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シント=トロイデンで考えた「オーナー」と「スポーツビジネス」のこと

2月9日から17日(帰国は18日)まで、ヨーロッパのサッカークラブを2クラブ訪問させて頂く旅に出ています。2月9日に日本を出発し、1つ目の訪問先であるスペインのビジャレアルに無事に到着。今日はビジャレアルの3日目とベルギーのシント=トロイデン訪問時のレポートを公開します。

相手を見て戦えなかったビジャレアル

同行者の木下さんをバレンシア空港まで送り届けた後、ホテルで一休みしてから、鹿島学園高等学校サッカー部のトレーニングを見学するため、アカデミー用のトレーニング施設に移動。

この日はビジャレアルのメンタルトレーナーによるトレーニング。前日試合があり、本日も試合があるとのことなので1時間足らずの軽いトレーニングでしたが、トレーニングへの集中力を保たせつつ、意思疎通を図らないと上手くできないトレーニングになっていました。

この日の2日前に、長尾彰さんとビジャレアルのアカデミーのトレーニングを見学しながら「チームビルディングの要素をサッカーのトレーニングにどう応用するか」みたいな話をしたこともあり、長尾さんが見学していたら、どんな感想をもつのだろうかとも思いました。

鹿島学園高等学校サッカー部のトレーニングを見学した後、少し疲れが出たのでホテルでひと休み。ひと休みした後、午後から行われた鹿島学園高等学校サッカー部とビジャレアルU18のトレーニング1本目を見学。

試合は0-0でしたが、鹿島学園高等学校サッカー部が試合をコントロールしていると感じた一方で、ビジャレアルU18はチームで決められた事にしばられ、相手を見て対応する工夫に乏しいと感じました。ボールを扱う技術はビジャレアルの方が上でしたが、相手を崩すための工夫を選手たちが実行しないので、ボールを相手陣内に運べません。決まりごとに支配されて、相手に対応できないという事象をスペインのチームのプレーで見たのは、少し意外でした。

2本目とカシマフットボールアカデミーの選手のトレーニングを見学したかったのですが、体調が優れずホテルに戻ることに。軽く悪寒がしたので、オレンジジュースと水をホテルの前にあるカルフールで買い込んで静養。お風呂に入りたくなったのでバスタブに水をはったら、水が漏れて水浸しに。必死に床を拭いていたら、さらにグッタリ。風邪気味のまま、ベルギーに出発することになりました。

信頼貯金の取り崩し

ベルギーのシント=トロイデンに行くため、ホテルを出発。高速に乗ってバレンシア空港に。

ちなみにスペインの高速について補足しておくと、現在スペインの高速は無料で利用することができます。その理由は高速道路を管理している会社が「もうやってられん」と管理を放棄したのだが、他に引き受ける会社が見つかっていないのだそうだ、ではどうなっているかというと、管理する会社がないので、高速は無料で利用できるという、なんともスペインらしいエピソードです。そして僕は、その恩恵を最大限活かして、高速道路を何度も往復しています。

バレンシア空港に無事に到着し、駐車場の入り口が分からずに1周したものの、どうにか駐車。バレンシア空港からは、Ryanairを使ってベルギーのブリュッセル空港まで2時間半程度のフライト。LCCは初体験でしたが、特に違和感なく利用できました。ブリュッセル空港に到着した後は、電車を乗り継いでシント=トロイデンへ。空港からシント=トロイデンには約1時間の道のり。電車も空いていてとても快適な移動の合間、おもわずこんなことをツイート。

今回の2クラブの訪問は、ビジャレアルの佐伯さん、シント=トロイデンの飯塚さんのご厚意で実現しています。別にお金をお支払いしているわけでもないし、お金をもらっているわけでもありません。僕がnoteに書いてきたことを面白がってくれた結果、運良く実現しているに過ぎません。スポーツ関係者でもないのになぁと、自分でも自分がやっていることに笑ってしまいます。

ただ、僕としては、僕の真似をして、何の実績もないのに、何もアウトプットしていないのに、クラブを見学したいと伝えるのは止めた方がよいと思います。自分の考えを継続して発信できるツールがあるのだから、ある程度相手との関係を築いてから行動に移してほしいと思います。

noteを書き続けたきたことで海外のクラブの施設を見学させてもらえるようになったけど、日本語でnoteを書き続けた結果できることは、ある程度達成されたのではないかと思うのです。ここから先に進みたければ、別のアプローチを考えないといけない。移動中にそんなことを考えました。

Stayenというスタジアムを作らせたオーナー

シント=トロイデン駅で、シント=トロイデン(STVV)CTOの飯塚さんと待ち合わせ。飯塚さんの車で、STVVのホームスタジアム「Stayen」に。Stayenには、ホテル、ジム・スパ、スーパーマーケット、ホームセンター、カフェ&レストラン、オフィスなどが内包されており、スタジアムに内包されている施設だけで生活が成り立つほど。なお、Stayenの横にはマンションも併設されています。

Stayenは以前のサッカー場を段階的に建て替えて、今の形へと変化している。様々な施設を内包しているが故に導線は複雑で、例を挙げると、僕が宿泊した部屋は4Fにあるのだけど、4Fの宿泊エリアに行くには、レセプションからだと3Fから移動しなければなりません。3FにはSTVVのオフィスがあり、STVVのオフィスの前を通って、ホテルの部屋に移動することになるのだ。これ以外にも、スタジアムの導線の一つドアを空けると、ジムやオフィスのエリアに行けたりするなど、スタジアムと他の施設が絶妙のバランスで成り立っています。

