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幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない

 村山香織さん「星々の舟」を読んだ。
 
 六つの短編に分けて、親子3代の複雑に絡む恋愛、夫婦愛を描いているが、全体で一つの長編小説になっている。内容は複雑多岐だが、徴兵されて日中戦争を体験した水島重之と家族の恋、葛藤の物語だ。
 
 最後に著者が述べている「あとがきにかえて」から抜粋すると・・・・
 
 「星々の舟」は戦争小説などではない。・・・叶えられないいくつかの恋の物語であり、・・・兄弟の禁断の恋を書いても、不倫を書いても、いじめや暴力について書いても、更には戦争について書いてさえ、どこかに一条の光が射すような終わり方を心がけたつもりでいる。・・・人間「自由であること」を突き詰めれば、「孤独であること」にも耐えなければならない。・・・家長である重之がつぶやくモノローグ、「幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない」は、私が一年間の連載を通して、私自身がようやくたどりついた感慨であり、気づきでもある。
 
 ・・・・描かれる恋愛は全てが不首尾に終わるが、だからと言って不幸とは言い切れない。彼、彼女らは心に重いものを抱えたが、その重さが愛おしいくもあり、その後の生きてきていくよりどころになっている、のかもしれない。
 
 主題と外れるが、些か気になる記述がある。
 主人公水島重之が徴兵されて中国との戦争に駆り出されるのだが、そこで朝鮮人の慰安婦とねんごろになる。その慰安婦が、自分も含めて大勢の女が日本兵に暴力的に連れ出され、慰安婦とされている、近隣の男性も多くが、強制的に連れ出されて、強制労働させられている、と述べている。
 
 この辺り、何処までが事実なのかわからない。朝鮮人男女の強制連行に関しては、朝日新聞が吉田清治氏の証言を1980年から1994年まで10数回にわたって取り上げ、これが事実化し韓国でも大きく取り上げられた。途中で強制連行した数が100人から6000人に急増し、いくらなんでも1人で6000人はないだろう等、その他諸々があり、朝日新聞は2014年に、一連の吉田清治氏の証言は全て虚偽だと判断してお詫びしてしまった。

朝日新聞社インフォメーション | 記事を訂正、おわびしご説明します 慰安婦報道、第三者委報告書 朝日新聞社 (asahi.com)
 
 強制連行が全くなかったとは思えないが、日本国内の場合と違うのか、何が何だか分からない。「あとがきにかえて」は2006年に書いており、朝日新聞が吉田証言を虚偽と公表した数年前、仕方がないのだろうか。

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