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オンライン演習講義のデザイン:会話可能な小グループの重要性

色々な試行錯誤をしたプログラミング演習のオンライン演習講義、とりあえず無事終わりました(まだ最終レポートはありますが)。

最後の講義で、学生さんたちにアンケートに回答してもらいましたが、95%近くの学生さんから回答をもらい、びっくりするくらいに高評価でした(ちょっと泣けそうになるコメントもありました)。また、学生さんたちの達成度も例年に比べて高く、成績もまた例年に比べてかなり高いものとなりそうな感じです。今年のリモート化は最初から負け確定だったので、なんとかなったばかりか、高評価となってよかったです(おそらく、学生さんも教員も一緒にこの時期を乗り切った同志的な感じになったために、高評価になったのだと思いますが)。

学生さんたちの成績が良かった理由には、「typing.runやaskTA、採点可視化システムなど実現したサービスが効果が高かった」「サークル・バイトなどによる悪い影響がなかった」「負の同調圧力(一緒にゴールしようね系のもの)がなかった」「遊びに行けないから仕方なく頑張った」「そもそも入ってきた学生さんが優秀だった」「例年と同一の評価軸になっていなかっただけ」など色々考えることができて、何故かということは絞れませんし、数年後にどうだったかを見ることでしか判断できないとは思います。

ただ、学生さんのアンケートからオンライン演習講義においてどういったことが重要だったのかが見えてきましたし、これは他の大学・学部などでも実現できるものだと考えられますので、それらについて何回かに分けて紹介していこうと思います。

まずは最も評価が高かったRemoによる小グループでコミュニケーション可能な、演習講義実施の話。

私が担当しているこの演習は、週に2回(月水)、それぞれ2コマ(200分)の講義があり、講義開始のタイミングでまず学生さんたちの予習を補足するような説明をし、課題を提示します。また、提示した課題(全員向けの基本課題と、上級者向けの発展課題)について、講義中に提出してもらい、基本課題についてはリアルタイムに採点し、間違いがあればフィードバックを返します。200分の講義中に正解プログラムを提出できなかった課題については点数が付かないため、学生さんたちは演習講義中は必死に課題に取り組むことになります。

ここで、プログラミングは課題を読み解き、プログラムに落とし込むということは容易ではないため、どうしてもレベル差が生じやすいですし、また不慣れな英語の文字列、カッコやセミコロンなどの問題もあります。そのため、学生さんの悩みを解決するTAさんが重要になるのですが、うちの学科だと学生TA比が1対15~20近くになるため、1人のTAがかなり多くの学生さんをさばく必要があります。当然ですが、破綻してしまい対応できません。

学生さんを会話可能な小グループに分割

そこで、学生さんを小グループに分割し、その小グループごとで独立したコミュニケーション(音声・映像を利用した対話+画面共有)を可能として学生間でまず問題解決をはかり、そこで問題解決できないときにはじめてTAさんに質問に行ってもらうことにしました。

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実現には、Remo Conferenceを用いて、出席番号順に学生さんを4人ずつ30のテーブルに配置し、Remo Conferenceのテーブルでのコミュニケーションシステムを利用して、音声・映像による対話、また画面共有による問題解決をはかるという方法をとりました。

座席の配置を、自由にさせるという手もありはするのですが、1年生は知り合いも少なく、またあぶれるひとが出る可能性も考えられたため、こちらからえいやと決めてしまいました。

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この方法により、TAさんが受け付ける質問の量を適切に制限でき、対応が時間内に終わらないということはありませんでしたし(askTAによる補助もありましたが)、学生さんからの評判がかなり高かったのが印象的でした。自由記述形式のアンケートだったのですが、93件の回答のうち、23件にテーブルでのコミュニケーションが良かったとの記述がありました(記述していないだけで、同じような意見をもつひとも多いと考えています)。

反省点と改善

ちなみに、テーブルに余裕のない初心者ばかりが集まってしまい、独力でずっとやっていたというテーブルが、30テーブルのうち1~2テーブルにありました(週2回実施の演習講義で余裕がなかったのもありますが、少なすぎて気づききれてませんでした)。これは反省点の1つです。

改善方法は簡単で、テーブルのメンバーを定期的に変更するだけですむのかなと考えています。演習講義3~5回に1回、座席変更をするなどしたら(また、その際に実力を配慮できれば)、もう少し満足度は高かったのではと思っています。

Remo Conferenceを使わない実現方法

私はRemo Conferenceを利用して実施しましたが、Remo Conferenceはそれなりにお値段がするため(しかも最近大幅な値上げ!)、予算的な都合がある場合は学生さんたちのメールアドレスを事前に集めておき、Zoomでブレイクアウトルームを事前割当しておいて、ブレイクアウトルームの作成・解除を講義にあわせて実施するのが良いのかなと思います。

ただ、部屋数制限と、ブレイクアウトルームに入るという操作を行う必要があること、また一番問題なのはブレイクアウトルームでカメラONにしつつおしゃべりしていた所で、急に全員がいるところに戻されてしまい、音声や映像が流れてしまうという事故が起こるので注意が必要ですが。


ということで、プログラミング演習など、リモートでの遠隔演習講義では、学生さんたちを小グループに分割し、その小グループ内で好きなときにコミュニケーションをとれるようにして問題解決を図りつつ、必要に応じてTAさんがサポートする方法が良いよという話でした。

ちなみに、リモートでやりたいわけじゃないです。やっぱり対面が良かったというコメントはそれなりにありましたし、あまりに色々気を遣うことが多すぎてしんどかったので。

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