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マイクロノベル集

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140字以内で書いた短い短いお話です。
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#ショートショート

  【創作】誕生【8連マイクロノベル】

  【創作】誕生【8連マイクロノベル】

1.
 ある日あなたは川で洗濯をしていた。いや、今時そんなことをする人はいないって?でも今はそういうことにしておいてくれ。でだ、しばらくすると、川上からどんぶらこっこどんぶらこと音がした。そこであなたはすぐに察する。ああ、例のアレが流れてきたんだなと。やがてソレの正体が明らかになった。

2.
 普通はここで大きな桃が流れてくる。が、今回は違った。なんとパイナップルだったのだ。なぜ川にこんなものが

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【マイクロノベル】極楽エレベーター

【マイクロノベル】極楽エレベーター

 ある日蓮池を覗いたお釈迦様は、血の池で蠢くカンダタの姿を見つけ、今度こそ助けてやろうと、極楽エレベーターを作ってやりました。カンダタは真っ先に乗りこみましたが、背負った罪が重すぎてエレベーターは動きません。地獄の底には乗れる者がおらず、一度も使われることなく壊れてしまいました。

(ショートショート部 お題:エレベーター)

※当初「天国エレベーター」というタイトルでしたが、「極楽」の方が適切だ

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【マイクロノベル】歩く

【マイクロノベル】歩く

 目の前に伸びる道をただひたすら歩いてきた。誰かと星を目指していたような気もするが今は独り。振り返ると乾いた道に残る私の足跡はもう消えかかっていた。冷たい風に吹かれ身震いして目を閉じる。すると彼方からの光が私を一瞬で赤く染めた。やっと目を開けて見上げた空にはもう星が見えなかった。

【マイクロノベル】まねっこ

【マイクロノベル】まねっこ

 動物の形に型抜かれたビスケット。平面のままでいることに飽きた彼らは、表面を凸凹させて立体的になった。次第に体を動かすことを覚えて、自由というものを知った。やがて音を出せることに気づき、言語のようなものが生まれた。そして仲間という意識が芽生えていった。文明が誕生するまであと一歩。

(ショートショート部 お題:ものまね)

【マイクロノベル】野望

【マイクロノベル】野望

 エコバッグは仲間を集め、おしゃれ生活を発信しインフルエンサーになった。皆彼らの意識の高い生活を真似てキャッチーな発言に酔いしれた。やがてそれは民意となりレジ袋の撲滅に成功。エコバッグこそが正義となった。人々は溢れんばかりのエコバッグに囲まれ幸せだった。エコバッグはほくそ笑んだ。

(ショートショート部 お題:スーパーの袋)

【マイクロノベル】希望

【マイクロノベル】希望

 小窓から見える闇の中に一点の明かりがあった。月ではなく星よりは大きく灯台ほど明るくない。それは時折瞬き私に話しかけてくるようだった。彼処に何があるのだろう。誰も海の向こうのことは知らなかった。今夜も切り取られた闇の中に明かりを見つける。いつか行くからと語りかけたとき光が瞬いた。

(ショートショート部お題:灯台)

【マイクロノベル】始動

【マイクロノベル】始動

 私は棒人間。ある日、作者がつまらない授業を聞いているときに教科書の端に生まれた。少しだけ違う私がページ毎に増殖する。しばらくして作者が本を持ち親指でページの角を弾いた瞬間、我々は一体になった。そして残像だけを残して別の余白を求め旅立った。今日もまた動き出す時をじっと待っている。

(ショートショート部 お題:余白)

【マイクロノベル】ギラギラ

【マイクロノベル】ギラギラ

 昼近くになりようやく目覚めた私はカーテンを開けた。白い光に視界を奪われる。すっきりしないのはお酒のせいばかりじゃない。昨夜友達からアイツが死んだと聞いたのだ。
 スマホの写真も全部消して忘れたつもりになっていた。久しぶりに夢で出会ったアイツは白い歯を見せて笑っていた。涙が溢れた。

(ショートショート部の今週のお題「ギラギラ」)