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暴力への共感:その二重構造

この現象には二種類の原因があります。

一つは、暴力犯はモテるということ。

もう一つは、暴力犯に共感するほどに社会的不満が高まっているということです。

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一つ目は、いわゆるストックホルム症候群と同じで、殺人、傷害、強姦といった暴力犯ほど、同情を集め、男性であれば女性にモテるようになるということです。

この前死刑執行された秋葉原連続無差別殺傷事件の被告、そして現在裁判中の京王線無差別傷害事件の被疑者などなど、殺人や傷害、強姦などの犯罪をして逮捕された者に尋常でない数のラブレターなどが全国から拘置所や刑務所に届くという現象が確認されます。

社会心理学的な理屈としてはストックホルム症候群と同じですが、人類学的に見れば、特に男性の暴力性は「優秀なオス」としての第一の素質であったという長い歴史があります。

暴力がいけないこととされたのは、人類700万年の歴史の中のここ100年ちょっとの話ですので、遺伝子的にどちらが強いかと言えば火を見るよりも明らかでしょう。

なので、例えばDV男やヤクザなんかが何回も結婚できるくらいモテまくって、反対にヲタクな草食系がモテないのも、「オスとして優秀に見えるかどうか」に関係していると言われています。

なので、こういった暴力犯に共感や恋愛感情を持つというのはそういう背景があったりします。

ちなみに、面白いことに詐欺などの知能犯にはこういう現象は見られないということからも、人間にとって暴力というのは非常に深く遺伝子に根差したものであるといえそうです。

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二つ目の方はより現代的であり、それだけ「ジョーカー予備軍」がたくさんいるということでしょう。

「ジョーカー」とは、アメコミ映画の「バットマン」に出てくるジャック・ニコルソンがはまり役だった悪役です。

ご存じの方も多いと思いますが、近年スピンオフされた、ジョーカーの生い立ちを描いてジョーカーを主人公、バットマンを悪役として描いた映画が、グローバリズムにどっぷり漬かったアメリカ社会の矛盾を描いて話題になりました。

つまり、グローバリズムや新自由主義に奴隷として搾取された人間の社会に対する憎悪や復讐心が蓄積しており、その彼らの復讐心を代弁してくれたこういった暴力犯に共感が集まるという構図です。

なので、記事の最後にある

「(山上容疑者を)革命のリーダーのように位置づけ追随する人が現れるかもしれず、危機感を持つべきだ」

なんてのはまったくもって無意味であり、そもそもそういう追随者や共感者を生み出す社会の構図そのものをこそ問題にしない限り、こういった現象は増えることはあっても減ることはありません。

そしてこういった社会はもともとは共産主義が革命のための「下ごしらえ」として求めていたという別の側面もあります。

そういう意味でも、共産主義と新自由主義は同じ根っこを持つご同類=共犯者であると言えます。

かつて日本は「最も成功した社会主義国家」と共産主義の親玉に皮肉られましたが、さらに皮肉なことに、もっとも共産主義革命の素地が整った国家の一つが現代日本であると言うこともできるでしょう。

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こういった社会にしないように資本主義の暴走を抑えていたのがケインズ主義的な経世済民政策だったのですが、ここまで社会が壊れた場合、ケインズ主義的経済政策をしても社会に対する不信感はそう簡単には拭えないと思います。

この先どうなるかは具体的には分かりませんが、少なくとも元の鞘に収まることはないと考えておいた方がいいでしょう。

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