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「宝物BOX」の整理

最近、実家から「過去の思い出品」を持ち出してきて、整理を進めている。生まれてから30年、これまで「捨ててこなかった物」はずいぶんと増えてきた。これらを改めて取捨選択し、取り出しやすい形にしようと考えている。

高校の頃、シングルベッドの下にある引き出しを「宝物BOX」と名付けていた。未来の自分に影響を与えそうなものを「宝物」として選り分けて仕舞っておき、いつでも取り出せるようにしていた。今見ても心動かされるものが、「宝物BOX」には所狭しと詰まっている。

「宝物BOX」の中は、例えばこんな感じだ。

小学校バレーボールクラブ卒業文集・中学受験のお守り・茨木のり子さんの詩・友達とFAXで作った創作物・高校の近代史の授業のノート


思い悩んだとき、あるいは自分を見失いそうになったとき、この「宝物BOX」の引き出しを開けると「自分とは何か」が手に取ってわかるような気がした。

「過去の自分」が「未来の自分」のために取っておいた記憶や言葉たちは、内側から呼びかけるようにして、「今の自分」を励ましてくれた。節目節目にそうやって、自分の感受性を確かめていたのかもしれない。

ある時期までこの「宝物BOX」はその役割を果たしてくれていたと思う。しかし、大学に入ってからは、圧倒的な情報が流れ込んでくるようになった。経験することに忙しくなって、過去を振り返る時間が取れなくなった。

一つ一つのことに対して丁寧な意味付けをする前に、次のことがやってくる。そのうちに取っておきたいものたちが「宝物BOX」の中に収まらなくなってきた。

大学を卒業し、仕事が始まり、遠距離交際を経て、結婚した。出かける場所が増えたし、実家も離れた。振り返ることがないまま保留にされた「宝物BOX」とそこから溢れたものたちは、実家に置きっぱなしだった。

「宝物BOX」が自分にとって小さくなってしまったことは、自分が自分の枠を超えるようになった、ということなのかもしれない。そのときは、過去を振り返ることよりも、未来に向けて進んでいくことが重要だった。これまでの小さな枠を超えて、大きな世界へと踏み出していた時期だった。

今、やっと生活が落ち着いて、これまでの歩みを振り返る余裕ができている。改めて、今の自分に合うサイズの新しい「宝物BOX」を作っていきたい。

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