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読書紹介 ミステリー 編Part5 『春期限定いちごタルト事件 』

 どうも、こぞるです。
 本日のご紹介は米澤穂信先生の『春期限定いちごタルト事件 』。小鳩くんと小山内さんという高校生2人による物語で、小市民シリーズと呼ばれるシリーズの第1作です。
 米澤穂信先生といえば、数年前にアニメが大ヒットしていた氷菓でも知られますね。デビュー作がライトノベル文庫であったからか、決してアニメっぽい口調で喋ったりはしないのですが、普段生きていれば使用しないような語彙が出てきたり、少し独特な、それでいてテンポのいい文体が特徴的となっています。
 下の画像が文庫版。ヘッダーの画像が漫画版となります。漫画版はめっちゃ美男美女感ありますね。

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-作品内容-
そしていつか摑むんだ、あの小市民の星を。
小市民を目指す小鳩君と小山内さんのコミカル探偵物語
小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに2人の前には頻繁に奇妙な謎が現れる。消えたポシェット、意図不明の2枚の絵、おいしいココアの謎、テスト中に割れたガラス瓶。名探偵面をして目立ちたくないというのに、気がつけば謎を解く必要に迫られてしまう小鳩くんは果たして小市民の星を掴み取ることができるのか?

 ここにある通り、2人の主人公である小鳩君と小山内さんは、決して恋人ではありませんが、お互いにある約束の上助け合うという特殊な友人関係にあります。
 物語は、この2人と、小鳩君の昔馴染み健吾の3人のレギュラーを中心に、5つの短編からなります。ただし、短編といっても、全てが完全に独立しているわけではなく、断片的に含まれた事件や人との関係性において一本のストーリーが描かれています。
 また、作品内容に書いてあるのを見てわかるように、この作品で起こる事件というのは、決して殺人や強盗などではありません。中には法に触れるようなものもありますが、基本的には日常のちょっとした些細な引っ掛かりが主人公たちの前に現れます。むしろ、主人公たちの能力があるからこそ、この引っ掛かりが謎たり得るのかもしれません。
 こういった、人が死なない日常に潜む謎を解き明かすタイプのミステリーは、そのまま「日常の謎」とか「日常ミステリー」といったジャンルと捉えられることが多いです。

 日常ミステリーにはファンも多く、謎解きは好きだけど、人が何人も死んだりするのは重くてあまり好きじゃないという人にはおすすめですね。私も好きで、一時期漁っていました。坂木司先生のひきこもり探偵シリーズ、北村薫先生の円紫さんシリーズ、初野晴先生の〈ハルチカ〉シリーズなどなどなど。これらもそのうち紹介できればと思います。
 また、数年前から流行っている専門店×ミステリーには、この形態のものが多いような気がします。時計屋さんとか、喫茶店とか、古本屋さんとか。

 話を戻しまして、この小市民シリーズの何よりも好きなところは、主人公たち高校生の高校生らしさです。やたらと語彙が豊富だったり、世間を斜めに見ていたりと、一見、こんな高校生いないよと思うようなキャラクターなのですが、世界とはこんなものだろうという自分の感覚への絶対的な自信や、冷静でいるようで、実際はたいして自分を制御できていない行動など、思うに非常に「ああ、十代だなあ」と胸に響きます。前述の氷菓もそうですが、こういった思春期の少年少女をミステリーに迷いこませることにおいて、米澤穂信先生は本当に素晴らしい能力をお持ちだなあと感心せざるを得ません。

 ちなみに、このシリーズはすべて表題がお菓子の名前を冠していまして、お菓子に関わる謎が出てきたり、小山内さんが大の甘党ということもあって、やたら色んなおいしそうなお菓子を美味しそうに食べているシーンがあります。ダイエット中や夜中の読書にはご注意ください。


では、このへんで。

ついでに、氷菓も貼っておきます。


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