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2018 FIFAワールドカップロシア グループH 日本代表対ポーランド代表 レビュー

2018 FIFAワールドカップ グループH 日本代表対ポーランド代表は、0-1でポーランド代表が勝ちました。日本代表は試合には敗れましたが、フェアプレーポイントの差でセネガルを上回り、決勝トーナメント進出を決めました。

勝敗を分けた岡崎の負傷交代

この試合の日本代表は、スターティングメンバーを6人入れ替え、4-4-2のチームオーガニゼーション(システム)で戦いました。

ポーランドはプレビューにも書きましたが、攻撃では中央からの攻撃が出来ない、守備ではDFのアクションが遅いため背後が狙いやすいという問題をかかえているチームです。

ポーランドの攻撃を抑えるために、日本代表は岡崎に10番のクリホヴィアクをマークさせ、中央からのパスを防ぎます。また、攻撃では武藤を狙ったロングパスを活用し、相手DFの背後を狙うことで、何度もシュートチャンスを作り出しました。

誤算だったのは、岡崎の負傷交代です。どこかのタイミングで大迫と岡崎を交代させる予定だったと思いますが、大迫に対して岡崎に与えられていた守備のタスクをきちんと引き継ぎ出来ていなかったのだと思います。

岡崎が交代後に10番のクリホヴィアクがフリーでボールを持てる機会が増え、セットプレーで岡崎が守っていたエリアを大迫が守れず、失点をしてしまいました。

ただ、0-1で敗れたとはいえ、セネガル戦から6人を入れ替え、香川、原口、昌子は完全休養、乾、大迫、長谷部は途中出場で、途中から試合を終わらせることに注力したので、大きな負荷はかけていません。

選手を休ませながら、決勝トーナメントに進出するという難題を、日本代表は見事にクリアしてみせました。これは、2010年の南アフリカワールドカップでは出来なかったことです。

賛否両論はあって当然

後半35分以降の戦い方については賛否両論あって当然だと思います。

僕自身は、あの戦い方に対して「良い」「悪い」と語るだけの基準をもってません。ただ、「コロンビア対セネガルの結果に委ねる」という決断をした西野監督の決断力は、すごいとしか言いようがありません。

ポーランド戦のスターティングメンバーを6人入れ替え、酒井高徳を右MFで起用するという采配は、簡単に出来る決断ではありません。3戦連続同じスターティングメンバーを起用して、多くの人が納得する戦い方をするのが、一番決断が楽だからです。

と書いていたら、同じような事を古賀史健さんも書いてました。

ただ、決断が楽だからといって、その後の試合に楽が出来るとは限りません。日本は他のチームに比べて体格が小さく、ボクシングで例えるなら階級の違う相手と戦っているようなものです。

日本代表は、コロンビア戦、セネガル戦と、体格の大きな選手に対して勇敢に戦い続けていますが、一方で、表に出ていない疲労や怪我が蓄積されているのだと思います。

西野監督は、表に出ていないコンディションの問題などを全て飲み込み、チームの状況を踏まえて、「0-1で進める」という決断を下したのだと思います。正直、1点を追いかける方が簡単な決断だったと思います。上手くいかなかったときの批判を考えたら、簡単に出来る決断ではありません。

そして、僕はこう感じました。

最新の戦術を考えたりするのも監督の役割かもしれませんが、勝負がかかったギリギリのところで、五分五分の状況で、エイヤと決断するのが監督なのだと。

西野監督が決断した後の試合を観ながら、僕は日本シリーズで8回まで完全試合で抑えていた山井を交代させた、落合監督の決断を思い出しました。

今の日本代表の強みは監督なのかもしれない

長い間サッカーファンは、日本代表の監督に対して、戦術もきちんと組み立てられていて、相手に応じて戦い方が変えられる監督もそうですが、相手チームに「何をしてくるか分からない」と思わせる監督を求めていたはずです。2002年日韓ワールドカップで韓国がベスト4に進出した時、監督のヒディング監督の采配を羨ましく思ったりもしました。

それが、まさか、大会1ヶ月前に就任した監督が「何をしてくるか分からない」監督になるとは思っていませんでした。

僕が対戦相手の監督なら、ポーランド戦の西野監督の決断を知ったら、こう思うような気がします。

日本の監督は、何を考えているか分からない。

この試合を観終わって感じたのは、今の日本代表の強みは、忠実に与えられたタスクを実行する選手・スタッフはもちろんですが、最大の強みは、もしかしたら監督なのかもしれません。

そんな事を就任当初は考えもしませんでしたが、ハリルホジッチより西野監督の方が不気味です。日本代表の監督が相手チームに恐れられる(可能性がある)ということが、これまでにあったでしょうか。

僕は次のベルギー戦までに、ワールドカップが始まってからのベルギー代表の試合を見返しつつ、西野監督が次に何をするのか。怖さ半分、楽しみ半分で待ちたいと思います。

photo by Kentaro Miura

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