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他人に矢印を向ける人と自分に矢印を向ける人。

日本時間2020年4月2日23時に、Barca Innovation Hub主催で「DECODING the GAME」というタイトルで、ゲーム分析について、リーガ・エスパニョーラのアナリストたちが議論するというセッションがオンラインで公開されていました。

今のところ、YouTubeに公開されていますが、埋め込みNGになっていることを考えると、しばらくすると削除される可能性がありますので、気になる人はすぐ観ることをおすすめします。


リーガ・エスパニョーラのスタッフ5人が集まった豪華セッション

全編スペイン語のセッションですが、頑張って全編聞いたのには理由があります。ビジャレアルで対面した、レバンテUDのセルジオ・ナバーロがセッションに参加していたからです。

セルジオ・ナバーロは、ビジャレアルのメソッドダイレクターに就任したあと、現在のビジャレアルのメソッドを形作った人物です。彼がどんな話をするのか。スペイン語は分からなくても、何かヒントは得られるだろう。そう思って、セッションを聴いてみることにしました。

他に登壇していたのは、Barca Innovation HubのXavi Pavo、セビージャCFでトップチームのアナリストをしているRamon Vazquez、アトレティコ・マドリーのHead of opposition Analysisを務めるFrancis Sanchez、FCバルセロナのスカウト担当Álex García、Real Valladolidのアナリスト(Techinicoとスペインでは表記されます)Daniel Del Valle、そしてセルジオ・ナバーロです。

僕のスペイン語力だと文法はほとんど分からないので、YouTubeの字幕機能をオンにして、分かっている単語の意味をどうにか英語に翻訳した後に日本語で理解する、という方法でセッションを聴きました。

1時間という時間で、6人もの登壇者が登壇し、スペイン人なので皆話が長いので、詳しい手法に関する話はなく、概念的な話に終始しました。ただ、概念的は話が多くても、それぞれのアナリストの違いを感じることはできました。

特に他の5人と、セルジオ・ナバーロの言葉が全然違いました。

セルジオ・ナバーロと他のアナリストとの違い

セルジオ・ナバーロと他のアナリストとの違い、それは「他人」に矢印が向いているか、「自分」に矢印が向いているかの違いではないかと思いました。

他の登壇者はアナリストで、セルジオ・ナバーロはアシスタントコーチなので、立場の違いもあるとは思いますが、アナリストたちは「対戦相手を」「いつ」「どう」分析して「どのように」情報を共有するかばかり話していると感じたのですが、セルジオ・ナバーロは「一切ライバルや戦術に関する分析はしない」と話した上で、こう答えていました(と解釈)。

他のチームではなく、自分たちのチームの選手たちが、成長させるために必要な分析をしている、と。

正直言うと、他のチームのアナリストの発言からは、あまり学ぶべき点はありませんでした。

Alex Garciaが「ブンデスリーガが最も分析で優れているリーグだ」と話したことでしょうか。でも、そんな事情も、2018年に当時ザンクト・パウリのアナリストを務め、2019-20シーズンからマンチェスター・ユナイテッドのアナリストに就任した、Andrew Meredithの講演の方がよほどインパクトがありました。

セルジオ・ナバーロに似ている指導者

セルジオ・ナバーロは一貫しています。相手の事はコントロールできないので、コントロールできる自分たちの分析に目を向けます。自分たちが何ができて、何ができなかったのか。特にチェックしているのは「ミス」です。

技術のミスなのか、トライしなかったことによるミスなのか、頭のミスなのか。徹底的に自分自身に矢印を向け、ミスの中身を噛み砕き、丁寧に1人1人に対して落としこむ。こんな面倒なことをやっている人は、リーガ・エスパニョーラでも彼とパコ・ロペスが率いるレバンテUDだけなのだと思います。

セルジオ・ナバーロを紹介するとき、Barca Innovation HubのXavi Pavoは「Innovator」と表現しましたが、その理由も分からないではありません。彼らのサッカーの常識からすると、セルジオ・ナバーロのアプローチは「非常識」に映っているからです。

「Innovator」という言葉、自分たちに矢印を向ける、という言葉で思い出した人もいると思いますが、セルジオ・ナバーロのアプローチは風間さんにとても似ています。

技術に関する定義は、もしかしたら風間さんの方が緻密かもしれませんが、自分自身に矢印を向け、選手からフィードバックを引き出し、選手を成長させるアプローチは、セルジオ・ナバーロの方が優れているのではないか。僕はそう感じています。セルジオ・ナバーロの考え方や、ビジャレアルのメソッドを理解するのに、風間さんのサッカーを5年間追いかけ続けた経験が、とても役に立っています。

自分自身に矢印を向けるには、どうしたらよいか。これは先週Two Lapsの横田真人さんともお話したことなのですが、簡単ではありません。

サッカーが再開できる世の中にいつ戻るのかは分かりませんが、再開したら、僕はセルジオ・ナバーロの動向をしばらく追いかけることになると思います。

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スポーツのコラムにプラスして、日記を書くことにしました。日記には、お会いしている人の話、プロジェクトの話、普段の生活など、表に書けない話を書こうと思います。

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