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[作品紹介] "Rediffusion1"/The Replicants -人造人間の演奏家たちに寄せて-

※本稿は、フィクションであり全くのデタラメです。

2020年にリリースした作品を振り返ってみます。2021年の大晦日ですがね。
時間が経ち距離を置いたところで、解説ではないのですが解釈の一例として記しておこうと思った次第です。音楽家として自己批評はほぼしませんが、統合人格である実名においては少し口を開くことが可能になります。

作品はこちら。(配信サイトBandcampのリンク)

The Replicants / Rediffusion 1 (-IMAGE CLUV-)
iTunes Store, オルタナティブ, トップアルバム, 日本, 32位 (2020年3月24日)

※各種サブスク配信終了につきBandcampからお聴きください

この作品の問いはいくつか考えられる、例えばこんなこと。シンギュラリティの向こう側、人間にしかできないとされる感性的で創造的な仕事を、人造人間が実行する未来像はないだろうか。
そしてそのとき、人造人間の創造性によって、人間が感動するかもしれない。

人造人間は、人工物という記号に囲まれて育った現代人を模しているモチーフにしていると読み取れる。そして、その(人造的)人間の感性が生み出す表現には、どのような意味があるのだろうか。

無機質なものかも知れず、エモーショナルなものかも知れず、予定調和であるかも知れず、前衛的で実験的なものかも知れず。そういったアンビバレントな可能性をごちゃ混ぜにして提示した世界観が、The Replicants ではないかと認識しています。

そしてアーティスト名とアートワークについて。これらは匿名性によってアーティストの主張を後退させ、BGMに近いスタンスを取ろうという姿勢もうかがえる。「誰なのか」を横に置くことで、困惑して聴いてもらいたい意図があるのかもしれない。
ちなみに、3体とも色は違うがコピーアンドペーストである。メンバーでもない(人数も3人ではない)し、着色と角度が異なる3体であるが、なんとなく差異を見出そうとする方も多いのではないだろうか。せっかくなので、我々が持ちがちなバイアスというもの感じでいただきたい。(別に悪いことではないのだが)

それでは、楽曲ごとに世界観を妄想してみるとしよう。
※ それぞれ音源の埋め込みも載せてみたので聴きながら眺めていただくのも一興かと


M1 Persona non grata
出発であり洗脳である。オンガクは「時間の芸術」であり、そういう力がある。余計なものに気を取られず、音の快楽に溺れ、自分にとって都合の良い意味を見出す。


M2 Oysters
人造都市のハイテクビーチで夏を満喫。西海岸にも地中海にも昼にも夜にも加工できる。この日はベニスビーチ風のロケーション設定でオイスターバーでのパーティー。スムースで盛り上がりに欠くが、多少の官能はある。


M3 Film Noir
SFギャング映画『しくじるな』の挿入歌。鳴り続ける低音は不穏とスリルを、ピアノは安堵と浄化を提供し、ほかの各所でも少しおかしなことが起こっている。怪しげなモジュールが連続したのちにやってくる、ややソウルフルなパートに、名誉ある男たちの覚悟を垣間見る。


M4 Cenote
歴史が積み上げた神秘は、どの時代にもカタルシスをもたらす。しかしこれを日常のものとしては、その効能が低下してしまう。カオスの中に位置付けられてこそ、心が奪われるというもの。


M5 Segreto
シンサイタマにあるキャバレーでは、人造人間による箱バンが常駐している。彼らは、日頃店内のBGMを演奏する。レパートリーはほぼ無限であるが、自然な演奏感を出すため、不完全な要素をインストールされていると聞く。
また、突然のカチコミに対してはバトルモードが起動し、侵入者を必ず制圧するとのこと。


M6 Fentanyl
ミナトミライ22では、ベイサイドビューをより楽しむために、合成オピオイドを服用してからのスカイドライブを推奨されている。自動運転レベル12が実装され、ドライバーが同乗せずとも運行できるようになっているため、どんなに感覚が鈍麻になっても、港の景色との調和をいくら楽しもうが、無事故無違反である。


M7 Time of Your Life
作品中でもっともエモーショナルなナンバー。人造人間にとって人生とは何の意味があるのか。記号に意味を見出せるのは人間特有の感覚であり、人造人間には不可能なことであるように思えるが…。


M8 Street Hooker
ジャパンディストリクトにあるシンジュクは、いつだってバーチャルトリップの発着点である。お帰りなさいを言ってくれる機械音声に安堵する。


おわりに

個人を切り離した名義・プロジェクトにしたのは、非現実を徹底した世界観にしたかったからかもしれません。レーベルも、-IMAGE CLUV- という奇天烈なホーム以外は考えられませんでした。結果として、理想(というか素)に近い形で出力できた作品になりました。

クレジット

Trumpet: Issei Igarashi(M5), Chihiro Murata(M7) , Shun Yonehara(M3)
Talkbox&Saxophone: Arban Kitanaka
Bass: Tape Okubo
All Music, Lyrics & Arrangement: The Replicants
Produce: The Replicants
Art Work: Kazuki Homma


【参考】

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