につき

いつまでもこの世に慣れない者です。詩など書きますが、啓示や悟りのようなものを久遠の階層…

につき

いつまでもこの世に慣れない者です。詩など書きますが、啓示や悟りのようなものを久遠の階層へ届けるために、UPしているところがあります。やむにやまれない己の衝動があって、書かざるを得ないことがあります。そのときはきつい表現があります。

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  • エッセイ群

    エッセイを集めます。

  • 紅玉原石

    抒情詩たち

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  • キカリ~星座になった母子熊~【童話・児童文学】

    (あらすじ)北の深い山にまだまだ熊たちが沢山いたころです。熊の中には、神様から生まれたものが混ざっていました。その名を「キカリ」と言いました。これは、そのキカリの母子熊の物語です。(一話冒頭)

  • 三行詩たち

    詩情と呼ばれるテーマが、消えてしまうまでに、言葉が間に合うように。 短くもっと短く / ろうそくの燃えるほどに / 命はこんなに燃えている

最近の記事

大切な一つのこと

奏でられる歌たちは 美声を求められている 春の夜はまだ明るい 弦楽器に弾かれる露は 瀬戸内のゆるやかな海へ 祖母と向かった列車を連れていく 記号に意味があると信じていた まだ目もはっきりと見えないころに 黒い猫と地震に怯えた 思い出という誉よりもずっと 黒い絵を描き切れず 傷痕は透明に包まれてしまった 花見の席の直ぐ傍の 桜の下で首縊りがあったのだ それは本当に他人事であったのか おおよその悩みは既に それぞれに答えがある 例えそれが気に入らなくとも 刹那の後ろ側

    • 無理やりな分配

      美人とは 嘘と欺瞞と 商業的な利己のための 操作と支配であると 65% 独りとは 一人きりの孤独を 抱き耐えるのではなく 久遠との対話であると 20% 曖昧さとは 混ざり合うべきでないものたちが 不当に混ぜ合わされているから 静寂と安寧の中で分離していくと 7% 雷鳴とは 春の夜に激しく屋根を打つ雨と 速やかに去ってしまう閃き 瞬間の轟く言葉だと 8%

      • ひたすらにやわらかな夜明け

        それらの言葉を知らずに運ぶ ひたすらに嘘を知らず ひたすらに身を削り ひたすらに生命は通信する その意思を知らず ひたすらに醜い言葉を吐き ひたすらに己に閉じこもり ひたすらに失うことを恐れ続ける 放逐されたと まるで拗ねて迎えを待つように どうせ救われないのだからと どこかに正しさがあるはずだと 正しさはこの世にない 苦しみだけが燃えている それらの言葉の中に正しさはない 過ちを余りに含みすぎる そして生まれた祈り 夜明けの光に命は震えを補充する 糧はそのための綱

        • 桜の秘密

          すっかり春になり 手入れされた 明るい川辺に 今年も桜が咲いた 並木の下を 恋人たちが手を繋いで歩く 子どもは母親と手を繋いでいる 暖かな曇り空の下 真っ黒な林を背に 桜が妖しく映え おいでおいでと手招きして 誘うように燐光している わたしたちを これほどまで 深く妖しく魅了する 桜には 秘密がある 夜になり 桜の老樹の根元から 呻く声が低く響く 果たされなかった恨みが 報われなかった祈りが 真っ黒な墨絵となって 浮かび上がる 朝になれば何処かへ消える 亡者たちの彷徨

        大切な一つのこと

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        • 傷一つない真実
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        記事

          灰色の影絵

          見た者が悲鳴を 上げるような絵を 真っ黒な影の絵を 恐らくわたしは 描くことが出来る しかし本物の 美しい花一輪を 描きたいとずっと 想い続けている 儚げなそして 凛とした輪郭の 不意に現れる 姿の無い気配を 消えてしまう姿を そうして 風景は余りにも 巨大で完全だから わたしにはとても 描きとれないから その影だけを 写しとり始めた それはやがて 線になり 文字になり 言葉になった だから今は 絵のない絵本の中で こうして 灰色の影絵を描いている

          灰色の影絵

          春の公園

          春の公園に 一人座り 面影が押し寄せた わたしはここに生きていて あなたはもういないのだと 心の何処かが血を流した いつか 薄れていく痛みを 裏切りだと何処か感じた 深海魚の骨が マリンスノーの やわらかな深みへ 沈んでいく そうして夢にばかり 毎日現れた面影を 何処か疎ましく思いながら 消えた生家の中で 笑い合っていた 人は消えない 繋がりある限り続く その為に わたしもまた 繋げたのだと 夢の中で夢を見る 目覚めてまだ 覚えている眼差しの温かみ 春がやって来る

          春の公園

          希望と狂気

          左手の爪を全て剥がした 血まみれの痛みを 利き手じゃないから いいでしょうと言う 熱帯夜から程遠い 甘やかな春の夜の香が 奥底に眠っていた狂気の 蕾を開花させようとしている ねばねばとした若葉の緑の 裏切りに似た香り 諧謔の夜であった冬が遠く 何者かであろうとしたい春が来る 愚かさが激しく押し寄せる 時遅れをぼやかせる 桜色の霞 それでも憂いは刻まれている 暗闇は木々の影に 土はまだ冷たいままに 相克の下に 狂気は至る 白面の一途とは 唯、真っ白に社会を見失った者

