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ヲススメラヂオの小説 part2『ふがいない僕は空を見た』

 どうも、こぞるです。ヲススメラヂオ第2冊目で石坂さんに紹介していただいた、窪美澄先生の『ふがいない僕は空を見た』について書いていきたいなと思います。
 ラジオは以下にありますので、先に聞くと、よりこれを書いている奴が何を言いたいのかがわかりやすくなるかと思います。20分弱ですので、パズドラとかモンストしながら聴いていただければ。

-作品内容-
 高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが――。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。

痛みの作品

 この物語は痛みが描かれた作品であると作品内容にもありますし、ラジオでも散々脅されたので、ものすごく構えていたのですが・・・。けっこうみんな幸せじゃん!ってなりました。もちろんみんないろいろ傷ついているし、斎藤くんに至ってはけっこう取り返しのつかない問題にもなっているんですが、それでも自分のところに来てくれる友人がいて、好いてくれる女の子がいて、しっかりと愛を向けてくれる母がいるため、いいなあとか思っちゃいました。
 さらにはこの斉藤くん、諸事情あってひきこもっちゃうのですが、それを少し乗り越える過程とか、やっぱり若さって無敵なんじゃなかろうか・・・なんて思ったり。ラジオでも未来への希望というワードが出ましたが、 そういった明るさも強く感じました。
 なので、私にとってこのお話は、痛みが描かれているというより、むしろ物語の第0話、スタート、始まりを感じさせるものでした。

誰の物語?

 というわけで、私としては第0話なので、このお話っていうのは高校生たちの物語ではなく、母の物語として受け止めました。
 この母というテーマは、まあ助産院が出てくることもありますが、確実に意識されています。この本は全5の短編からなり、様々な家庭が出てくるのですが、シングルマザーや夫の単身不妊など、そのシーンにおいて父というものが極端に遠ざけて描かれていています。ただ、別に父が役に立たないとか、そういったヘイト表現ではないこともあり、これはシンプルに母というものを不純物抜きに描きたかったのかなという気がします。
 そして、この0話では、母や、母と子を描いたからこそ、次の第1話で、傷を抱えた子供たちが、そこを離れて生きていくお話が紡がれていくのではないかと。

 まあ、第1話なんて無いんですけれども。

読者のちがい

 それから、ラヂオの中で何回か、読者が持つ感想の性差みたいなことに触れたのですが、どうなんでしょうか。全くないことはないと思います。もしかすると、今回私の意識が強く母に向いているのは、やはり男だからなのかもしれません。男はみなマザコンだという論を声高に述べている人を見たことがあります。
 また、ゲストの石坂さんは斉藤くんの彼女である七菜ちゃんの苦しさや痛みに共感を覚えたといっていましたが、私は彼女の強さに対して、すごいなという思いの方が大きく残りました。斉藤くんなんか、好きな人に振られて(それだけじゃないですが)うじうじ引きこもってるっていうのに、彼女はそんな斉藤くんに振られながら、まだ好きなんじゃ!って引っ張り出しに来るわけですから。
 もちろん個人差はありますが、母は強しなんて言葉以前に、女性のパワーってすごいなという畏怖と尊敬を抱くばかりでした。

さいごに

 普段なら手を出さないタイプの小説ですし、もしかすると、「面白い本ない?」って聞いて、この本を答えられても読まなかったりするジャンルのものです。でも、面白いんですよね。
 こういう出会いが得られるからこそ、この企画をやってよかったなと思っています。

 紹介ならびに出演してくださって、石坂杏子さんありがとうございました。

 それと、ラジオのページにも貼ってありますが、石坂杏子さんが主宰されている演劇をメインとした団体fatrripm(ふぁとりっぷむ)のtwitterアカウントを載せておきます。
 今回の自粛やらで公演を打ちにくい世の中ですが、面白いものを作ろうと活動されているので、ご興味あれば、ぜひ覗いてください。
→https://twitter.com/fatrripm


それでは。



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