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読書紹介 ファンタジー 編Part3 『龍のすむ家』

 どうもこぞるです。
 今回ご紹介する作品はクリス・ダレーシー作(三辺律子訳)『龍のすむ家』です。またまたイギリスファンタジーですね。竹書房から出版されている文庫版を今回は読ませていただきました。シリーズものの第1巻ですが、これだけで満足できますし、次を読まなければ納得できないような謎を残して終わっている印象もありませんでした。

-作品紹介-
 下宿人募集――ただし、子どもとネコと龍が好きな方。 そんな奇妙な張り紙を見て、デービットが行った先は、まさに“龍だらけ”だった。家じゅうに女主人リズの作った陶器の龍が置かれ、2階には《龍のほら穴》と名づけられた謎の部屋があった。リズはそこで龍を作っているというが、奇妙なことにその部屋には窯がない。いったいどうやって粘土を焼いているのか……。ひっこし祝いに、リズはデービットに「特別な龍」を作ってくれた。それは片手にノートを持って、鉛筆をかじっているユニークな龍だった……。片目のリス・コンカーをめぐる不思議な物語!

 上は日本版の公式サイトから引っ張ってきたのですが、巨大な龍が出てくる、ファンタジー!な冒険活劇とは、またちょっと違った魅力の詰まった作品となっています。

日常ファンタジー

 魔法で悪を倒したり、強大な悪魔の手から逃れるようなスケールの大きなものではなく、少年少女の掌におさまる、そんなちょっとしたお話が舞台になっています。
 どれぐらい小さいかというと、物語の主軸になるのは、庭にいるリスだというぐらいです。びっくりですね。メインは龍ではないのです。下宿先のリズの娘であるルーシーが名付けた彼らの中の1匹が、一体どこへ行ったのか、怪我をしているようだが、どうやったら助けてあげられるのか。こういった主人公たちのリスへのアクションによって物語は進んでいきます。
 しかし、かといって、魔法や龍の不思議というのが、ついででしかないのかというと、そうではありません。

龍たちの存在 

 この龍たちは、すべて、下宿先のリズという女性が作った陶器であり、飛んだり跳ねたり語りかけたりすることはないのですが、デービットの心の中に何か感情やアイデアを投げかけてきます。原作版のタイトルは『The Fire Within』となっていて、その題のとおり、心の中に龍の火を芽生えさせてくれるんです。
 この原題については、本の最後にも重要なテーマとなっていますので、是非読んで確かめてください。むしろ、この原題を知っておいた方が、最後に「なるほど!」となれる気がします。
 邦題も好きですけどね。こういうタイトルを見ると、なんで「住む」と漢字表記じゃなくて「すむ」なんだろうとか考えてしまいます。

思ったとおりに動かないキャラクター

 これは、この作品に限らず海外の小説を読んでいるとよく感じるのですが、「いやいや、急にそんなことするの?!」という場面に出会うケースが、日本の小説よりも多い気がします。ハリーポッターくん、急にそんな怒らないでよ!みたいな。
 もちろん、だからこその面白さがありまして、今作のデービットやルーシーの行動に多く見られるそういった行動が、物語をぐいぐいと引っ張っていってくれます。デービットなんて20歳の大学生のくせして(こういった作品でティーンじゃないの珍しい気がします)、作中で11歳になるルーシーとガチ喧嘩して、拗ねて何日も口を聞かないなんてシーンがあります。
 20歳ってもう少し大人じゃなかったっけ?と思い、自分を振り返ってみると、たしかに中々のお子ちゃまだったので、海外の児童書の方が、そのあたりの表現にある意味容赦がないのかも・・・。

短い章の連続

 この本は、344ページの物語に42の章があり、短いものでは5ページほどでおわるという、本当に短い章の連続で、それらにそれぞれタイトルが付けられています。私は、タイトルというものがすごく好きで、本屋に行った時などはジャケ買いならぬタイトル買いをよくするため、これだけ多くのタイトルが並んだお話というのは、それだけで少し嬉しくなるものがあります。また、ありがたいことに、夜中に読んでも寝るタイミングが見つけやすい気がします。

さいごに

 原作では最終巻である第7巻まで全て出版されたようですが、日本語訳はまだ5巻までしか出版されていません。外国小説の悲しい性ですね・・・。
 ただ、じゃあ原作はどうなんだと思って、英語版のサンプルをkindleでダウンロードしてみたところ、最初の数ページではありますが、かなり読みやすい部類に入るなという印象です。kindleですと、単語をクリックしただけで辞書が出てきますので、わからない語彙があっても割と平気ですし、難易度も、ハリー・ポッターとか指輪物語を原作で読むのに比べれると数段優しいです。どちらも読みきったことはありませんが・・・。
 もしこの第1巻を読んでハマった!となったら、あるところまでは日本語で読んでそれ以降とか、もう1周読んでみようとかを原作で読むと英語の勉強にもなり、翻訳を待たなくてもよく、いいかもしれません。
 英語アレルギーでなければ、サンプル読んでみてください。けっこう読みやすいです。


それではこのへんで。







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