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STEPS AHEAD展に行ってきました

◯です。

先日、アーティゾン美術館で開催されている「STEPS AHEAD」展に行ってきました。

内容としましては、アーティゾン美術館の新規収蔵コレクションと既存コレクションを中心とした展覧会でした。

まさにアーティゾン美術館の今を形取るような、集大成とも言えるような展示でした。

美術館のアウトプットの為に始めたnoteなのに、最近色々な形でアウトプットしていてnoteの本来の動機が疎かになってしまっていたので、今日は展覧会レビューを久々にやります。(昔もやってたか???)


所感

所感はというと、とにかくボリュームがすごい。ほんとにすごい。

気づいたら時間が消し飛んでいたような感覚です。こんないたの!?ってなるくらい内容が濃かったです。

コレクションの幅もすごく広く、印象派以降の作品がこれでもかと言わんばかりにあふれていました。

印象派以降の作品は個人的にどストライクなので、本当に楽しかったです。

絵画だけでなくて、彫刻や家具、版画集も混ぜてくるあたりが本当に終始飽きさせないポイントだと思いました。


日本西洋画の出迎え

個人的にもっともアツいのが日本西洋画。

興味関心が最近一番強く、様々な画家を物色しています。

そんな日本人の作り上げた西洋画が、序盤に出迎えてくれます。

中心に君臨する藤島武二の『東洋振り』、キャプションの隣で最初の出迎えをする黒田清輝の『針仕事』が美しすぎて眩しい。

その破壊力に飲まれながら見る青木繁の『海の幸』。

僕はこの作品の力強さが大好きで、何度見てもパワーをもらっています。

美しさからの強さ。その後にあるのが憧憬。

松本竣介の『運河風景』や、荻須高徳の『アベスの階段』が異国への憧れを思い出させてくれました。

ユトリロの仄暗い街並みをリスペクトした荻須高徳は、特にリアルさがにじみ出ていて好きでした。

加えて、間にある印象派の面々。美しさと眩しさと柔らかさと暖かさ。

贅沢なコンボに飲まれながら、しょっぱなから圧倒されるのでした。

要は全部サイコーだったけれど、特に最初はサイコーすぎたってハナシ。

話し方まで歪むほど、神秘的な空間であったのでした。


カンディンスキー

キュビズムを超えた先に位置するのが、パウル・クレーとカンディンスキーの作品群です。

アーティゾン美術館は以前パウル・クレーの特集をしていたくらい、クレーの作品のコレクションは充実しています。

特に今回は、『宙飛ぶ竜の到着』がお気に入りでした。前章のキュビズムを継いだような四角い竜が描かれており、何か神秘的な雰囲気を漂わせていました。

そして、今回の新収蔵作品のラインナップにも入っているカンディンスキー。

カンディンスキーといえば音楽を可視化させた絵画が代表的ですが、今回収蔵されたのは風景画。『三本の菩提樹』という作品です。

暖かな木漏れ日の中。色彩の暴力のような鮮やかな自然。そこに飲み込まれるような世界。そしてノスタルジー。全てを感じることができたこの作品。この展示のトップ3レベルでのお気に入りです。

ちなみにあまり深くは触れていませんが、キュビズムの章もめちゃくちゃ最高です。ブラックやレジェ、大好きなザッキンまで。お腹いっぱいになるレベルの充実した展示内容でした。

ジョアン・ミロ

抽象表現主義の女性画家たちを中心にの章で出てくるのがジョアン・ミロ。

エレイン・デ・クーニングなどの女性作家の素晴らしい作品もある中、こんなにミロの作品を一度に見たのは個人的には初めてでした。

ミロのなんともいえないポップな抽象表現がとてもお気に入りです。

黒+色彩で組み合わされた抽象的な作風。ミロだけにしか作れない、確立した世界観。

これがたまらなくいい。『絵画』という巨大でダイナミックな作品は、ミロの世界そのものでした。

それと、人生で初めてマーク・ロスコの作品を見ました。

Tempalayの20世紀より愛を込めてのティザー映像で初めてロスコを知り、いつか見たいとずっとずっと思っていました。次はロスコルームを目指して。


具体の絵画

ここでは、僕のお気に入りの元永定正と白髪一雄に焦点を当てていきます。

元永定正の『無題』という作品。元永定正のイメージはゆるい感じだったのですが、この元永定正の作品はなんだか邪悪さを感じました。

禍々しさを醸し出す、元永らしいのかどうなのか、なんにせよ今まで見たことない感じの元永定正を見れて、なんだか新鮮でした。

この元永定正の作品も、新規収蔵作品であるそうです。

白髪一雄の作品は2点。『白い扇』と『観音普陀落浄土』です。

白髪の真骨頂は、ぶら下がって足で描く技法。この技法があり、力強いエネルギッシュで壮大な作品が生まれます。

この2作品は、まさにこの技法の権化のような作品でした。アクション・ペインティングとはこういうものだと、雄弁に語るようなこの作品は、まさに具体なのでした。


最後に

長すぎちゃうのでここいらで閉めます。

他にも魅力的な作品はたくさんあります。

技術課の肖像写真コレクションや、同時開催のマリノ・マリーニの展示、締めのマティスなど、アーティゾン美術館らしさがたっぷりと詰まった展覧会でした。

収蔵作品コレクションは、その美術館を映し出す鏡のようなものです。

それらを一挙に公開することによって、美術館は美術館らしさを持つのです。

コレクションを持たない国立新美術館などもあるから、それは一概にはいえないかもしれませんが。

とはいえ、これこそ美術館の個性であると僕は思います。

個性は誰ともかぶることはありません。

自分らしさを描く展示、それがまさにコレクション展示であるのだと、鑑賞後思いに浸るのでした。

すっごいいい展示でした!満足!

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