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MMTの「お金は『借用書だ』論」入門−第四回:経済学者の嘘のつき方

  前回までの目次

 プロローグ
 言葉を大切にしましょうよ(経済学者を反面教師にして)
 MMTの「お金は『借用書だ』論」入門
   第一回:注意事項あり
   第二回:負債とその解消
   第三回:負債論という背景

 今回はちょっと寄り道をします。ちょっとだけ高度かもしれませんが気軽に楽しんでいただければ。

 MMTの日本語本を書かれている井上智洋さんとはたまにTwitterでやり取りがあったりします。この本について某居酒屋で「読む価値なし!」と断言したのですが、井上さんのそういうところは素敵ですね。

 先日のやりとりではそのご著書における「MMTの信用創造(銀行貸出)」の説明の中で貸出の相手勘定について触れられていないことに苦言を言いました。というもの、これではあたかも銀行が「じゃんじゃんお金を作ることができる」イメージになってしまう。それは前回に詳しく書いた話ですが、これはその具体例とも言える内容ので、今回はこの話を扱います。

 現実の銀行貸出は、負債(預金)と負債(貸付金)を交換しあうだけなので、あたりまえですが民間部門のお金の量(純金融資産の量)は一円も変わらない。

 なのに、貸し出しで「じゃんじゃんお金を作ることができる」という正反対のイメージになってしまうという問題ですね。このやりとりで、じぶんはここから「MMTが否定している中央銀行の金利コントロールの有効性をめぐる話」についても言及し、以下のやり取りとなりました。

 (このエントリは井上さんへのリプライも兼ねているつもりです)

 さて。
 わたしたちは中学や高校の教科書で、中央銀行の金利コントロールが民間の貸出を左右すると刷り込まれます。そのとき下のようなイメージが伴っていると思います。

経済学が刷り込む銀行貸出のイメージ(でも嘘)

 ところがMMTはこれが経済学のインチキであることを暴いたのです。何を隠そうじぶんも数年前までこのイメージを持たされていました!

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 いまは怒りでいっぱいです。

 特に許せないのが、銀行ってお上から借入をしていてわたしたちと同じように金利を「負担」しているのかな、と思い込ませておいて(上の図の金利a)、本当は「完全に逆」で、銀行(金融資本)は統合政府から利息をもらっていたじゃん\(^o^)/

 こんな感じですね。。。これを知った時の衝撃ときたら。。。

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 少し解説します。
 財政支出の黒い矢印が二つありますが、この二つは同時に起こります。政府が財政支出をすると、支出先の預金(預金A)が増えると同時に、金融部門では負債としての預金Aと同時に資産である準備預金が同額増えます。これが財政赤字が作り出す民間の純金融資産で、金融機関は今も昔もゼロ金利で準備預金をまず得ている。こうして得た準備預金を国債に両替すると、国債金利が得られる。これが基本的な仕組みだったのです。(ええ、補完貸付制度は確かにありますよ。全体としてウソになっているという話で)

 世間の銀行貸出では、確かに中央銀行が目標金利を変更すると各銀行は金利を連動させています。しかしそれは、基本的には「そういうことにしておけばもっと儲かるから」なのであって、連動させる必要はそもそもないではありませんか!

経済学者のテクニック

 支配者の意を受けた経済学(経済学者)の洗脳テクニックはこうです。彼らが使う嘘は「間違ったことを言う」という形の嘘ではなく「大事な事を隠す」という形の嘘なのです。

 上の図から、いろいろなところを隠して見せたいところだけを見せる。木を見せて森を隠す、というか。。。

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 おわかりいただけたでしょうか。

 これをやると政府の役割が隠れます。民間には「強者」と「弱者」がいることも隠れます。実際はむしろこう↓なのに。

 右の赤い矢印に特に注目です!

 弱者たちは金利やら家賃やら労働の搾取やらで、強者にいいようにやられてるじゃないですか。そのことによって、「生産性がない」とか言われ自己肯定感をすり減らしてしまう。こんな大事な話をどうして経済学者は隠すんですか?あるいは、隠していたということをこの期に及んでまだ隠すんですか?

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 ひどい世界ですよね...

 しかもこれでもまだ税や社会保険料による収奪、公的資金の株買いによる強者優遇は描けて【いない】わけです。

 プロローグで表明したようにじぶんは「障碍者」に連帯する立場にいます。日本で弱者がどれだけ差別虐待されているかは、MMTレンズを通すことでクリアに見ることができるようになるのです。

 年金基金のやっていることは何ですか?人々から金を奪って、大企業に「出資」するとはいったいどういうことですか?収奪しているのはそいつらじゃないですか。人間として、そういうことをやっていいんですか?

 ということです。

僭越ながら井上さん「MMT本」を添削

 というわけで、「経済学のごまかし」を糾弾しているMMTを紹介する日本語MMT本にそのゴマカシが登場するのがガマンできません。(こういう話をすると「にゅんはMMT原理主義者」と言ってくる人がいるわけですが、ふざけんなと思います。誰の味方なの?) 

 やっぱりこうなります↓
 この二つの図は、やっぱり駄目です。特に準備預金!(「預けている」立場なのは民間銀行でなく中央銀行であって金利の向きも中央銀行→民間銀行)

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中央銀行の金利操作がなぜ貸し出しに影響すると思うのか?

 ここで、中央銀行の金利政策の意味を考えてみましょう。政策金利が銀行の貸出金利に本質的な影響を及ぼすという先入観は、この図の理解から来るものではないですか? そもそもそれがウソだったのでした。

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 MMTによる金利政策批判の詳細は、まあ、望月さんの本のこの図でいいと思います。

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 これでいいんですけれど。

 でも。その前の話として。

 その前に経済学者は今までずーっと自分たちが広めてきた嘘イメージを撤回するのが先のはずです

 日本の経済学者の皆さんは、学会で「MMTセッション」なんてやっている前に、「政策金利は実は単に金融資本へのプレゼントでした。これまで弱者の皆さんを騙していてごめんなさい」するとか、急いで中高の教科書を書き直したりするのが先と違いますかね?

つづく


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