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企業のAI実績がわかるノート~建設業界/スーパーゼネコン総集編

はじめに

本シリーズでは各業界の代表企業におけるDX/AIの現状を公開情報を集め分析したものになります。特にAI領域について深掘りをしています。
また、本シリーズでは以下の読者を想定しています。
今回は建設業界の中でスーパーゼネコンと呼ばれる大成建設・清水建設・鹿島建設・大林組・竹中工務店5社の企業について比較を行っていきます。

  • 社内のDX/AI推進を担当しているおり他業界や他社の活動を知りたい方

  • 建設業界にいて業界内のDX/AIの取り組みに興味がある方

  • AIベンダーまたはAIベンダーに興味がある方

業界について

建設業界とは建物を作る建築のみならず、土地や水路の工事を行う土木工事まで包括的に施工をする業界です。建設とよく似た言葉に建築があります。建築は建設とは違い、建築物の施工を行う企業のことを指す言葉です。そのため土木工事は行いません。例えば、建築はビルや公共施設の施工をします。しかし土木はダム建設や道路等を施工のみを扱う企業のことです。 そしてこの**建築と土木の両方を行うものが建設業界です。**そのため建設業界とは建築業界は土木工事を行うかそうでないかという点で違いがあります。

建設業界の基礎知識|気になる業界動向から年収まで詳しく解説!
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ビルなどの建築やダムなどの土木をまとめて建設と呼びます。実際の現場を見てわかるように設計・施工・管理まで大人数とたくさんの会社が共同して実現をします
業界構造としては公共団体や不動産会社からゼネコンが1次受けを行い、サブコンへ委託、そしてサブコンが各工事業者へさらに委託を行うという多重下請け構造となっています。
このゼネコンの中で1兆円の売上を超える企業をスーパーゼネコンと呼び大成建設・清水建設・鹿島建設・大林組・竹中工務店5社が該当します。
いわゆる建設業界のトップの企業でありこの企業のDX/AIの取り組みを見ることで業界全体の取り組みが見えてくるのでこの5社を中心に分析・比較を行います。

業界の現状と流れについて

業界全体の流れとしては国土交通省が以下の通りにまとめられています
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001314888.pdf

  • 従業員の高齢化により10年後には大量の離職者が見込まれる。

  • 若手入職者は不足気味

  • 建設業法改正により資格・許可制度による質の向上

  • 長期労働時間の是正

  • 工期の適正基準を設置

また各企業の詳細でも触れていますが、国土交通省が掲げているi-Consructionというの DXに関しては大きく影響しそうです。

これは主に以下のような取り組みを推進・義務化を行っている施策となります。
1. ICTの全面的な活用(ICT土木)
2. 規格の標準化(コンクリート工)
3. 施工時期の標準化

またBIM/CIMと呼ばれる3Dモデルベースの建設生産管理システムが公共工事では原則適用が必要となっており、公共工事が多いスーパーゼネコンでは必須の対応となっています。ここにおいても各社のDX/AIへ大きく絡んできます。


各社の経営数字における比較

続いてスーパーゼネコン5社における数字面の比較を行っていきます。

各社の経営数字(各社の有価証券報告書から抜粋)


連結の売上高ベースで言うと鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店となっており
営業利益だと鹿島建設、大成建設、竹中工務店、清水建設、大林組となっています。大林組が利益率として低い要因として多額の損失引当をおこなったためのようです。
鹿島建設は国内・海外関係会社の売上割合が高いため建築事業と土木事業の割合が小さくなっています。
また、特徴としては竹中工務店以外は建築と土木が3:1くらいの売上となっています。
建築と土木のいわゆる建設事業においてはどちらも大林組が1番となっています。

中期経営計画におけるDX投資

次に中期経営計画におけるDX/AI投資を見ていきます。これは期間や時期がずれているので一概に比較できませんが、あくまでも参考値としてみていただければ良いと思います。

各社の中期経営計画におけるDX投資(各社の中期経営計画から抜粋)

各会社で費目名が異なるのでなんとも比較しづらいですが、大成建設がDX300億円、既存システム300億円と意識していることと投資割合としても大きいことからDXに関して注力しているようにも見えます。
また鹿島建設は投資合計は大きいですが、デジタル投資にある割合としては小さいです。鹿島建設はM&Aなどによって伸ばしてきた会社なので、M&Aや新規事業開発といったところに投資が多いためだと思われます。

各企業のAIの取り組み

次に各企業のAIに関する取り組みを比較していきます。
これも網羅できているわけではないので完全な比較とはなりませんが、業界全体としてどういったところに関心毎があるのか見えてきます。
スプレッドシートを公開しているので気になる事例がある方は各タイトルをスプレッドシートのリンクからアクセスしてみてください。

AI導入状況一覧-建設業界/スーパーゼネコン

効果としてわかりやすい土木事業の自動施工には土木事業がメインではない竹中工務店以外は全て取り組みを行っていました。この中では鹿島建設が一歩先を行っている印象があります。
また、建築現場における競争力に関わる設計段階では現状の取り組みでは竹中工務店が一歩先を行っているように見えました。
また安全対策については竹中工務店以外は何らかしらのAIにおける対策を試みていました。
カメラによって人の検知を大成建設と清水建設。過去の事故事例からとるべき安全対策をレコメンドする鹿島建設と大林組とアプローチは異なるものの一定の対策を講じているようです。
現状開発中のものや実証段階のものが多いのですが、土木なら鹿島建設・建築なら竹中工務店が今後もリードしそうではあります。ただ、大林組と大成建設に関してはデジタル投資枠が大きいので、今後巻き返しがどこまで行くのかについても期待していきたいと思います。

最後に

今回は建設業界における筆頭のスーパーゼネコン5社における DX/AI面における比較を行っていきました。
各企業毎に詳細の取り組みは別記事にまとめているので気になった方はそちらも見ていただけますと幸いです。

現状インターネットで検索できる程度でリサーチを行ったため、不足や間違いがあるかもしれませんが、建設業界の大まかな AIにおける活動状況が見えてきました。
IT業界出身者としては馴染みの少ない建設業界ですが、63兆円(2020年度)という市場規模の大きい領域ですので引き続きこういった目線でウォッチを続けていきたいと思います。



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