【ゲーム分析】ナポレオンの戦略について
この記事のタイトルを見て、ボナパルト朝フランス帝国の初代皇帝(ナポレオン1世)のことだと思った方もいるでしょう。
それは、間違ってはいません。
ここで話す内容はトランプゲームのナポレオンのことですが、Wikipediaによれば、ルーツは英国で発展したナップというゲームです。
どちらもトリックテイキングゲーム(その巡目で一番強いカードを出した人がその巡目の勝者となり、場に得点札があれば得点を得る)であり、語源は同じ歴史上の人物です。
ここではルールの説明はしません。説明が必要な方は適宜Wikipediaをご覧ください。
また、筆者が知らないローカルルールは考慮できませんので、ご了承ください。
(2024.5.17追記)
最近見つけたnote記事「ナポレオン」というトランプゲームで、ルールが丁寧に説明されていたので紹介します。(柴崎さん、ありがとう!)
上記記事にはいくつかオプションルールも紹介されています。
そのうち、本記事では「セイム2」「切り札請求(ジョーカー)」は想定済みですが、「横J」「セイム3」「リバース6」は筆者が知らないため想定外です。
ただし、セイム3のような天敵(特定の強いカードと同じ場にあるときだけそれより強くなる)ルールの類型として、オールマイティ(♠A)の天敵として「よろめき(♥Q)」を、正Jの天敵「どよめき(♦Q)」とセットで想定しています。(裏Jはセイム2に狩られるため天敵なし)
5人用のベストゲーム
私はこのナポレオンを一時期やりこむことになり、今でも「五人で遊ぶゲームの中では最高のゲーム」だと信じています。
少なくとも、ナポレオンを遊ぶ人数として5が最適であることは、以下のように考察できます。
3人の場合:皇帝16枚+連合軍16枚x2人+残り5枚
副官がいないので面白さが半減する。一人あたりの手札16枚は多すぎて、皇帝が勝つのは至難の業。
4人の場合:皇帝12枚+副官12枚+連合軍12枚x2人+残り5枚
皇帝軍2人と連合軍2人の対戦となり、皇帝軍が強すぎる。皇帝が手札12枚から5枚を交換するアドバンテージも、やや大きい。
5人の場合:皇帝10枚+副官10枚+連合軍10枚x3人+残り3枚
皇帝軍2人と連合軍3人のバランスがちょうど良い。皇帝が手札10枚から3枚を交換するアドバンテージもちょうど良い。
6人の場合:皇帝8枚+副官8枚x1(or 2) +連合軍8枚x4(or 3) +残り5枚
皇帝+副官2だと皇帝軍が強すぎ、皇帝+副官1だと逆に弱すぎる。皇帝が手札8枚から5枚を交換するというアドバンテージは、大きすぎる。
7人の場合:皇帝7枚+副官7枚x2+連合軍7枚x4 +残り4枚
皇帝+副官2と連合軍4人のバランスはそこそこ良い。皇帝が手札7枚から4枚を交換するアドバンテージは、かなり大きい。
少なくとも、5人が無理ならせめて7人で遊ぶのがよいと思います。
6人(皇帝1+副官1 対 連合軍4)でも、皇帝軍の不利を手札交換の有利で補ってよさそうですが、万が一副官なしになった場合は皇帝一人が連合軍5人からボコボコにされてしまいます。
基本戦略
ここから、皇帝/副官/連合軍の基本戦略を書いていきます。
これを読む人の中に機械学習への造詣が深い人がいて、この戦略を教師データとしてナポレオンの最強AIを作ってくれることを(少し)期待しています😊
皇帝の戦略
副官の指名
副官には(基本的には)自分の持っていない強いカードを指名する。オールマイティ(=スペードのA)、正Jack(=切り札のJ)、裏Jack(=切り札と同じ色のJ)、切り札のA、切り札のKの順に強いので、その中から選ぶのが一般的。そのほか、Jokerを入れる場合はJoker、よろめきルールがある場合はよろめき(=ハートのQ)も有力。
変化球としては、切り札でないKを持っている場合には、そのスートのAを副官にするという案もある。その場合、Kが副官のAに負けても構わないし、うまくいけばKとAで2回勝てる、という計算になる(ただし、連合軍のセイム2や切り札で両方取られてしまうリスクはある)。
手札の交換:トリック開始前の山札との手札交換で、なるべく多くの切り札以外のスートを切る(=そのスートが手札に1枚もない状態にする)。切り札を使えるチャンスを増やすことが重要なため。ただし手札の中に弱い得点札がある場合は、得点を連合軍に献上してまでそのスートを切るべきかどうかは難しい。
1巡目:1巡目はセイム2の効果がないルールの場合、何らかのスートのAを持っていたらそれを1巡目に出す。2巡目以降ではセイム2で狩られてしまうかもしれないため。
2巡目以降
何らかのスートのセイム2があれば、なるべく早い巡目で出す。誰かのそのスートが切れてしまってからでは効果がないため。これで得点札が狩れたらもうけもの。
その後は、できるだけ連合軍の切り札を狩り取ることを意識する。皇帝が切り札以外の弱い得点札を出さざるを得ないときに、誰も切り札を出せなければ取られなくて済む可能性があるため。
なるべく効果的な(得点札が取れる)タイミングで、切り札を使って得点札を取る。
副官の戦略
基本的には、連合軍にバレないように皇帝に得点札を取らせてあげるだけ。
自分で得点札を取れるときは取ってよい。まだ副官であることが判明していないうちは、連合軍は味方が取ったと思ってくれる。ただし、皇帝にも味方かどうかが分からないため、やりすぎると皇帝が焦ってしまう可能性はある。
そのため、皇帝に余裕がありそうなときは、副官であることをあえて早めに公表してもよい(口で言う必要はなく、副官指名札を場に出すだけ)。誰が副官か分からない状態から脱すると、皇帝としても助かる面がある。
ただし、あまりにも公開が早すぎると、今度は連合軍どうしで得点札を取らせ合う連携が容易になるから、タイミングは難しい。
連合軍の戦略
基本的には、皇帝のペースを乱すことがメインになる。得点札が取れるときは取るほか、セイム2や副官あぶり出し(副官指名札と同じスートを台札にする)などで嫌がらせをする。
副官が判明する前
副官が誰かヤマを張って、味方だと信じられる人に得点札を取らせる作戦も有効だが、序盤から取るべき作戦かどうかは難しい。やるならヤマが外れることも考えて、一人に得点札を集中させずに分散させるのがよい。
副官のヤマを張る場合は、皇帝宣言のときに最後まで争った人をまず疑うのが基本。皇帝になれそうな強い札を持っていたわけで、それがそのまま副官指名札になる可能性があるため。
副官判明後:副官が誰かが分かったあとは、味方が誰かも確定しているから、味方が勝てるターンには得点札を出して取らせてあげましょう!
貴重なお時間を使ってお読みいただき、ありがとうございました。有意義な時間と感じて頂けたら嬉しいです。また別の記事を用意してお待ちしたいと思います。