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【2023年10月16日、福島取材その1 浪江町津島へ】

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 2023年9月5日に、双葉町の細谷海岸(中間貯蔵施設エリア)へ行った。1Fがとても大きく見えるこの場所に来るのは、この時が4回目だった。3年近く前の訪問の時と違い、新しくテトラポッドを置くためにダンプ用の道が作られ、岸壁は大きく削られ、今までよりも1Fの近くによることが出来るようになっていた。そしてその岸壁からは、どこを流れてきたのかわからない地下水がところどころから流れ出ていた。

2023年9月5日、双葉町細谷海岸にて(中間貯蔵施設エリア)。

 この場所がこういう状態になったのは、映像作家であり友人でもある「原発の町を追われて」を撮影した堀切さとみさんのFacebookの投稿で知っていた。その時から、この水を測ることが出来ないか…とは思っていた。2023年8月24日から、東京電力と国は、周辺諸国や太平洋島しょ国の反対を無視し、福島県漁連の理解を得ることもなく、一方的に「処理汚染水」を流し始めた。ネット上では、「処理水」とされる水のセシウム濃度より、希釈に使われる海水のセシウム濃度の方が高いのでは、という疑問も出ていた。であれば、これは海水と地下水、ともに測るしかないでしょ!と僕はいつもお世話になっている東京新聞編集委員、山川剛史さんに投げかけてみた。

 それからあれよあれよと話は具体化し、10月16日に鵜沼久江さんが双葉町の農業委員会があるというので、ではその次の10月17日に双葉側の中間貯蔵施設エリアに入りましょうという段取りとなった。測定は東大の小豆川勝見さんに依頼することとなり、現地には東大名誉教授の鈴木譲さんも一緒に来ることになった。

 何という顔ぶれか。売れない絵本作家のひょんな思いつきがこんな大事になるとは。しかし実際に始まってみると、それよりもはるかに大きなことをやってしまったのではという実感が湧いてきた。だって、僕らが水を採取しようとしていた場所は、1Fの汚染水の放出口から北へ2km、6号機からは北へ1.3kmしか離れてないのだ。

 イントロダクションが長くなってしまったが、そんなわけで、10月16日は朝9時に久喜駅前で鵜沼久江さんと待ち合わせ、福島へ出発した。前日、浪江町の津島に行きたいと伝えていたので、それでは東北自動車道を通って川俣町を抜けていきましょう、ということになった。

 福島は遠い。直線距離では200kmでも、道路を走れば300km以上だ。しかし、あれこれと話しているうちにあっという間に福島市を通り過ぎ、道の駅かわまたにて昼食。2020年10月に通ったのと同じルート。あの時はこの道の駅で蕎麦を食べたが、この日は定休日だった。川俣シャモの店が開いてたので、そこで親子丼を食べる。980円と決して安くなかったが、川俣シャモというブランドを考えると、これは非常にお得らしい。

道の駅かわまた。
川俣シャモの親子丼。

 津島へ到着し、まずは津島稲荷神社へ。途中まで車で上がったが、「通行止」の看板に阻まれる。そこで僕だけ車から降り、本殿のある場所へ向かう。道は2本あり、どちらも急峻で片方は「通行止」、もう片方は途中の広場で誰かが発電機を動かしながら何らかの作業をしていた。どこが本殿なのかわからなかったので、作業をしていた人に「すいません」と声をかけると、こちらを向いたその顔は、津島出身の元原発作業員、今野寿美雄さんにそっくりだった。もしかすると親戚なのかもしれない。「津島稲荷神社は…」と言い終える間も無く、その人はすっと手を伸ばしてその場所を指し示した。お礼を言って、僕は本殿へと向かった。

津島稲荷神社へ向かう参道。通行止め。
津島稲荷神社。

 Googleマップでどんな神社かは確認していたので、すぐにそれはわかった。立派な神社だ。空間線量は0.6〜1.2μSv/hほど。決して低くはない。「早期復興祈願」と書かれている。お参りをして、何枚か写真を撮影し車へと戻った。

帰りは通行止めの道を下ってみた。草などは刈られているが、坂が急峻な上に、地面はデコボコで非常に歩きにくい。

 トイレに行くために、浪江町役場津島支所へ。そこで、神社で修復作業をしていた人について聞いてみた。「氏子というか、地元の人たちによってあのように道路の修復作業が進んでいくんですね」。しかし役場の人たちは首を傾げ、「把握しておりません」「解除されましたから、そういう人もいるでしょうね」と素っ気なかった。

 「文化財の保護」については、どこも後回しになっている印象がある。「復興」として見えやすいハコモノ作りも結構だが、本来必要なのは、こうした歴史の継承、伝承ではないだろうか。

<続く>


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