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「紅麹サプリ」患者全体の約3割が60代・約1割が70代、「どのように対応すれば……」

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*****令和6年6月29日(土)第174号*****

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「紅麹サプリ」患者全体の約3割が60代・約1割が70代、「どのように対応すれば……」
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◇─[はじめに]───────────

 昨日(6月28日)午後、厚労省内で武見敬三大臣は記者会見し、いわゆる「紅麹(べにこうじ)サプリ」問題で「小林製薬が3月29日までに公表した5事例の死亡事例のほかに、死亡に関する遺族からの相談が170事例あるとの報告があった」等と述べました。

 結果的に「死亡が疑われる事例は76人に増えた」ことがわかりました。詳細は、今後の調査結果が出るまで待つことになります。弊紙も、いずれどこかでこの問題を取り上げるつもりでした。

 ただ、弊紙の主な読者層とは関係性が強くないのでは……と勝手に推測していましたが、よく調べてみると、大阪市と日本腎臓学会がそれぞれ調査した結果で、健康被害を訴えた方はいずれも「60代が約3割、70代が約1割あった」ことがわかりました=グラフ・厚労省HPより。黄色と緑色のラインマーカーは、弊紙による加工

 今回の会見内容を踏まえ、厚労省は小林製薬に対して、強い態度で詳細な報告を求めることになりますが、どうやら健康被害の内容と件数は、現状の報告よりも「拡大」することが予想されます。

 それに伴い、今後の対応も変わる可能性がありますが、まずは現時点で、この問題に「どのように対応すれば良いのか……?」。弊紙では、読者の皆さんがこの問題を考える際のご参考となるよう、厚労省が公表している「Q&A」をご紹介したいと思いました。

 また、この問題で日本腎臓学会が「腎障害に関する調査研究」を行っており、その「中間報告・第2弾」も合わせてお読み頂ければ、専門用語が多く出てくるこの問題でも「今、自分は何をすれば良いか?」がわかるのではないかと考えました。

 調査の結果次第で、今後の厚労省や医療関係者の対応策も変化するかも知れませんが、とりあえずは「現時点での、最新情報」をお届けしたいと思います。今回の記事が、何らかの形で読者の皆さんのご参考になれば幸いです。

 日本介護新聞発行人

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現在、厚労省が公表(4月9日時点)している「Q&A」の主な項目と、その要旨
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 ■■Q1=小林製薬の対象3製品について、なぜ回収することになったのか?

 ▽A1=今年3月22日付で、小林製薬が販売する「紅麹」を原料とする機能性表示食品について「健康被害が発生した」として、製品の回収をする旨が同社より公表された。対象は次の3商品。

 ◆1.「紅麹コレステヘルプ」=45粒15日分、90粒30 日分、60粒20日分
 ◆2.「ナイシヘルプ+コレステロール」
 ◆3.「ナットウキナーゼさらさら粒 GOLD」

 ▽現在、食品衛生法に基づき小林製薬が製造・販売した紅麹関連製品の回収等が進めれている。これらの製品を購入した方は、直ちに喫食(=きっしょく=食べること)を中止し、身体に異常がある場合には医療機関を受診するか、最寄りの保健所にご相談頂きたい。

 ■■Q2=小林製薬の対象3製品について、「紅麹」の何が原因だったのか?

 ▽A2=原因物質については、現時点で詳細は不明であり、国立医薬品食品衛生研究所の協力を得ながら原因究明に向けて取り組んでいる。

 ■■Q3=回収の対象3製品以外の製品は、安全なのか?

 ▽A3=回収命令の対象とした3製品以外の、小林製薬の「紅麹」を原料とする製品への対応については、今年3月28日に開催した(厚労省の有識者会議)薬事・食品衛生審議会の調査会の意見を踏まえて、対応方針を次のように決定した。

 ◆1日当たりに、3製品と同等量以上の「紅麹」を摂取することとなる製品
 ◆または、これに当たらなくても、過去3年間で医師により健康被害が1件以上報告された製品

 ▽この2点のいずれかに該当する場合には、事業者自らの点検を行った上で厚生労働省に報告するよう求めた。その数は延べ225社に及んだがこの結果、いずれの企業からも該当する結果は得られなかった。

 ▽こうしたことから、現時点では回収命令の対象となった3製品と、同じ原材料を使用している製品については、この3製品を除いて「安全」と判断している。

 ■■Q4=手元に商品がある場合、どのように対応すればよいか?

