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宝塚にきっとハマる。そう思って遠ざけた。

ハマるのがこわいから見ない。 そういうものがいくつかあった。 これは自分の好みにあまりにどんぴしゃすぎる。なんでかわからないけど、見てもないけど直感する。
これはなんか好きになれない。好きになりそうな気がするけど好きになりたくない。好きになるのがこわい。 そういうやつ。 そのひとつが宝塚だった。 宝塚歌劇団。言わずと知れた、女性だけで構成される絢爛豪華なミュージカル。
阪急電車でポスターを見かけても、「お化粧濃い〜、みんないっしょに見えるわ」なんていって、でもそれは「うっかり見たらハマってしまいそうでこわい」ための必死の防御反応にすぎなかった。 足を伸ばせばいつでも観劇できるところに住んでいたから、「一生に一度は観たいかな」とはいつも思っていながら、でもやっぱり「女性ばっかりなんてよおわからん」と逃げた。 そんな私がとうとう初観劇したのは2018年。
愛してやまない少女マンガ「ポーの一族」、その初の舞台化とあって、こわさよりも興味が上回り、しかもうっかりチケットが手に入ってしまった。

舞台中央から客席に背を向けてせり上がり、その人がこちらを振り返ったとき、私はきっと、一度心臓を止められたんだと思う。この世ならざるものに射すくめられ、息をするのも忘れてしまった。

ああ私がいままで宝塚を見てこなかったのは、この日こうして、エドガーに出会うためだったんだ。
明日海さんのエドガーに、れいちゃんのアランに、ゆきちゃんのシーラ、あきらさんの男爵、そして華ちゃんのメリーベルに。

宝塚はトップスターの任期が3〜5年程度と短く、エドガーを演じた明日海りおさんも、シーラ役の仙名彩世さんも翌年に退団してしまったけれど。もっとはやく見ておけばよかったと思うこともままあるけれど。 初めての宝塚観劇がポーの一族でなかったら、こうして明日海さんの退団後も熱心に見るほどハマっていたかわからない。

出会ったタイミングが、いつだって自分にとって最良なんだ。

どれだけ遠ざけても、魅力的なものの引力はすさまじく、どこに逃げたっていつかはばったり行き当たる。

そして出会ってしまえば、予感はやっぱり当たっていて、ちゃんとハマってしまうのだ。

自分の直感は侮れず、沼には落ちるべくして落ちるタイミングがある。 いま東京宝塚大劇場の花組公演も、東京国際フォーラムの雪組公演も、中止になってしまったことで、誰かの「タイミング」が遠のいてしまったのなら悲しいな。 現花組トップスターのれいちゃん(柚香光さん)は昨年も公演中止を経験している。そのとき、「みなさんが宝塚を愛するゆえに、そのお心の翳ることがないように」と言ってくださったことを思い出す。 タカラジェンヌでいられる時間は有限で、一人のタカラジェンヌのファンでいられる時間もまた短い。その一瞬に出会える機会がまた戻ってくるように、いまはただ静かに祈るばかりです。

罹患された方が1日もはやく回復されますように。 休演中、せめて心身穏やかに過ごせますように。

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