谷口彰悟が歩んできたタフな4年間と今後に期待すること

川崎フロンターレのDFとして欠かせない存在である谷口彰悟。谷口ほど、人から見ていて完璧だと思える選手はいないかもしれません。

足も速く、ボール扱いも上手く、DF、MFの複数のポジションをそつなくこなし、サポーターへの対応もよく、そしてイケメンで、付き合っている女性は(以下、自粛)と、全ての面でそつなくこなす優等生タイプだと思われていますし、谷口に悩みなどないのではないか。そう思う人もいるかもしれません。

ただ、川崎フロンターレのサポーターでも忘れかけていると思いますが、真面目で優等生タイプ(に見える)谷口が、髪の色を変えた事があります。しかも、2回。

1回目は、2014年第22節の名古屋グランパスとのアウェーゲームの前に、急に金髪に近い色に変更しました。前節の横浜F・マリノス戦の前に色を変えたのですが、前節は発熱のため欠場。名古屋グランパス戦の後は色を戻しました。

2回目は、2016年第1節のサンフレッチェ広島戦の直前に、白に近い金髪にしたときです。目がくらむほど白い金髪にした時、誰もが目を疑いました。優等生タイプの遅れてきた反抗期なのかと思った人もいるかもしれません。

谷口が髪の色を変えた時、浦和レッズの試合をよく観に行っている会社の同僚が言った一言をよく覚えています。彼はこう言いました。

谷口は現状を打開したいのかもね

谷口ほど試練を与えられてきた選手もいない

谷口は、2014年に川崎フロンターレに入団してから、「ポジションを与えられた選手」だと感じている人もいるかもしれません。しかし、これまでの歩みを振り返ると、谷口ほどポジションを与えられるまでは慎重に扱われたものの、ポジションを与えられてから試練を与えられ続けてきた選手もいません。

谷口のプロデビュー戦は、左DFでした。チームの事情もあったとはいえ、いきなりチームの中心を務める中央のポジションではなく、責任の少ないサイドで起用し、まずは試合やチームに慣れてもらい、慣れてきてから中央のDFとして起用する。谷口の能力を当時の風間監督が評価しているからこそ、慎重に起用していることが読み取れました。

一方、中央のDFとして起用されてからは、どんなに失敗しても、ミスをしても、我慢強く起用され続けました。当時の川崎フロンターレは失点の少ないチームではありませんでしたので、失点の責任に対する批判の多くは、谷口に向けられる事がありました。

谷口の責任だけではなかったのですが、批判を受け止めるだけでも大変なのに、ミスしても、チームが負けても、起用され続けることほど、苦しいことはありません。ミスしてチャンスを逃すのも辛い反面、心の負担は軽くなります。一方、ミスしても、チームが負けても、起用され続けることほど、苦しいことはありません。

現状を打開したいという思いが現れた髪型

谷口が2014年に髪の色を変えたのは、ミスしても、チームが負けても、起用され続けていた頃のことでした。

そして、2016年にチームは奈良とエドゥワルドという守備の上手いDFを獲得します。「守備を強化する」というメッセージは、2015年までとは違い、「ポジションは与えられていないよ」という、谷口に対する強烈なメッセージでもありました。谷口の守備に満足しているわけではないぞ。チームは選手獲得を通じて、伝えたかったのだと思います。

川崎フロンターレというチームは、選手を獲得するにあたって、ある傾向が見られます。それは「チームの中心選手がいるポジションほど選手を獲得する」という傾向です。杉本、船山、森本といったFWや、原川のようなMFは、中村や大久保や小林が活躍する度に、獲得された選手たちです。中心選手ほど高いレベルで競争してもらう。それが、一貫している川崎フロンターレの選手獲得方針なのではないかと思います。そう考えると、家長や阿部や長谷川が活躍したサイドのMFに、齋藤を獲得したのは納得がいきます。一番危機感を感じているのは、長谷川ではないかと思います。こうして、チームのレベルを上げてきました。

谷口は競争に勝つために、現状を打開するために、何かを変えたかったのではないのでしょうか。当時谷口は、明らかに身体全体が大きくなったように見えました。奈良やエドゥワルドの強みである身体の強さが自分自身に不足していると考え、身体を大きくし、力強いプレーが出来るようにしたいと考えたのかもしれません。髪の色の変化と、身体の変化は、谷口の「変わりたい」という意志が感じられました。

変わろうとするあまり自らの強みを失いかけた2016年

ただ、谷口の強みは、スムーズに身体を動かし、ファウルせずにボールを奪うプレーで、奈良やエドゥワルドの強みとは異なります。谷口は自分にしか出来ない守備を追求すべきで、無理に変わる必要はないのではないか。僕は当時そう思っていました。

金髪は不評だったので1試合で戻しましたが、谷口のパフォーマンスは上がりません。2015年はリーグ戦全試合フルタイム出場だった選手が、2016年第4節のヴァンフォーレ甲府戦では、ついに途中交代を命じられました。スターティングメンバーを外される試合もありました。

もし、2016年シーズン途中で奈良が怪我をしなければ、谷口がスターティングメンバーに戻ることはなく、ズルズルとパフォーマンスが下がり続け、出場試合数を減らしたかもしれません。奈良が怪我をしたため、チームは谷口に頼らざるを得なくなってしまいました。「ミスしても、チームが負けても、起用され続ける」ことに苦しんでいた選手は、起用され続けるありがたみを知ったのではないのでしょうか。怪我が少なく、バランスのよい身体の使い方が出来るという強みが、谷口を救ってくれたのではないかと思います。

そして、2017年。谷口は1年を通じて、チームの中心として、素晴らしいプレーを披露しました。DFとしてはリーグ最多の7得点は、守備だけでなく、得点も奪え、ヘディングや競り合いにも強い選手であることを強烈に印象づけました。そして、日本人のDFとしては抜群に上手いパスと運ぶドリブルは、川崎フロンターレの攻撃の起点になっています。川崎フロンターレのサポーターは、「谷口がいるのは当たり前」「谷口ならやってくれる」と思っているかもしれませんが、谷口が怪我で出られなかったりしたときに初めて、谷口がいるありがたみを感じるのではないのでしょうか。

ブンデスリーガやリーガ・エスパニョーラでプレーする谷口が観たい

僕は、谷口がそろそろ海外でプレーするということを視野に入れていても、おかしくないと思います。アスリートが高いレベルでのプレーを求めるのは、本能です。僕は、ブンデスリーガやリーガ・エスパニョーラなどでプレーする谷口を観てみたいのです。

これまで、谷口が痛い目にあいながら、少しずつレベルアップしてきた姿を見ていると、もっと強い相手とぶつかったら、もっと凄いプレーが見られるのではないか。そう思うのです。最近の谷口のプレーを観ていると、Jリーグでは物足りなくなっているのではないかとすら思うときがあります。

2018年は川崎フロンターレでプレーすることが決まりましたが、今後の谷口はどんな選手になっていくのか。何を目指すのか。僕は引き続き注目していきたいと思います。

photo by William

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