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書評「一緒に冒険をする」(西村 佳哲)

僕が人に「おすすめの本を教えてください」と聞かれた時、よく「自分の仕事をつくる」という本をおすすめしています。

(こう書いて、「おすすめの本を教えてください」と聞いてきた、フットサル日本代表の星翔太さんにこの本をおすすめしていない事を思い出した。星さん、すいません。)

2003年に発売された「自分の仕事をつくる」は、仕事とはなにか。「いい仕事」はどこから生まれるのか。仕事を「自分の仕事」にするためにはなにが必要か。様々な人に訪ね回ったインタビューが収められているのですが、この本に収められている内容に、20代前半の僕は衝撃を受けました。

「自分の仕事をつくる」には、「今の時代をどう生きるのか」「今の時代はどんな仕事をするべきか」「副業は是か非か」というような事は、全く書いていません。もっと、根本的に、深く、「仕事」ということについて考えさせてくれる本なのです。

著者の西村さんは、「自分の仕事をつくる」を発表した後も、働き方に関する本を書いてきました。西村さんの最新の著書が「一緒に冒険をする」。2015年1月、奈良の図書館に全国から約300人が集まったフォーラム「ひとの居場所をつくるひと」のインタビューが収められている1冊です。

そして、本書は、「仕事」「働き方」について、西村さんが考え続け、現時点での考えが記されている書籍でもあります。

誰とも似ていない、誰もやっていない

本書に登場する人たちは、「Webデザイナー」や「マーケティング担当」のように、何かの職種でくくれる人たちではありません。カフェのオーナーから突然岡山市議会議員になった人、長野の山奥に養生園をつくった人、教育について考え続ける教育者など、誰とも似ていない、誰もやっていない、自分の仕事を、試行錯誤を続けながら、作り続けている人たちです。

本書に登場する人たちは、決して、生まれながらにして、特別な人ではありません。確かに、実行力や発想力は違うかもしれません。しかし、自分のやりたい事を信じて、粘り強く、地道に、取り組み続けた結果、現在の仕事にたどり着いているのだということを、本書は教えてくれます。

「一緒に冒険」したくなる仕事とは、どんな仕事なのか。

本書を読み終えて、「仕事」の事を「冒険」と表現したのは、上手いなぁと思いました。仕事をしていると、スリルとサスペンスと、何気ない日々と、たまに訪れる幸せといったサイクルを、交互に味わいながら過ごしています。

自分の仕事を続けている人は、このサイクルが短かったり、人より長いのかもしれませんが、誰でも「自分なりの冒険」をしている事には、変わりないのかもしれません。

本書を読んでいると、著者の考えの変化に気づかされます。

2003年の時点では、「自分の仕事」に焦点をあてていた著者が、2018年時点では、「自分の仕事」があることを前提に、その仕事が「一緒に冒険」するに足りるものか、「一緒に冒険」するような仕事をしている人はどんな人か、そして、「一緒に冒険」したくなるような仕事をしている人の仕事とは、どんな仕事なのか。自分に焦点を当てていた人が、他人との関わりについても書いていると考えると、著者の考えの変化も感じられる書籍です。

働き方については、「残業しない」「副業する」といった、手法の話になりがちですが、そんな事ではないはずです。

「自分の仕事」とは何か。そして、「一緒に冒険」したくなる仕事とは、どんな仕事なのか。改めていろいろと考えさせられた1冊です。


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