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書評「本音で向き合う。自分を疑って進む」(佐伯夕利子)

佐伯さんの著書としては「教えないスキル」という本が有名ですが、「教えないスキル」の前に出版された書籍があります。それは「情熱とサッカーボールを抱きしめて」。

「情熱とサッカーボールを抱きしめて」は佐伯さんがスペインで指導者になるまでについて綴られていた書籍で、僕はこの本を読んで「この人にお愛してみたい」と思って、佐伯さんに連絡を取り、お話する機会に恵まれ、2020年2月にはスペイン・ビジャレアルに訪問する機会に恵まれました。

「情熱とサッカーボールを抱きしめての続編が読みたい」は佐伯さんが男子チームの監督を解任されたところで終わるのですが、本書「本音で向き合う。自分を疑って進む」は(それだけではありませんが)続編と言ってもいい本だと思います。佐伯さんがどんな指導者人生を歩んできたのか、指導者人生を歩んでいくなかでどんな学びを得たのか、なぜJリーグの理事に就任したのか、といったことが綴られている書籍です。

最も印象に残ったのは、2014年にビジャレアルのメソッド・ダイレクターに着任し、ビジャレアルの指導改革を推進したセルヒオ・ナバーロ(2024年現在アスレティック・ビルバオのアカデミーダイレクター)との対話です。

セルヒオ・ナバーロとはビジャレアルを訪問したときに直接お話をさせて頂く機会がありました。(なお本書にも登場するBarca Innovation Hub主催のオンラインイベントにセルヒオ・ナバーロが登壇したときのレポートはこちらに)

ビジャレアルというクラブは「教えないスキル」にも綴られているが、サッカー選手としての成長だけでなく、人間としての成長をサポートしていくことをとても重視している。人間は一人ひとり個性も違うし、成長スピードも異なります。違いを認識したうえで、どう接し、どう環境を整え、育んでいくのか。そんな考え方を対話をしながら、じっくり進めていく。変化のスピードが激しく、競争の激しいヨーロッパサッカーでこうした取り組みをし続けるのは簡単ではありませんが、こうした改革を推進したのがセルヒオ・ナバーロなのです。

セルヒオ・ナバーロは1979年生まれ。僕とは1歳違いで、価値観が似ていると感じます。僕らは生まれた場所は違うけど、インターネットの「フラット」で「リンク」し「シェア」し合う価値観の洗礼を浴びた世代。そんな世代の考え方がサッカーに、ビジャレアルに持ち込まれ、多くの人に受け入れられている。それがビジャレアルを訪問して得られた気づきでした。

そして佐伯さんは自分が学んできたことを惜しげもなく、フラットに、リンクしながら、シェアしてくれます。そうすることが周りにとっても、自分にとっても豊かになることをよく知っているし、そんな佐伯さんがJリーグの理事として仕事をしてくれたことがいかに貴重だったか、そしてコロナによって活躍の範囲が限られてしまったことが悔やまれます。

本書を読み終えて、改めて佐伯さんのヒューマンスキルの高さを実感しましたし、佐伯さんが次にどんなチャレンジをして、どんな学びを得ようとしているのか、とても気になりました。たぶん佐伯さんの頭の中にはいろいろやりたいことがあるはずで、そしてそのチャレンジを経験したことで、佐伯さんはまた色々学びを得るだろうし、僕たちにも得た学びを還元してくれるはず。

僕も佐伯さんから学んだことをいかしつつ、新しい環境でチャレンジと悪戦苦闘から日々多くの学びを得ています。歩き続けていたらまたいつかお会いできるだろうし、いろいろお話することもできるはず。いつかお話するときにお互いのお宝自慢ができたらいいな、という気分になりました。また雪の宿食べながらお話したいし、海を見ながらボーッとしたいです。


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