飯塚さんには、スカイボックスと言われるラウンジ、ロッカールーム、選手の入場ゲート、グラウンド、メインスタンド、オフィス棟、ジムなど、スタジアムの施設をくまなく見せて頂きました。特に印象に残ったのは、スタジアム内にイベント用に使える空きスペースを残しています。

この空きスペースはSAJ2020だと350名入れたInnovation Hallと同じくらいの大きさがあり、ちょっとしたビジネスカンファレンスなら余裕で開催できるくらいのスペースがある日本だと小さく区切って会議室をたくさん作るような場所を、大きく区切って様々な用途で使えるようにするという発想が斬新だし、日本との考え方の違いを痛感しました。

飯塚さんに「オフィスとして入居する企業は、どんなメリットを感じて入級しているのか?」と聞いたところ、車通勤ができること、スーパーやホームセンターなど生活に関連する買い物がしやすい場所が近いこと、といった生活面でのメリットもあるのではないかと。そして、何より、スタジアムという空間が横にあることが、気晴らしになっているのではないかとのこと。

僕は「スタジアムのスペースをオフィスとして利用しようというのはわかるが、何のメリットがあるのだろうか」と疑問だったのですが、飯塚さんの説明を聞いて納得できました。

ただ課題もあるそうで、このスタジアムは「Stayen」という会社の持ち物で、STVVは借りているだけの立場で、指定管理者のような立場でもないそうです。自分の持ち物ではないから、何か施策を実施しようとしても、必ずStayen社の承認が必要というわけです。せっかくよい施設を持っているのに、企画から実行までのプロセスに時間がかかるのは勿体ないと思いました。

こんなスタジアムを誰が考えて作ったのか。飯塚さんによると、このスタジアムのコンセプトを考えたのは、STVVのオーナーだそうです。オーナーは不動産経営で成功をおさめた方だそうで、オーナーが考えたコンセプトに従って、作ったスタジアムなのだそうです。

ビジャレアルもオーナーのロイグ会長の意向が、クラブの全体像に大きく反映されています。シント=トロイデンの斬新なスタジアムも、オーナーの意志によるもの。ヨーロッパのクラブでいかにオーナーの存在が重要なのか、よく分かります。

オーナーが提示するのは「コンセプト」です。このコンセプトが重要なのですが、コンセプトを提示できるオーナーが、日本のサッカークラブにはあまりいません。ヴィッセル神戸の三木谷さんとFC今治の岡田さんくらいではないかと思います。

サッカーとカフェとコミュニティ

スタジアム見学を終えた後、バルセロナからヨハン・クライフ大学に在学している渡邉さんと合流。

渡邉さんと合流した後、STVVのトレーニンググラウンドに。トップチームやアカデミーが利用しているそうです。

ビジャレアルの施設の充実っぷりには劣りますが、天然芝だけでなく、人工芝のグラウンドもあり、Jリーグと比べても立派な環境だと思います。印象に残ったのは、クラブハウスにカフェが併設されていること。ベルギーでは必ずサッカーグラウンドの横にカフェを併設するという決まりがあるそうです。地域のコミュニティの中心となるような場として活用していくことを狙ったものだと思います。

そして、少し離れた場所にある、STVVが別法人で運営しているアマチュアクラブの練習グラウンドへ。

グラウンドや施設は見劣りしますが、それでも芝生のグラウンドが用意されており、日本に比べると立派な環境です。そして、アマチュアチームのクラブハウスにもカフェが。どれだけコミュニティが重視されているのかよく分かります。

ビジャレアルは簡単に真似できない

一通り施設見学を終えた後、STVV COOの村田さん、スカウトの長島さんも合流してお食事に。長島さんは実は元同僚の同級生でして、メッセンジャーで連絡を取り合ったことがありました。以前はオランダで育成年代のコーチをしていたのですが、最近スカウトになったとのこと。何が出会いのきっかけになるか分かりません。

5人ではステーキを食べながら、長島さんが帰った後は場所を変えてジュースを飲みながら、いろいろなことを話しました。フットボールクラブのファイナンス、モウリーニョのマネジメント、戦術の話、オリンピックスポーツ(陸上、フェンシングなど)のマネタイズ、アニメコンテンツの話、音楽のランキングの話、noteの有料コンテンツ、などなど、様々なテーマで話をしました。

5人の意見は異なる部分もありますが、共通部分も多く、議論していてとても楽しかったです。よい刺激をもらいましたし、引き続きいろいろ話を聞きたい。そんなことを考えました。

そして、飯塚さんとは一致したのは「ビジャレアルすごい」ということです。ビジャレアルというクラブに行くと、どうやったらこんなクラブができるのかと考えても、一筋縄ではいかないということがよく分かります。ビジャレアルがオープンに全てを共有するのは、情報を共有したほうがよりよい学びを得られるという信念もありますが、何より「簡単に真似できない」という自信があるのだと思います。

飯塚さんがビジャレアルに衝撃を受けて書いたnoteがこちら。読んでない人はぜひ。

学び多きシント=トロイデンの短期滞在を経て、ビジャレアルに戻ってきました。いよいよ明日はビジャレアル対レバンテ戦。楽しみです。

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にほんの建築家―伊東豊雄・観察記(瀧口範子)
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スポーツコミュニケーター| JSAA & HiVE実行委員 | noteでスポーツコラム連載 | noteサークル会員限定トークイベント運営 | note公式「スポーツ記事まとめ」管理人 | スポーツを軸にした、個人、組織、コミュニティの支援が得意 |

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