          希望と狂気

          春の狂気

          吐息を生む その前の 雪の冷たさに 遠く近く 突然の雷鳴に似た 生まれ変わりを 強制するごとく 出来事は 容赦なく訪れる 春が近づくに連れて 乖離する過ちと 許されようとする 頬の緩み どこにも行き場のない 葛藤が春霞に燃える 愚かさが跋扈する 桜色の惚け 「春先にはおかしな人が増えるから気をつけなさい」 引き裂かれるような 気がして 狂いが呼び覚まされる 三寒四温に 暴走する無明の精神 無表情の年知らぬ心 我知らず叶えられぬ願望 傲慢など知りもしない狭窄 それなりのロ

          春の狂気

          波と陽炎

          かつての憧れが 隣にまだある 呼ぶ声はいつも 異材を溶融する プラズマの真白な炎 きっと心を抑えて 淡々と謡えばいいのだと それで見えないところで 世界は綺麗になるのだと 言葉はとても残酷で丁寧に 来し方をなぞり 行き方を暗示する 我らは言葉から始まった そして超えるために 追い求めて止まない 声は文体と 一体のメタファーとなり 啓示は 語と語の溶融する ビートに現れる 引き裂く境界を超えんと 幾度も幾度も 捨て続ける詩文の果てに 水は鉱物の硬度と 液体の流れを 我らに

          波と陽炎

          永遠の午後

          かつての炎が 今は消え しかし確かに燃えていたこと そのことを夢に見る 失った生家がまだ 夢の中で建っている その中に見知らぬ誰かが 棲んでいて 誰だと問う 或いは 先祖であろうか 見知らぬどこか懐かしい顔が 恨めし気に見つめる 何処か暗い それでも なぜか遠く明るい 何処にもない家屋の中で まだ消えていないと 何時までも続いているのだと 青い炎が瞳に宿る 余りに静かな 永遠の午後

          永遠の午後

          詩 信じたいこと

          この世に 初めて咲いた花は きっと小さくて それでも まっさらな朝の 一つだけの夢だったことを 真冬の 窓ガラスに映る 静かな夜に 明日を待たない あなたの 憂いの瞳に つめたくて やわらかな ゆきがふることを おはよう いい天気 こんにちは よいお日和 こんばんは いい夜 挨拶たちは ふたりで しあわせを願い合うと 始めて本当になる そのためにあることを だからつまり またね さようなら 忘れられない挨拶を 忘れることが出来ることを

          詩 信じたいこと

          詩 境界

          パステルの 暖かな靄に潜む 冷たい刃たち もはや 穢れたままの 流れを泳ぐ我ら 曖昧な 揶揄追従だらけ 奇怪な物陰が 面白いと 壊れた継ぎ接ぎの 素直を 眺めているだけ レトリックではない ぎこちない 言葉の表側 歪が 明らかな者には 境界が引かれる リストに載せられた 剥き出しの心 社会より隔絶される 本当の純真 嘘の無い者に 冬の雨が降る 凍てた分水嶺に 穴の開いた 頭蓋骨が沈む 表情は消え 自画像が転移する 恐れが作り出す 歪な境界

          詩 境界

          詩 冬の天気

          波は 果てのはじまりを 知らないままに 溶けあっている 止め処なく 冬曇りの空と海と 道は家へと続く 子どもは 冬晴れを悲しんでいる 帰りたくなくて、 心地よさだけで足を運ぶ とぼとぼ下を向いて 窓に烏らが騒ぎ 冬の雨を呼んでいる 群れは夕暮れに大きく 今も鳴く

          詩 冬の天気

          猫と人との矛盾(エッセイ)

          わたしは猫を飼っている。その猫の毛並みを撫でていて思う。懐かしさ、郷愁、慈しみ、そして喪失感。 そして、わたしの最も奥底に疼くものを感じる。 抑えきれない欲求の源。暴発しそうな喚き。水底に届く月光のような寂しさ。抗えない衝動。それらが言葉ではとても抑えきれない。それでも何とか社会的に生活するために建前としてあろうとしている。 しかし、一方でまったくの晴天のような知性の静かな青もまた心地よい。動物だったころ、この静けさはなかっただろう。しかし、もしかして穏やかでどこまでも平和な

          猫と人との矛盾(エッセイ)

          詩 神様の命日

          神様の命日には 音のない美しい演奏を 供えてほしい 小さな鯉のぼり 青い紫陽花 ビーフジャーキー そんなものたちが 寄り添う曲がいい

          詩 神様の命日

          詩 未だ霜は日陰に白く

          未だ霜は日陰に白く 吐く息は昇らず消え 獣たちが 寒さに鳴く 冬の夕日が 眩く目を射る 背徳の美術史をなぞる ゆびさきは滑らかに堕ちて 突然の別れ そこに嘘など無く あるのは唯、嗚咽 言えない言葉を 口にしようとして どうしても言えなくて 涙が溢れて止まらない 言葉では 止められないものばかりで わたしたちは 反発しあっている わたしたちの内で 言葉を待たない 抗えない獣が 吠えるように血涙を流す きっと あなたとわたしは 人ではない 未だ、 そしてこの先もずっと 言葉

          詩 未だ霜は日陰に白く