 ▽A4=回収の対象となった3製品をお持ちの方は、まずは当該製品の喫食を中止し、身体に異常のある場合には医療機関を受診するか、最寄りの保健所にご相談頂きたい。また、小林製薬において返品を受け付けている。

 ▽詳細については、小林製薬HP(https://www.kobayashi.co.jp/)をご確認頂きたい

 ■■Q5=対象の3製品について、過去に摂取したことがあるのだが、医療機関で検査をした方が良いか?

 ▽A5=身体に「異常がある」場合のみならず、身体に「明らかな異常がない」場合であっても、対象の3製品を摂取した等の理由で、何らかのご不安等があるときには医療機関を受診するか、最寄りの保健所にご相談頂きたい。

 ■■Q6=「症状」が出ている場合、どうしたら良いか?

 ▽A6=ただちに喫食を中止し、身体に「異常」のある場合には医療機関を受診するか、最寄りの保健所にご相談頂きたい。

 ■■Q7=現在、入院・通院をしている人の症状について教えて欲しい。

 ▽A7= 自治体に対して「医療機関から報告されている情報」によれば、症状としては「浮腫(むくみ)」「頭痛」「倦怠感(だるさ)」「食欲不振」「吐気・嘔吐」「動悸・息切れ」「めまい・ふらつき」などが見られるとのこと。

 ■■Q8=小林製薬の対象製品を使用していたことがある。検査をしたいが、何科を受診すれば良いのか?

 ▽A8=ご自身の「症状」に応じた診療科を受診して頂くこととなるが、対象の3製品を摂取した方については、身体に「明らかな異常」がない場合であっても、何らかのご不安等がある時には、まずは内科の医療機関を受診して頂くのが良いと考える。

 ■■Q9=医療機関を受診した場合、どのような検査をするのか?

 ▽A9=医師の判断により、検査をする場合には、主に血液検査や尿検査等を行う。

 ■■Q10=もし、検査で「異常」があった場合、治療はどのような内容なのか?

 ▽A10=原則として医師の判断によるが、当該製品の喫食が原因として疑わしいようであれば、まずは当該製品の喫食を中止することが重要だ。そのうえで、検査結果や、症状の程度などを踏まえて、必要に応じた治療を行うこととなる。

 ▽具体的には「薬剤を用いた治療」や、重症例に対する「血液透析などの治療」を行う場合がある。

 ▽「薬剤を用いた治療」では、ステロイド(※)を用いた治療を行う場合がある。この際は、入院して実施することが想定される。

 ※【弊紙注釈=ステロイド=副腎皮質ホルモンと呼ばれる物質の一種で、血液によって常に体内を循環し、様々な臓器や細胞に働きかけ、身体にいろいろなストレスが加わった時に体調を整える重要なホルモン。ステロイドには炎症や免疫を抑える強い働きがある。

 ▽「血液透析などの治療」では、著しく悪化した腎臓の機能を一時的に補うため、血液浄化療法(血液透析等)を行う場合がある。いわゆる維持血液透析とは異なり、腎臓の機能が回復すれば、治療を中止(離脱)することが可能だ。

 ■■Q11=対象の3製品の喫食がある場合、医療費はどのような取扱いとなるのか? 自己負担は発生するのか?

 ▽A11= 対象の3製品を喫食したことがある方については「無症状」の場合の診療を含め、喫食の食歴等から、医師が必要と判断して実施した診療については保険診療となる。その際は、通常の保険診療と同様の自己負担割合となる。

 ■■Q12 =対象3製品が原因で入院や通院をした場合、国の補償はあるのか?

 ▽A12=厚生労働省としては、補償は行っていない。

 ■■Q13=小林製薬の対象製品以外で「紅麹」を使用している商品を喫食したが、体調を崩しており不安だ。どのようにしたら良いか?

