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ドラマトーク#5 複数作品に同時出演する役者たち 2021秋Ver.

ドラマを観ていると、いつのタイミングでも誰かしら必ず、同時期に複数の作品に出演している役者がいる。
今期の気になる役者についてピックアップしてみる。

プライム帯連ドラの掛け持ちは意外と少ない

今期の複数出演している役者をチェックしてみると、実は8割方は大河ドラマや朝ドラといった、いわゆるプライム帯の連続ドラマ以外の作品との掛け持ちなのだ。
大河や朝ドラは放送期間が1年や半年と長く、そのぶん出演者数も多いため、当然と言えば当然の結果だろう。
また逆に、全4,5回程度の期間の短い連続ドラマ(NHKの土曜ドラマなど)との掛け持ちも多少見られるのだが、完全に同時期のプライム帯の連続ドラマに複数出演するケースとなると意外と少なく、ある意味貴重な存在だと言える。

今期では『ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート』(フジ系・月曜21時)と『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日テレ系・水曜22時)にレギュラー出演している鈴木伸之がそうだ。
今回が2シーズン目の『ラジエーションハウスⅡ』では前作に引き続いて窪田正孝演じる主人公の恋のライバルである医師役、『恋です!』では杉野遥亮演じるヤンキー主人公の因縁の相手と、どちらも主人公と絡む重要な役柄を務めている。

同じく『ラジエーションハウスⅡ』で放射線技師メンバーの一員を演じている矢野聖人『SUPER RICH』(フジ系・木曜22時)にも顔を出しているが、こちらは途中回からのゲスト出演。
鈴木のようにどちらのドラマにも同じくらい重めの比重で出演している役者は、今期ではほかに見当たらない。

今回の鈴木の二つの役柄はエリート医師と金髪のヤンキー上がりと、見た目は大きく異なるが、どちらの役も心優しくて誠実さが滲み出るキャラクター設定となっており、重なる部分があった。
どちらも彼のイメージに合った配役だとは思うが、欲を言えば、せっかく複数作品に同時に出るのなら、まったくカラーの違う役を観てみたい気もする。

正反対のキャラクターを演じ分ける

そういう意味では、鈴木の出演する『恋です!』で、鈴木演じる獅子王に憧れる、ヒロインの姉・イズミを演じている奈緒は、長女でしっかり者のイズミというキャラクターと、『正義の天秤』(NHK・土曜21時)の頼りない後輩弁護士という、言わば真逆のキャラクターをうまく演じ分けていたと思う。

『正義の天秤』は今年9月から10月にかけて全5回で放送された連続ドラマで現在は終了してしまっているが、10月中は『恋です!』との同時期出演というかたちになった。
亀梨和也演じる天才弁護士の部下で、一生懸命だが少々ポンコツな新米弁護士・芽衣を演じた奈緒。
イズミも芽衣もきれい系のOLファッションのキャラクターで、見た目だけだとほぼ同一人物なのだが、いざ動いてしゃべるとまったく違うキャラクターにちゃんとなっていて、良い女優さんだなと感じた。

3作品同時出演する役者も

今期、私が確認できた中で唯一、3作品同時に出演しているのが、『婚姻届に判を捺しただけですが』(TBS系・火曜22時)、『カムカムエヴリバディ』(NHK・月~金朝8時)、『真犯人フラグ』(日テレ系・日曜22:30)の3本に出演している前野朋哉だ。
au三太郎シリーズのCMで、一寸法師役で出ていたと言えば顔が思い浮かぶ人も多いかもしれない。

これまでも脇役としてたくさんの作品に顔を出しており、今回の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』ではヒロイン・安子(上白石萌音)が初恋相手の稔(松村北斗)と訪れる喫茶店のマスター(世良公則)の息子役を演じている。
この喫茶店で聴くとある曲が、安子と稔にとっても作品の今後にとっても重要なキーとなっており、前野はセリフも出演シーンも多くはないが、彼の決して出しゃばり過ぎることのない、それでいて印象を残す風貌やたたずまいからくる独特の存在感が役としっくり合っていて、安子と稔とマスターだけでも成立する喫茶店に、あえて存在する4人目として良いアクセントになっていたと思う。

