見出し画像

書評「あたらしい しょうがっこうの つくりかた」(中川綾)

2019年の2月頃だったろうか。組織開発ファシリテーターの長尾彰さんと話をしていたとき、突然長尾さんが「小学校をつくった」と話し始めたことがあった。

そもそも小学校ってどうやってつくるのか。長尾さんの話に耳を傾けていると、どうも長尾さんと仲間たちがつくった小学校が、他の小学校とは違うことがわかってきた。

長尾さんと仲間たちがつくった「大日向小学校」は、長野県南佐久郡佐久穂町にある。一度は廃校になった学校の校舎を再利用し、新たに建てられた小学校は「誰もが、豊かに、そして幸せに生きることのできる世界をつくる。」という建学の精神に基づいて建てられた、日本で初めてのイエナプランスクール認定校なのだ。

イエナプランの詳細については、この書評では詳しく書かないけれど、教室で先生が教科書を基に答えを教えてくれる授業だけではなく、生徒たちが自分たちで考え、選択できる余地がたっぷり用意されている教育だと、僕は解釈している。

2019年度からいくつかの学校が導入を検討しているだけでなく、少しずつ全国でイエナプランを導入する学校が増えていこうとしている。

本書「あたらしい しょうがっこうの つくりかた」には、大日向小学校を運営する学校法人の理事を務める中川さんによって、どうしてこの小学校が生まれたのか、小学校が生まれるまでどんなできごとがあったのか、そもそもいくらかかるのか、といったことについて、丁寧に書かかれている。

答えがわからないこと、みんなですすむということ

僕は本書を読みながら、何度もくすっと笑ってしまった。なぜなら、僕は中川さんの事を知っているので、文中に出てくる中川さんの言葉を読んでいると、中川さんがどんな口調でしゃべったのか、どんな顔つきでしゃべったのか、思い浮かんでしまうからだ。顔が思い浮かぶたびに笑いがこみ上げてしまう。

本を読み終えて、中川さんには「こんなに丁寧に打ち合わせを重ねて、学校をつくったんですね」と感想を伝えた。

学校をただ作るだけなら、そう難しくはないのかもしれない。ただ、中川さんと仲間たちが作ろうとしたのは、対話を重視する「イエナプラン」の学校だ。対話は避けて通れないし、初めてのことだから、問題は山積みで、誰も答えなんてわからない。答えがわからないことは、ひとりじゃできないのだ。改めてそんなことを感じた。

でも、そんな話をすると、中川さんには「あなたの普段の仕事だってそうでしょ」と言われてしまったのですが。

本書は教育に興味がある人だけでなく、なにか新しいことをやってみたいと思う人にこそ、読んで欲しいと思います。新しいことは一人の強い熱狂から始まるのだけど、一人だけじゃできない。そんなことを教えてくれる本です。

※導入予定の学校について、修正しました。

この記事が参加している募集

推薦図書

サポートと激励や感想メッセージありがとうございます! サポートで得た収入は、書籍の購入や他の人へのサポート、次回の旅の費用に使わせて頂きます!