 ▽A13= 回収の対象となった3製品以外の「紅麹」を用いた製品については、現時点で、健康被害に関する報告はなされていないが、何らかのご不安等があるときには医療機関を受診するか、最寄りの保健所にご相談頂きたい。

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日本腎臓学会・「紅麹サプリ」に関連した腎障害に関する調査研究「中間報告・第2弾」要旨
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 ■■【調査対象189例の各年代の割合は、60歳代32.6%、70歳以上11.1%。女性が65.3%】

 ▼「紅麹コレステヘルプに関連した、腎障害に関する調査研究」アンケート調査に、多くの会員の先生方にご協力を頂いた。おかげさまで、4月末日時点で189例のご登録を頂いた。

 ▼「紅麹コレステヘルプ」摂取後に生じた腎障害の臨床像につき、先生方の診療の一助となるように、現時点での中間報告をさせて頂く。なお、この中間報告では1症例を除いて「紅麹コレステヘルプ」を服用されていた。

 ▼一部には「ナイシヘルプ+コレステロール」 あるいは 「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」を併用して服用されていた方もおられる。「紅麹コレステヘルプ」を服用していない1症例は「ナイシヘルプ+コレステロール」のみ服用されていた。

 ▼この症例については、抗ウイルス薬を併用されている。また「紅麹コレステヘルプ」を服用されているものの、症状や検査値異常を認めない症例についても登録して頂いているが、本報告ではすべて解析対象に含めている。

 ▼患者さん全体に占める各年代の割合は、30歳代2.6%、40歳代14.2%、50歳代39.5%、60歳代32.6%、70歳以上11.1%だった。また、女性が全体の65.3%だった。

 ■■【医療機関での初診時の症状は、腎機能障害(56.4%)、食思不振(47.3%)……】

 ▼服用開始は38%が1年以上前(服用開始時期2023年3月以前)だが、服用期間が短期間の方(開始時期2024年1月~3月=12.4%)も、発症しておられる。初受診日は2023年11月以降で、ほとんどの方が12月~3月にかけて受診しておられる。

 ▼初診時の主訴(=患者が医者に申し立てる症状のうちの、主要なもの)は、倦怠感(46.8%)や食思不振(=しょくしふしん=食欲が低下すること=47.3%)、尿の異常(39.9%)、腎機能障害(56.4%)が多く認められた。

 ▼腹部症状(12.8%)や体重減少(22.9%)を訴える方も、少なからずおられた。発熱(4.3%)や嘔気・嘔吐(4.8%)、浮腫(=ふしゅ=顔や手足などの末端が、体内の水分により痛みを伴わない形で腫れる症候。むくみ=3.7%)。

 ▼頻尿(2.4%)や体重増加(2.4%)などの方は、比較的少ないようだ。

 ■■【健康被害と「紅麹コレステヘルプ」との因果関係は、科学的な検証が必要」】

 ▼治療では、透析療法を必要としたのは7症例、ステロイド治療を行ったのが約2割となった。低カリウム血症に対するカリウム補充や、代謝性アシドーシスに対する重曹投与など、電解質異常に対する補正をされている症例が多くみられる。

 ▼腎機能低下は、ステロイド治療なしでも被疑剤の中止だけで、ある程度改善する傾向にある。ステロイド治療については、腎生検所見などを参考に選択する必要があると思われる。

 ▼なお、尿所見、電解質異常については、経過をフォローされた方のうち、約4分の3の症例で改善傾向を示してしているが、改善に乏しい症例もあり、注意が必要。透析治療を要した7症例のうち、5症例は透析から離脱している。

 ▼企業(=小林製薬)による死亡例の発表がなされているが、本アンケートでは死亡された方はおられなかった。これらを踏まえ、健康被害と「紅麹コレステヘルプ」との因果関係については、科学的な検証が必要と考えている。

 ▼原因物質については、候補物質に関する報道がなされているが、今後厚労省が国衛研とともに網羅的探索かつ発生機構の解明を行うことになっている。「紅麹コレステヘルプ」に関連した健康被害として、この報告でお示しした以外の病態を否定するものではない。

 ▼現在、データクリーニングをして「最終報告」に向けて解析を行っているが、本調査にご協力いただいた先生に、腎生検所見に関する追加情報や腎機能が改善するのかなど、追跡調査をお願いする予定にしており、腎臓学会等で最終報告をさせていただきたい。

◇─[おわりに]───────────

 この「紅麹サプリ」問題は、発生当初から小林製薬だけに止まらず、いわゆる「健康食品」全体にまで、その影響が及んでいます。特に、記事中のQ&Aで「Q3=回収の対象3製品以外の製品は安全なのか?」は、多くの方が同様の疑問を持つと思います。

 これに対し厚労省は、現時点では「3製品を除いて『安全』と判断している」と回答しています。今後の調査でどのような結果が出ても、この回答内容が変わらぬよう、厚労省は詳細な検証を継続する必要があります。

 弊紙も、この問題で新たな進展がみられた際には逐次、読者の皆さんにお伝えして参ります。

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