スキルアップが解決方法ではない
ある日・・・
病院の待合室。午後診療が始まってすぐに待合室は人でいっぱいになった。ここはアレルギー対応で人気のこどもクリニック。様々な親子がそこにはいる。
普段は我が子の対応で必死だが、その日は結果報告のみ。私一人で待っているため、周りを見るいい機会となった。
歩き回る子。本に夢中な子。ゲームをしている子。おもちゃで遊ぶ子。こんなとき、こどもに目がいきがちだが、なぜだかその日は親の方によく意識が向いた。
親も様々だ。
こどもに読み聞かせをしている人。スマホをいじっているだけの人。スマホを見ながら、こどもの安全確認をしている人。
親子連れも多いので、受け付け側の壁近くで立っていると、受付の人との会話が聞こえる。
診察券がない人がいた。しかし初診ではなく、何度か来院しているみたい。
保険証がない人もいた。いったん全額お支払いいただくことになりますがどうしますか?という受付の方に「そんな金はない」と文句を言っていた。
会話のリズムが合わない人もいた。受付の方は怒る様子もなく、何度も説明をしている。
来院してきた瞬間から不機嫌な人もいた。「熱あるんですけど」とキレている。裏から入っていただけますか?と言われて、舌打ちしてでていった。
受け付けで話している親に話しかける子どももいた。ちなみに、その子どもの親は受付で話しているわけでもなく、スマホをいじっているわけでもなく、その子をベンチから眺めているだけだった。
そんな光景を待ち時間の1時間ほど見ていたら、ある考えがわき上がってきた。
「親のスキルアップが解決法ではないのかもしれない」
note
私は2020年7月からnoteを始めました。小学校教員の経験から学んだことを発信することで、親御さんの助けになることがあるのではと思ったのです。
というのも、学校現場でさまざまな家庭環境の子どもたちを見てきたからです。中にはなんとかしてあげたいという気持ちがわき上がる家庭環境の子どもも。また私自身も親として子育ての大変さに直面し、親御さんの助けになりたい。そんな気持ちが高まったからです。
その後、2021年度からは居場所づくり支援員として働き始めました。いわゆる不登校問題に真剣に向き合い始めたのもこの頃です。
必然的に不登校問題に関する記事も増えました。居場所とは何か。自立とは何か。親の在り方とは。本当に勉強になりました。
記事の内容が変わっても、noteを書く時の想いは変わりません。親御さんに情報提供することで親御さんがスキルアップし、子どもへの見方や関わり方が変わり、のびのびと日々を過ごせる子どもが増えて欲しい。
小学校期の子どものことで困っている人、悩んでいる人への情報提供。個別の相談も対応。連絡先のアドレスを公開しているのもそのためです。
しかし、無名の私に相談する人は一握り(というかお一方だけ)。記事を読んで考えてくださった方はいらっしゃるかもしれませんが、私には把握できません。それでも親御さんが教育に関しての知識や考えが深まれば少しでもよくなるはず、と信じて2年半続けてまいりました。
でもですね、先日の病院の様子を見ていて、当たり前のことにようやく気付いたのです。私のnoteを見つけて読む人は、もう既に教育に対し真剣な方なのだと。
もちろん教育について真剣に考えている方にでも少しは参考になる記事を書いている自信はあります(結構本気です)。
ただ私がnoteを書くきっかけとなるような家庭環境の子どもの親御さんは私の記事なんか見ない。一番救いたい子どもは救えない。一番見て欲しい親御さんに私の情報は届かない。
親御さんは教育に関して無関心なのではなく、自分自身の生活、心を保つのが精一杯で、子どもをどう育てるかにまで意識が及ばない、または意識してもどうにもできないのかもしれない。そう思うようになったのです。
親だけにしない
次男のことを考えてみるとイメージがたやすかったです。私の次男は発達障がいの診断を受けていますが、次男が親になったらそりゃ大変だろうなと。もちろん将来どんな風になるかは分かりませんが、私の元を離れて暮らすだけでも大変だろうに、パートナーとの関係を保ちながら、自身の仕事に向き合いながら、子どもの世話。その上で、子どもをどう育てるかを考える??いやー、そんなのとてもじゃないけど想像できません(まだ5歳なのですけどね笑)。
発達障がいでなくても、生き抜くのが大変な時代です。日々の生活で精一杯。余裕などない。そんな方達が必要とする情報は、時短系か、こうすれば楽に乗り切れるというライフハック系、またはストレス発散の娯楽系。子どもをどう育てるかの優先順位が低いのは当然です。
そんな親御さんに私は「もっとがんばれ」なんて言えません。だって絶対もう頑張っているから。
だったら、いかに親御さんのレベルを上げるかではなく、いかに親御さんの負担感を減らすかを考えるしかない。親御さんのレベルアップにより子育てに対応するのではなく、複数人で子育てに対応するのです。質もだけど、量の方が大事。
代表的な人は、学校の先生です。義務教育という名目もありますが、子どものことを親御さん以外でも真剣に考えています。
また、クラスの友達もいます。子どもが落ち込んでいるとき、「○○さん、大丈夫?」と心配してくれたり、愚痴を聞いてくれたりすることもあるでしょう。
ご近所付き合いが減り、核家族世帯が増えた今、この二つが大きな柱です。ところが、この二つの関わりが圧倒的に減る状態があります。そう、学校に行けなくなることです。
すると、親御さんの子育ての負担感が急に増え、子どもの成長の責任が急にのしかかります。そりゃ苦しいに決まってます。
今は不登校を例に出しましたが、学校に通っていればいいわけではありません。学校で友達と呼べる存在がいない。おとなしい性格で、先生から気にかけてもらえることが少ない。そんな状態では親の危機感が上がり、負担感も増えるでしょう。
では、どうしたらよいか。
自分の家庭以外のとも関わってみることではないでしょうか。
それこそご近所さん。同じ場所から同じ時間に学校に向かうのですから、顔を合わせることも多いでしょう。通学班とか分団とかで一緒に登校するところだってあると思います。見かけたら挨拶するくらいで良いと思います。そのうち子どもは慣れると結構話しかけてきたりします。慣れるまでは挨拶。
またはPTAに関わること。負担のことばかりが世間をにぎわせていますが、それこそ同じ子育て世代の親です。悩みは似ているものが多いはず。
町内会や子ども会も同じ系統です。
子どもが小さいうちは一緒に公園に行くことだってよいでしょう。安全確保という面もありますが、同じように親子連れの方もいます。顔を知るようになれば、声を掛ける機会もあるかもしれません。
しかしそれらは一日でできるものではありません。人と人との関係は少しずつできあがるものです。一日で意気投合!というパターンがあるかもしれませんが、そういった場合はちょっとした行き違いで絶縁となる可能性も高いです。
それこそ子育てに大きな問題があってから作ろうと思ってもなかなかできません。とりあえずなんとなく過ごせているうちから少しずつが大切なのではないかと思います。
まず挨拶だけ。小さくても会釈でもいい。周りの親子の存在を意識するところから始めてはどうでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。何かの参考になれば幸いです。素敵な一日をお過ごしください。
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