巡って

 海の中で光る貝を見つけると、願いが叶うらしい。

 しかしそれはとても希少で、オーパーツのようなものだ。

 それっぽいものを見つけても、実は錆びていたり貝殻を砕くと光の正体はLEDライトだったりする。

 肺が萎み始めると水面に顔を出して、精一杯息を吸う。真っ黒な海に首まで浸かって、ぼうっと島のほうを見つめると少し辟易とする。「明日の今頃も、こんな風なのか」と。

 光る貝は音も出さず、また匂いもない。それらが存在しないという根拠はないが、漁船と潮の香りが邪魔をするから無いに等しいのだ。


 意を決して、また海へ潜る。たった一つの光を浴びると、生きる意味が分かるらしい。

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