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「ぽくぽく」と生きていこう~「池大雅展」~

 コロナと背中合わせで暮らす毎日。観たい展覧会があれば、東京でもどこへでも駆けつけていた日々はどこへ行ったやら。いつかまた、そんな日々は戻ってくるのだろうか・・・。ふと厭世的な気分に襲われる中、京都文化博物館で「池大雅展」を見た。

 びっしりとすき間なく描き込まれた絵は、美しいと思う。その超絶的な技巧にうなり、「負けました」と感心させられる。だがいつからか、余白だらけの絵が好きになった。一歩間違えれば、ヘタウマ絵になってしまいそうな、力を抜いて描かれた絵が。それは心を和ませ、「いろいろあるけど、まっ、いいか。」と気持ちをほぐしてくれる。大雅はまさにそんな絵を描く。

 展覧会のメインビジュアルに使われている、『山亭小酌之図』という作品がある。山奥の東屋に友が集い、酒を酌み交わしながら、談義に花を咲かせている。集う数人の友の表情は楽しげでかわいらしくて、見ているこちらも笑みがこぼれる。「ぽくぽく」とした味わいの絵だ。

 今回の展覧会で面白い試みだと思ったのは、キャプションの冒頭に、その作品を端的に表す一言が記されていることなのだが、この作品についての一言は、「山奥に住んでいるけれど寂しくはない。友が来てくれるから。」というような内容だったと思う。ふふふ、いいよねぇ。たまにしか会わない友だけど、会えば変わらず話が弾む。人生それでいいんだし、それが一番なんだってね。それが彼の人生の楽しみ方。わかる。

 キャプションの冒頭の言葉といえば、『書簡(あさり貝令状)』では、「あさりをくれてありがとう」と書かれている。その「ぽくぽく」感がいい。あさりのお礼状が後世に残され、表装されて博物館に展示されるとは、大雅自身思ってもみなかっただろうけど、大雅という人の素直な人となりを示すには、最高の資料だ。

 収まりそうにないコロナの嵐の下で、先行きに不安を感じ、心がとがり、言葉がぎすぎすしてしまいがちだけれど、大雅の「ぽくぽく」とした絵を見て、それに呼応するような、味わいあるキャプションを書いた学芸員さんのセンスにさらに和まされ、力を抜いて「ぽくぽく」と生きていこうと思ったよ。自分なりの楽しみ方を大切にして。

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