内在化された彼岸の点滅

逃走に続く逃走。何処までも逃げの歯車が根幹を動かす。錆が魂に付着し、肉体を蝕む。

「居場所がない」と孤独に嘆く彼女の全てが虚言であり、欺瞞に包まれていた。

闘争自体が逃走だ。思考を麻痺させ、鈍感に、そして盲目的に自己を消費する。君はこの世界を生きられない。

白紙ですらない。物体すらない。何ひとつない。

自己像と主体の相克。生きる屍に過ぎない。

気付いてほしかった。気付かないでほしかった。笑ってほしかった。泣かないでほしかった。

絶えない乖離の連鎖が偽りを構築する。君はこの場所に来るべきではなかった。

内在化された彼岸が常に点滅を繰り返し、ないはずの境界線を反復する。

救済は救済なのか?

言語化できない。脳内に蠢く実態なき感情が独りでに歩き始める。

「一旦休もう」

掃いて捨てるほどの安直な言葉。僕の断片が返答をする。失った優しさの呼び声。もうそこにはいないのに。

縋るべき絶対性を失った。羽の存在を信じることができなければ、鳥は空を飛ぶことはできないのだ。

僕はただ彼女の背中をさすることしかできなかった。


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