また、喫茶店におはぎを配達に来た安子とのシーンで、安子の悪たれな兄・算太(濱田岳)とは小学校で2学年下だった、という繋がりが判明するのだが、auのCMで共演している2人が…と勝手にニヤリとしてしまった。
調べていたら、前野は物語の舞台となっている岡山の出身であるらしく、そういう縁もあってのキャスティングなのかなと思った。

一方、『婚姻届に判を捺しただけですが』では偽装結婚をする主人公・百瀬柊(坂口健太郎)の想い人(倉科カナ)の夫でもある柊の兄・旭役で出演。
こちらは主人公にかなり近いポジションのメインキャストと言ってよく、出演シーンも多い。
『真犯人フラグ』に関しては、私は最終回後にイッキ見する予定のためまだ観ておらず、役柄の詳細はわからないのだが、朝ドラとプライム帯2本の3本にすべてレギュラーキャストとして出演というのは凄いことだろう。

複数同時出演を楽しむ

ここまでで挙げた以外に今期、複数作品に出演している主な役者は以下の通り。
ほぼすべて、プライム帯連ドラと、NHKのドラマとの掛け持ちというのも興味深い現象だ。

◆大河ドラマ『青天を衝け』と掛け持ち
 ・和久井映見『ラジエーションハウスⅡ』
 ・木村佳乃『アバランチ』(フジ系・月曜22時)
 ・田辺誠一『婚姻届に判を捺しただけですが』
 ・町田啓太菅野莉央『SUPER RICH』(フジ系・木曜22時)
 (※町田の大河出演シーンは9月まで)
◆朝ドラ『おかえりモネ』(10月29日終了)と掛け持ち
 ・坂口健太郎『婚姻届に判を捺しただけですが』
 ・山口紗弥加『ラジエーションハウスⅡ』
 ・茅島みずき『SUPER RICH』
◆朝ドラ『カムカムエヴリバディ』と掛け持ち
 ・段田安則『和田家の男たち』(テレ朝系・金曜23時)
◆土曜ドラマ『正義の天秤』(10月23日終了)と掛け持ち
 ・千葉雄大『アバランチ』 ※『正義の天秤』は最終回ゲスト
◆『婚姻届に判を捺しただけですが』と掛け持ち
 ・倉科カナ『らせんの迷宮~DNA科学捜査~』(テレ東系・金曜20時)

なお、『らせんの迷宮』はもともと昨年の放送予定だったのが、ステイホーム期間の撮影中断に伴い、主演の田中圭の他作品の撮影スケジュールとの兼ね合いで、撮影・放送時期が変更されたという経緯がある。

同時期に同じ役者が複数の作品に出演していると、どうしてもどちらかの役柄に観ている側が引っ張られてしまったり、そのせいでその作品の世界観に没入できないというようなことがあるのも確かだ。
そういう事態を避けるためなのか、単なる偶然なのかわからないが、『最愛』(TBS系・金曜22時)や『日本沈没-希望のひと-』(TBS系・日曜21時)など、今期の中でも局が特に力を入れていそうな、大型ドラマと言われているドラマには、ざっと見渡した感じ、掛け持ちの役者が見当たらないという事実もまた、興味深い。

大河や朝ドラとの掛け持ちが多いのも、それだと時代設定が現代ではないことが多いので、プライム帯のドラマとの違いが明確で、出演時期が重なっても役柄に差異がつけやすいということもあるのかもしれない。

だが複数同時出演は、逆にその演じ分けに感心させられたりと新たな役者の魅力を発見することも多々あり、その時々で時世に必要とされている役者像が見えてきたりという、ならではの醍醐味も確かにあるのだ。
私にとって、ドラマを観るときの楽しみ方の一つとして、これからも注目していきたいポイントなのである。


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