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読書紹介 ファンタジー 編Part8 『テメレア戦記Ⅰ 気高き王家の翼』

 どうも、こぞるです。
 本日オススメするのは、ナオミ・ノヴィク作『テメレア戦記Ⅰ 気高き王家の翼』です。大人気長編ファンタジーの第1作で、新人作品でありながら、ヒューゴー賞にノミネートされた、イギリスを代表するベストセラー小説です。

ー作品内容ー
 テメレア―それは誉れ高きドラゴン。漆黒の翼はためかせ、この世に舞い降りた。清廉なる海軍将校ローレンスと深き絆を結びしその竜は、高貴なる血がため、苛烈な戦いへと赴く宿命にあった…
(「BOOK」データベースより)

 以前コメント欄で教えていただいたので、早速読んでみました。ドラゴンと軍隊の組み合わせって、なんでこんなに心躍るんでしょうかね。

ドラゴンVSナポレオン

 そうなんです。ナポレオンがドラゴンと戦うんです。これだけで、ワクワクしますよね。といっても、主人公のローレンスはイギリス人なので、ナポレオンは敵の総大将として君臨します。ラスボスです。多分。今のところは。

 ナポレオンが出てくることからもわかるように、物語は19世紀初頭から始まり、史実に沿って進みます。ただ一点、ドラゴンが存在するということを除いて。
 この、ドラゴンと、ドラゴンに見初められた人間の相棒が、各国において、空軍としての役割を果たしています。ドラゴンは、この世界で非常に希少な生物で、世界中の大国が独自に繁殖を繰り返しながら、産み育てていて、その大きさは小さいものでも10トン、種によってはその5、6倍にもなります。そのドラゴンに特殊なハーネスをつけて、体を固定した人間の一個小隊が、制空権を争う、手に汗握るアクションが、文字を通して読者の脳内を駆け回るのです。
 中には火を吹くドラゴンや、牙から毒液を吐き出すものもいて、巨大生物によるバトルが好きな方にとっても、痺れる作品となっています。

船より大きい小動物

 続いてもドラゴンについてですが、作中に登場するドラゴンたちは、知能が高く、人語を操ります。卵にいる間に言語を学び、孵化と同時に話始めます。なんて、うらやましい能力!もちろん、種族や個体によって、その知能にも差があるのですが、主人公の相棒で、タイトルにもなっているテメレアくん(生後数ヶ月・オス)は、とりわけ知能の高いドラゴンで、驚くべきスピードで、知能を蓄えながら、ローレンスにとってかけがえのない存在になっていきます。

 このテメレアくんですが、生まれた瞬間から、抱っこにはしんどいぐらいのサイズなのですが、それから数ヶ月後の一巻の後半では、そこそこの航海をする船ぐらいあります。けれど、これは訳者の妙もあるのでしょうが、全編を通して、かわいいです。
 牛とか羊を数頭丸ごと食べちゃう生物なのですが、「ふふん!」と笑い、自分が知っている知識を自慢げに語ったり、ローレンスに対して、親のような恋人のような敬意を示してくれます。知識は膨大ですが、生まれて一年も経っていないことからくる少年らしさが、なんとも愛らしいという、今までに無いドラゴンの可愛さを見せてくれます。
 作品中で、もしドラゴンに見初められてしまうと、空軍に入るしかなく、一生その中でドラゴンの世話をしなければならないと一部では嫌がられているのですが、そんな気持ちを吹き飛ばされてしまうほど、ローレンスとテメレアの会話(いちゃいちゃ?)には、心が癒されます。

四つの目から多数の角度

 ここまで読んでいただければわかると思いますが、この物語は、ドラゴンが存在する19世紀のヨーロッパという世界にできたオリジナルの空軍というコミュニティを中心に物語が進みます。
 一見すると、没入するのが難しそうなこの設定を、ローレンスとテメレアという一人と一匹、四つの目を通すだけで見事に表現されています。

 主人公のローレンスは、貴族の家の末っ子で、父親への反発から半ば家出の形で海軍に入り、たたき上げで艦長にまで上り詰めた人です。それにより、社交会などへの批判的な視点と、愛国心や社会通念を持ちながら、未知の世界としてドラゴンや空軍に触れ始めます。
 テメレアは、ドラゴンという種族に共通にある、好戦的な気性をもちながら、その圧倒的な知識を持って、数学や科学の知識、さらには国のルールについてを、社会の常識と言ったものを抜きに数ヶ月で習得します。そうして知識を得た彼は、ドラゴンでありながら、国や軍規というものに束縛されない感覚を持っており、それは現代を生きる私たちに近いところからの視点を与えてくれます。

 この、二人の主人公とも言えるローレンスとテメレアによって、作者が生み出したすばらしい世界に違和感なく潜り込みながら、純粋にワクワクとどきどきに浸れるという点は、『テメレア戦記』が名作ファンタジーたる理由の1つだと言えるでしょう。

さいごに

 現在、日本版の翻訳は6巻で止まってしまっていますが、原作は9巻まで出ています。もし、一巻を読んでハマった!という方は、周りに広めまくって、続編が訳されることを出版社に伝えまくるか、これを機に英語原作に手を出してみるのもありかもしれません。
 kindle版だと、読みながら英和辞書機能がつかえるので、ある程度日本版での固有名詞への知識があれば読めたりするかもしれませんよ。

 読みたいシリーズものがどんどんと増えてきて、困っていたのですが、さらに追加されましたね。にやにやと笑いながら「困ったー」と喚く毎日です。
 お名前を出していいか分からないので伏せますが、コメントで今作を教えてくださり、誠にありがとうございました。

それでは。

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