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MMTの「お金は『借用書だ』論」入門−第二回:負債とその解消

 ええと、実は「人びとのMMT入門」というタイトルの「マガジン」というのを作成してるつもりだったのですが、どうやら最初のプロローグを入れ忘れていて、つい先程入れました。どうぞよろしくー

 あらためて、今回は4つ目の記事になります。よかったら全部よんでほしいです。

 プロローグ
 言葉を大切にしましょうよ(経済学者を反面教師にして)
 MMTの「お金は『借用書だ』論」入門−注意事項あり

負債を負わずに生きることはできないという話

 前回の話でお伝えしたかったことは「人間は社会的関係の中で生きている」ということです。これは避けがたい事実。

 読者のあなたも、他人が用意した食べ物を食べたり、他人が建てた家に住んだり、他人が縫った服を着ているはずです。そうしたものを入手するときに、あなたは必ず「世界に何かを負っている」のです。それを I owe someone という状態だと言っているのです。

 家族に何かの家事をしてもらったら、その人に負債ができますね。それはたとえば「肩を揉む」ということによって幾らか「解消」することができます。それは「肩たたき券を渡す」という形態を取ることもあるでしょう。

 こんな例はどうでしょうか。

 あなたに小さい子供がいらっしゃるとして。ある朝あなたは体調がすごく悪くて、その日はお隣さんに子どもの世話をしてもらった。そうするとあなたは「I owe お隣さん」という状態になるわけです。「借り」ができた。ただ、この「負債」を解消するための方法はいろいろ考えられますね。以下はほんの数例ですが…

 「なるべく親切にするようにする」
 「軒先を掃くときはお隣さんのところまで掃くようにする」
 「困っていることを手伝う」

 ほんの数例ですよね。当然のことですが、人によって、状況によって、方法はいろいろ。その多くの方法の一つに「特別な紙を渡す」という方法があるということになります。上の「肩たたき券」はまさにそうした例です。

貨幣は負債の一形態だという話

 このように、負債を解消する方法は紙とは限りません。

 負債を解消するために「紙」を使うことがある。しかし負債がいつも紙」で解消されているわけではない。この理解がMMTを始めとした負債論や信用貨幣論の議論で忘れてはいけないポイントの一つです。

 ただし普通の「肩たたき券」は貨幣とは言いにくいものがあります。でも同じ「肩たたき券」であっても、発行者が「5分間1000円で肩たたきをする人」だったらどうですか?これはもはや貨幣です。

 その子(発行人)は父親と母親が同居していたとして、いま父親だけが券を持っているとしましょう。父親は、母親に何かをしてもらった負債を解消するために「これで子どもに肩たたきをしてもらって!」と言って母親に券を渡す方法を採ることができることになります。
 ここで注目してほしいのは、父親は子どもという「自分以外の人」が発行した紙を「自分の負債」を解消するために使っているということです。貨幣が流通するというのは本質的にそういうことですよね。そういうのが負債論の議論です。

 ここでまた注意を促しておきたいのですが、この紙が「1000円という数字が書かれている紙」であるか「数字が書かれていない紙」であるかは本質的な違いではありません。そして、両親に負債があると感じている子どもが「紙」を発行せず、たんに「親の肩を叩く」ことでいくぶんかの負債を解消するということは、ありふれた話なわけです。

 このように、貨幣は社会的な人間関係の一部を構成しているものと言えます。伝わったでしょうか。。。負債のほんの一部なんです!

 八百屋で大根を買うのも同じなんですね。あなたは他者から大根を手に入れる。その負債を解消するために、八百屋で無償アルバイトをするのもありかもしれませんが、一般的には国が発行した「数字を書いた紙」を渡すということになっている。

MMTの諸特徴?

 いかがでしょうか。MMTについて時々「MMTは信用貨幣論に立っている」とする人がいらっしゃいますが、そんなに難しい話ではなくて、それは今回書いたことが本質です。こういう観点で世界を調べていくことを学者が「信用貨幣論」と言っているだけで、難しげな言葉にビビる必要はありません。

 それどころか「MMTは信用貨幣論、内生的貨幣供給理論に立っている。」という学者の言い方にこそ、むしろ問題があります。「自分はその理論の立場を取らない」というようなバカがこの国ではあとを絶ちません。しかもバカはそうすることによって、人間関係の根源である「債権−債務」関係の議論のほとんどの部分をないことにしてしまっている。だからそんな連中は教壇に立つ資格が疑われる、知的にダメな連中ですよね\(^o^)/ということになるのです。

 その他の「難しげな用語」としては「貨幣ヒエラルキー」とか「ストック・フロー一貫モデル」とか「機能的財政論」とか「租税貨幣論」など、あるじゃないですか。

 このうち「貨幣ヒエラルキー」も今回書いたような話で、それは八百屋では「子どもが発行した券」よりも「国が発行した券」が受け取られますよね!ということです。 

 また「ストック・フロー一貫」というのは、父親が持っている「肩たたき券」は子どもにとって負債であると同時に父親にとって同じ価値の資産だという当たり前の話です。ビビらずに行きましょう!

つづく

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