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やさしさとひとりごと

「やさしさ」と聞いて思い出すことはなんだろう。

ねぇ、優しさってなんだと思う。
渡せないのに貰えたんだ。
そう歌った誰かのひとりごと。

メチャクチャ苦しい壁をぶち壊す勇気とPOWERの源は、
やさしさのせいだったりするんだろうね。
そう歌ったあの人の微笑みの爆弾。

そう、僕が「やさしさ」と聞いて思い出すのは、
小さな火をくべるような、愛する喜びに満ちあふれた、
そんな優しい歌。

僕が「やさしさ」と聞いて思い出すのは、
どうやら歌のことが多いみたい。

そんな「やさしさ」に包まれた歌を聴くと、フッと心が軽くなる。

小さい頃は神様がいて 不思議に夢をかなえてくれた

と、始まるその歌は、

やさしい気持ちで目覚めた朝は
おとなになっても 奇蹟はおこるよ

と、とてもステキなことを教えてくれた。

だからなのかもしれない。

カーテンを開いて、太陽の光を浴びるとやさしい気持ちになれる。
カーテンを開いて、雨の匂いをかいでいるとやさしい気持ちになれる。

昨日、少し嫌なことがあったとしても、
その日の始まりはやさしい気持ちで始めよう。

たまにそうできない日だってあるんだけれど……

それでも、せっかくなら優しい気持ちで目覚めたい。

だって、奇蹟がおこるのだから。

僕はそれを知っている。

僕が生きているのは、
たくさんの人の「やさしさ」のおかげなんだと知っている。

僕は先天性の心臓の病気がある。
他にもちょろっと先天性の病気がある。

それを悲観することもなければ、
殊更にひけらかすこともなければ、
お涙頂戴をしようとも思わない。

けれど、事実としてそういうことが僕にはある。

きっと少し昔ならば、僕がこの歳まで育つことはなかっただろう。
きっと少し昔ならば、僕は赤ん坊のままに亡くなっていたのだろう。

僕が生きているのは、
家族——特に父母祖父母、それに兄貴——のやさしさのおかげだ。

僕が生きているのは、
医療従事者の皆さんのやさしさのおかげだ。

僕が生きているのは、
誰かを生かそうとした、過去の名もなき誰かのやさしさの賜物だ。

やさしさに触れた時、人はきっと泣くんだ。

赤ちゃんが生まれた時、だから人は泣くんだ。

赤ちゃんも、妻も、僕も。そっと泣くんだ。

そう、僕が「やさしさ」と聞いて思い浮かぶのは、
誰かが「嬉し泣きをする顔」なんだ。

「嬉し泣きをする顔」で思い出す顔が、僕には幾つかある。

家族から貰った「嬉し泣きの顔」は、
大切な思い出なので、ここでは敢えて教えてあげないことにしよう。

ただ、他にも思い出す「嬉し泣き」の話をちょっとだけしたい。

「やさしさに包まれたなら」という歌は、
魔女の宅急便」という国民的アニメ映画の主題歌。

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おちこんだりもしたけれど、
私は元気です。

その有名なコピーを、どこかで思い出しては、
元気を貰った人も多いことだろう。

ネタバレになるけれど、
あれだけ金曜ロードショーでも流されており時効ということで、
最後のシーンの話をしたい。

主人公である魔女のキキが、
友人——ということにしておこう——の男の子を助けようと
一心不乱に脇目も降らずに実行に移すあのシーン。

誰もが心から「飛べ」と願ったあのシーン。

そして、見事に男の子を助け出したあのシーン。

僕はそっと涙を拭った。
キキの友人であるおばあちゃんもそっと涙を拭っていた。

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そう、嬉し泣きだ。

キキの優しさと勇気に触れたから、
僕は泣いていたんだ。

そうそう、「スタジオジブリ」といえば、
僕にとってあまりにも忘れられない嬉し泣きが一つある。

それは「となりのトトロ」。

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夢だけど、夢じゃなかった、となりのトトロ。

出会ったら抱き付いてみたい、モフモフしてみたい、
と願ってやまない、となりのトトロ。

三鷹の森ジブリ美術館」で猫バスに乗れないなんて、
大人って悔しいものだと思ったりした、となりのトトロ。

その「となりのトトロ」には、
「無償の愛」が所狭しと描かれているように感じる。

子供たちを心配する母の愛。
子供たちを信頼する父の愛。
妻の快復を願う夫の愛。
小さい妹のことを想う姉の愛。

そして、隣人をあたたかく包むおばあちゃんの愛。

これまたネタバレになるけれど、
あれだけ金曜ロードショーでも流されており時効ということで、
エンディングのシーンの話をしたい。

そう、迷子になった小さなメイちゃんを、
お姉ちゃんをはじめとする皆が必死になって探し出すシーン。

お姉ちゃんがトトロに切実なお願いをするシーン。

お姉ちゃんがメイちゃんを見つけて、
猫バスで療養中のお母さんの元にトウモコロシを届けるシーン。

そのシーンが終わってからのエンディングのワンシーン。

となりのおばあちゃんが、
遠くからやってくるメイちゃんを見つけて、
涙ぐみながら抱きしめるそのシーン。

僕はそっと涙を拭った。

そう、嬉し泣きだ。

みんなのやさしさにふれたから、
僕は泣いていたんだ。

おばあちゃんのやさしさにふれた瞬間に、
僕は泣いていたんだ。

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そうそう、おばあちゃんと言えば、
のび太くんのおばあちゃんの思い出。

だれが、のびちゃんのいうこと、
うたがうものですか

おっと、「やさしさ」について、
ついつい話過ぎてしまいそうになる。

「やさしさ」はきっとそれだけ僕の身の回りにたくさんあって、
僕はそれに気付いたり、気付かなかったりするのだろう。

それでも誰かに貰った「やさしさ」をそっと大切にすることで、
僕も誰かにやさしくできるのだろう。

ねぇ 優しさって知ってるんだ 渡せないのに貰えたんだ
きっとさ 人と人との 心の外の中にだけ 在るんだ

「やさしさ」はきっと「やさしさ」を生むんだ。

だから、最後はもう一度、大好きな言葉で締めたいと思う。

やさしい気持ちで目覚めた朝は
おとなになっても 奇蹟はおこるよ

これからも僕らと貴方が、
たくさんの「やさしさにふれる」ことを祈って。

#やさしさにふれて


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