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物語な詩群

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2022年9月の記事一覧

再会の日

再会の日

巨大な装置が
答えの出ない演算を続けている
人類がほぼ滅び
文明が崩壊する最後のときに
希望または絶望という
展開または断絶という
答えを等価に演算し続けていた

少年が一人
その熱で暖をとっている
棲みかにしている
父も母も帰らないままに
それでも待ち続けている
希望の言葉と
絶望の言葉を
繰り返しながら

それでも夜明けは美しく
星空は煌めいた
装置の熱で食べ物が生まれていた
そこに最後に希望

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ゆきをとめ

ゆきをとめ

わたしのはは は
 さっていった ゆきをんなだそうです
 ちち は
 ずっとしずかにうつむいているひとでした

それは、あの大雪の年にわたしが知った母の本当と、どうやらいとこであるらしい白すぎる手をしたすきとおるような声のひとりの少女との出会いからでした。

「ゆきをんなのいのちは、ひとのあたたかさにとけてしまうから」
「ほんとうは、いつかくるそのひをしっていたから」

ゆきをんなは、わたしをつれ

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