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【詩】夜は味方

簡単な作業だからといったあいつは
もう帰った
一度フロアの電気が消える
23時になったことがわかる
終電を諦め
喫煙所に煙草を吸いに行く
深夜1時を過ぎると
煙草を吸いにいくのが
少し面倒になる
言い訳しながら
2本目の煙草に火をつける

新入社員の頃に読んだ本で
どんどん仕事したいと手を挙げたほうがいい
どんどん仕事ができるようになって
どんどん給料が上がって
私のように独立して
たくさんのお金を稼げます
と書いてあった

純粋だった私はその言いつけを守って
6年がたった
たくさんの仕事がある
少し疲れた
給料は毎年月給が1万円くらい上がる
どう考えても物価の上昇に追いついていない
雀の涙ほどの役職手当と合わせても
スキンケアのお金を賄えない

転職したらと言われるが
終電を諦める日々で
どうやって転職の時間を
やりくりをするのだろうか

ひとつだけ希望があるとするならば
26時の私は無敵だ
一番仕事が捗る時間
終電を諦め
煙草をたくさん肺に入れ
だんだんイライラして
全員のムカつく顔が浮かび
ふと冷静になる26時
全部自分で決めていける
もう無理だからこれはこれとできる
そんなときにポッと企画が出たりする
提案書がスルスルできあがる

この時間が永遠に続けばいいのにと思いながら
私は椅子で仮眠する
明日を乗り越えたら
少し寝よう
ちゃんと化粧を落として
お風呂にゆっくり入って
なんなら近くの銭湯で
サウナも入ろう

そうやって私はもうすぐ7年目を迎える
後悔はしていない
きっと人生が大きく変わるのは
10年目以降だと思っているから

ジュース奢ってください。