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知られていない物は存在しない。そんな単純で当たり前のマーケの話:後編


認知とそれ以外の掛け合わせについての話の後編。
前半はこちら。


認知/理解のステータスと、それに対応したマーケティング施策・関連する要素の状況の掛け合わせが成功に大きく関与してくる事の、個人的な知見(感想)の話。
少しでもマーケティング業務の参考や、小咄になればと思う。


■事業会社転職後に扱ってきた主なブランド・サービス
・海外Wi-Fiレンタル
・クリニックの自由診療・主にダイエット系メニュー
・クリニックのPCR検査
・独自技術採用の除菌消臭、感染予防商材
・暗号資産取引所


クリニックのPCR検査


新規ビジネス立ち上げの話は別の記事に書いたので、そちらを。


2020年初頭には、サービスとして存在していなかった郵送対応の自主唾液採取型の自費PCR検査。
駅前に格安検査所を某工務店グループが開設し始めWebメディアで紹介されつつあるくらいの時期だった。
ブランドどころか、サービス事態の認知も理解もほぼなし。誤解やネガティブな印象を与える可能性も高く、ユーザーのベネフィットが正しく理解されずらい環境と言う、厳しい状況の中で、ビジネスをロウンチし、目標の申込み数の達成を目指さなければならない。

ちなみに、今から2年ほど前の話だが、あの頃の空気感を覚えているだろうか?
感染したら徹底的に封じ込め、濃厚接触者も管理され、職場やクラスターは封鎖されるという対応の中で、感染していない事を知る事がどれだけ重要だったか。
でも、公的な検査は一般には難しく、自費診療は3~5万程度の費用がかかり、その上クリニックに訪問するしか方法はなかった。
工務店の駅前格安検査所は、一つの救いだったが、場所が限られている。
生活者にとっては、日々漠とした不安にかられる中、可能なら陰性である安心感を得たいと言う要望が強まっている状況だった。また、仕事や家庭の事情からどうしても検査が必要だけれど受診できる環境がなく打つ手のない厳しい状況でもあった。

つまり、そこには潜在的な大きなニーズがあり、この検査サービスが認知され理解されれば、ユーザーの要望に応える事ができ、十分に勝つ、成功する可能性が高い環境だった。


で、何をどうやって行ったのか

ニーズも明確、ターゲットも幅広く想定できる条件に対しては、生活者の要望に応えるシンプルなメッセージを、できる限り広く多く訴求する王道の展開を採用した。
この施策の一番の肝は、誰も訴求した事のないサービスのコミュニケーションをどれだけ大量に届けるかと言う事、つまり、新規で新しいカテゴリーのマーケティングに、どれだけの規模の投資ができるかと言う事になる。
付帯する重要なポイントは考査。

投資に関しては、残念ながらマーケッターだけでは決められない。上場会社ではなく、委託元のクリニックとの信頼関係も厚い状況だった事もあり、有名社長の決断で数億規模の投資が短期間に決まり、検査に関わるインフラ、システム開発、TVCMを始めとするコミュニケーションなどの実施を決める事ができた。

メッセージは、できる限り絞ったがそれでも、安い、早い、全国的どこからども自宅から郵送で、の3つになった。
CM内では1つに絞りデジタルで補完すればとの意見もあるかもしれないが、この場合その方針は多分失敗すると判断した。

知るべき事、自分にとって利便性のある新しいサービスの利点を理解できていないと、検索されない。さらに、対象者の特性や状況からみて、検索行為は申込みに直結した状況にする事がより重要だと思われたからだ。
情報量の多い新しいサービスの認知と理解のためには、瞬発的に圧倒的な量が必要だ。投資の決断はここに直結する。

マスメディアの高カロリーなコミュニケーションにプラスして、タクシー広告によるtoBターゲットへの訴求、デジタルでの補足、初期段階での集中したコミュニケーションの結果、2ヶ月後には驚くほどの反響を得る事ができた。


このコミュニケーションにはネガティブな反応も多かった。不安を煽るビジネス、意味のない検査を売りつける官と癒着した拝金主義者などなど、今も一部では燻っている。
しかし、当時感染の不安にかられた人に必要とされていた物であるのは間違いない。また費用も、当時の主流の半額以下で検査サービスを提供できていた。それにより、全国の人々の要望、国や自治体が提供できていない検査を補完するサービスを迅速に幅広く提供できた事に違いはない。

個人からの申込みと同じかそれ以上に、中小の法人からの申込みが多くかった。実情として、従業員の感染予防と平行しながら業務を遂行しなければならないが、公的な指標や明確な基準が無いなかで、状況を改善するサービスと判断されて申込みが殺到した事も、個人思想や主義は別にして、サービスとして社会ニーズに応えた正しい物だったからだと、今でも胸をはって答えられる。

まとめとして、説明しよう!

簡単に整理すると、

  • ・直接競合無し、価格優位、シンプルかつ迅速なサービス、全国手付かずなマーケット
    ・潜在ニーズ、潜在ターゲット甚大
    ・他社訴求未実施なカテゴリー

なビジネスを新規に立ち上げる際には、

  • ・ユーザーの行動はできるだけシンプルになる商品構成
    ・細かな説明がなくても実行できるサービス構成と製作物
    ・ニーズ(この場合は時間)に応える事を優先としたプロセス設計
    ・個人にも法人にも柔軟に対応できるが構造は共通のシンプルなシステムと業務遂行体制の構築

などのユーザー目線を徹底したビジネス構築をして、

  • ・絞り切ったメッセージ
    ・ブランド訴求ではなくベネフィット(機能/情緒)を直接 
    ・大量に幅広く
    ・toBターゲットも日々の生活はCとの割りきりでTVを中心に、検索誘導ではなくダイレクトな申込みをアクションとして設定する
    ・細かな説明が必要なユーザーにも応える複階層の情報発信設計

などのシンプルで大量かつ、繊細な細かさをバックアップで持つマーコムを実施する事で、未開拓なマーケットへの新規ビジネスマーケティングは、成果を上げる可能性が高くなる。

何ひとつ欠けても、たぶん短期間で100億規模のビジネスにはならなかったと思う。
ちなみにこの段階ではクリニックのブランドの訴求には重きを置いていなかった。
賛否両論を受けながらサービスの認知・理解が、狙い通りあっと言う間に高まり、それに紐付く形で「ついでに」ブランドが知られていった。
ブランドが「正しく」認知されていくのは、このビジネスが成功し定着した2年後のブランドコミュニケーションを行ってからだ。
PCRのクリニックから、クリニックのPCRへの変換は、これまた力技のマーケティングだったが、別の機会に。

1つのサービスの話だけで、長い内容になってしまったので、認知とその他の要素をどう考えて対応するかの話はいったんこれで終わります。

暗号資産取引所のマーケティング施策は、個人的な感想も含めて、成功と失敗の話として、改めて記事にします。



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