なぜ日本は滅亡するのか

 貴方は、発展途上国を含め世界中で通用する国力の指標は何だと思いますか? GDP? 軍事力? それともノーベル賞受賞者や金メダリストの数?

 そのどれも違います。答えは、人口です。

人口=物量=パワー

 日本のGDPが中国に抜かれて久しくなりました。今では3倍近い差を付けられています。更にはOECDの発表では国民一人当たりGDPで韓国にすら抜かされてしまいました。

 日本がアジアの盟主と呼ばれたジャパンアズナンバーワンの時代も今は昔。バブル崩壊以降長い低成長に悩まされ、働き手が不足し、年金財源の枯渇まで心配される状況となっています。

これから日本に迫る人口減少は本当に大変な危機で、その危機に対応するには生産性を大きく向上させるしかありません。増える一方の社会保障費を、減る一方の労働者で支えるためには、それしかありません。生産性の向上ができなければ、日本経済は破綻します。

 東洋経済オンラインでは、デービッド・アトキンソン氏がこのように語り、最低賃金引き上げによる生産性向上によって日本経済を維持すべきだと主張しています。勿論、労働者が安価に長時間労働をさせられ、消費する体力を奪われていては国内経済の活性化はなし得ません。日本を優れた先進国とするためには生産性向上は外せないでしょう。

 しかし私はあえて言いたい。チマチマした生産性向上なんて、圧倒的な物量の前では誤差です。中国はいまやアメリカと並ぶ大国となり、軍事的にも経済的にも大きな影響力を持つようになっています。しかし一人当たりGDPで見ると、アメリカが9位であるのに対し中国は72位と決して高くはありません中国の強大な力は、その圧倒的な人口から生み出されているのです。発展途上国であるインドもGDPではイギリスフランスを抜いていますが、それも膨大な人口によるものです。

 これから日本が中国に負けない国力を身につけ、世界での発言力を保とうと考えれば、人口増は欠かせません。少子高齢化・人口減少社会ではどう足掻いたって国力のパイは減っていくので、革新的な生産性の向上を果たしたところで対症療法にしかなりません。太平洋戦争末期のように、物量の不足を工夫で補おうとするジリ貧の撤退戦となるだけです。

 このままでは、確実に日本は滅びます。「中国に侵略される」とか「北朝鮮からミサイルが飛んでくる」とか、そんな不確実なリスクなどではなく、確実に、老いた人が死ぬのと同じように、人口が減って日本人は死滅します。その過程で無理に国力を維持しようと考えれば外国からの移民に頼らざるを得なくなり、大和民族は土着の一民族でしかなくなるでしょう。国防や経済や環境問題等、政治課題は様々ありますが、一刻も早く解決しなければならないのが少子化問題なのです。

 少子化問題を解決できればあらゆる課題を物量で解決できます。そもそも高度経済成長自体がよく働き、よく稼ぎ、よく消費した多数の働き手によって支えられた成長だったのです。生産性が向上することによる体質改善的な成長を日本は経験できていません。「今まではできなかったけどこれからは生産性向上で成長できるはず」という希望的観測によって政策決定するよりは、「たとえ生産性が向上できなくとも人口が増えるから問題無い」と言える状況を作るべきでしょう。

もっともシンプルで強力な少子化対策

 よって、日本は「こども国債」を発行して大胆な少子化対策に乗り出すべきです。これは国民民主党の玉木氏が主張している政策ですが、新型国債として、子育て支援・教育支援に使える国債を作ろうというものです。私はMMT論者でもリフレ派でもないので野放図な国債発行で通貨の価値を毀損すべきではないと考えますが、しかし少子化対策と教育は最も単純に国力の増大に繋がる投資です。維持費がかさむばかりで必要性の無い負の遺産を残しかねない建設国債より、もっと抜本的で有効な投資なのです。

 現在、日本社会では「経済力が無くてまともに子育てできないくせに子供を産む親は無責任だ」と言われます。勿論子供に罪は無いのでその怒りもごもっともでしょう。しかし、そうして「まともで責任感ある親」のハードルを上げていくと、思慮深く堅実な人ほど子供を産むことに及び腰となり、少子化は進行してしまいます。

 合成の誤謬を解消し、個人の堅実な選択が全体として望ましい行動となるように制度設計するのが政治の役目です。子供を産めと女性に説教するのが政治家の仕事ではありません

 子供のいる家庭に対し、国債を財源にして大胆な資金援助を行うべきです。一人当たり月10万くらい配っちゃえばいいと思います。「子供を産めば産むほど税金でゆとりのある暮らしができる」という制度設計をしてしまえば、堅実な人も浅はかな人も、意識の高い人も利己的な人も、皆が子供を産み育てようとするでしょう。

 結婚や子育てに経済力が必要な時代はもう終わらせるべきです。子供のために。親のために。日本の未来のために。

 

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