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「東京カレンダー」に見るデジタルブランディング成功の10の秘訣(後編)


※最後の付録部分を読むには100円が必要ですが、本編の無料範囲も内容濃くボリューミーなので、ぜひご覧ください。

前編は、最所あさみさんに取り上げていただいたり、note編集部のおすすめ記事に登録されたおかげで、多くの方に読んでもらえました。ありがとうございます!

後編は、「東京カレンダー」がデジタルでのブランディングを成功させている10個の秘訣のうち、残りの5つについて書いていきます。

東京カレンダー」ってなんぞや?という方は、ぜひ前編からご覧ください。

「東京カレンダー」デジタルブランディング成功の10の秘訣(残り5つ)

後編の残りの5要因は、主にコンテンツマーケティングとファンマーケティング要素について書いていきます。

1.コンテンツマーケティング要素
⑥「リーチ至上主義からエンゲージメント至上主義」へ

今年6月開催の「インターネット・マーケティングフォーラム2019」の講演で、東京カレンダーの菅野社長は「リーチ至上主義からエンゲージメント主義へ」と語っていました。

つまりは、広告やSEOで一過性的に集客した短期的な数字ではなく、エンゲージメントの高い長期的な数字(例えばリピート数など)を重視する、ということ。

これまでwebメディア史上では、KPIであるPVやUUを達成するために数字獲得テクニックに走り、「リーチ至上主義」に陥ってしまうことがたびたび問題視されてきました。

例えば、スマホでのクリック誘発のために誤操作しやすい位置にバナーを設置したり、コンテンツの質は丸無視してSEOワードをちりばめた記事を量産したり…。

広告やSEOはあくまでマーケティングの手段であり、KPIは目的達成のためのいち指標でしかないにも関わらず、その数字を伸ばすこと自体が目的化してしまい、「ユーザーが求めているものは?」「そのためにどんなコンテンツが必要か?」という中身を置いてきぼりにしてしまう悲しいスパイラルです。

しかし東京カレンダーは、ユーザー視点という軸をぶらすことなく、あくまで「東京カレンダーという媒体にユーザーが求めるコンテンツは何か」をつきつめ、そのニーズに沿った(時には超えた)コンテンツを提供することで、エンゲージメントの高いユーザーのPVを伸ばしてきたのだと思います。(おそらくリピート数が相当高いのではないではないでしょうか)

実際、菅野社長曰く、東京カレンダーは広告で目先の数字を追うのではなく、オーガニックで伸ばしているとのこと。

確かに、Twitterでも東京カレンダーの記事を話題にしたり、シェアする人が結構います。「港区おじさん」「エビージョ」「丸の内にゃんにゃんOL」など東カレ発信のワードがバズったことも。

時にフォロワーがめちゃ多いインフルエンサーの人たちも話題にするので、波及効果がすごいんですね。

⑦リアルにこだわる
東京カレンダーが徹底的にこだわっているのは、「リアルであること」。

本当にこの通りで、私も知った当初は「都市伝説でしょ」と思っていたのですが、東京カレンダーのコンテンツは都会に住む男女のリアルなライフタイルを描くことにこだわっていることを知り、驚きました。

実際、ライター募集ページにも、以下要項が記載されています。

東京に住むアッパー層のリアルを東カレらしいテイストで書くことができ、かつ既視感のない新鮮なテーマを提案できる方を歓迎いたします。

港区界隈に生息する高所得層周りの話が多いので、あまり自分にとっては日常ではないのですが、都市伝説ぎりぎりのリアルを知れるところにコンテンツの面白さと深みがあり、ハマってしまう人が続出するのだと感じます。

まさに港区の当人たちは「あるある!」と共感&面白がるし(これまでこの層のリアルを描いたメディアはほとんどなかったからこそ)、それ以外の層は「こんな世界があるんだ!」と憧れ&面白がり話題にしたくなるし、シェアしたくなる。ブランドターゲットとセールスターゲットの両方を取り込む好事例のメディアですね。

また、リアルにこだわるという点において、菅野社長は講演で以下のように話していました。

「知るだけでは意味がなく、いかに体験してもらうかというコンバージョン重視のカルチャーを大切にしている。例えば、東京カレンダーの紙面で紹介したレストランにどれだけ足を運んだかを指標として重視している時期もあった。」

このように、雑誌のみの時代から一貫して持っているリアル体験へのこだわりが、現在もwebコンテンツにとどまらずリアルイベントを開催するなどO2Oマーケティングを成功させている秘訣なんですね。

⑧トレンドをいち早く取り入れる
雑誌が大もとのwebメディアは、どうしても(業界特性的に)デジタル施策が後手に回るという課題を抱えやすいですが、東京カレンダーはいち早くデジタルトレンドを取り入れている稀有なメディアです。

例えば、動画マーケが流行りだすと、内製で動画コンテンツを作り、新たな話題作品を創出したり。(「1分港区おじさん」はじわじわと視聴数を伸ばし、最終的に多くのファンを生みました…!)

19年5月からはTik Tokで『東カレTikTok』という15秒ドラマを毎日配信したり。

このようにトレンドを素早くキャッチし、自社コンテンツに取り入れるスピード感が、今どきの読者を飽きさせない秘訣だといえます。

2.ファンマーケティング要素
⑨コンテンツを内製する
東カレのすごいところは、動画やリアルイベントを内製していること。

当初はリソース的に外注を考えていたそうですが、代理店の見積もりがあまりにも高く、内製した方がいいのでは?と思い直したそうです。

最初は手探りで作るところから始まり…動画の「1分港区おじさん」は、ユーザーが飽きない視聴時間が1分だから、などマーケティング戦略的にその尺にしたのではなく、その尺でつくるのがリソース・スキル的に限界だったからだそうです(笑)

しかし内製が功を奏し、この手づくり感、そこから醸し出される生々しい臨場感がファンに刺さり、ファンを育ててきたのです。(数ある動画メディアの中でもかなり異彩を放っていますからね…)

菅野社長は「企業として不格好でも自分たちでチャレンジしていく姿勢にファンの方がついてきてくれる」とお話ししていましたが、そうした東カレの挑戦に対する応援心や共感もファンのコミットを強めたのでしょう。

⑩ファンとのコミュニケーションを重視
東カレはファンとのコミュニケーションを非常に重要視しています。

代表的なものが、定期的に開催される「東カレNIGHT」。港区のレストランを舞台に男女が出会い集うイベントとして大人気で、数十倍の倍率になった回もあったとか。

それほどまでに人気の理由として、
・毎回開催場所や趣向を変えていて飽きない
・非日常を味わえる(バラの花を選んだ女性に渡すなど、当時話題だったバチェラーという番組を模したイベントを開催したりもしていた)
・応募資格が年収や年齢(写真必須の場合は顔審査も?)で区切られていて、「こんなアッパー層イベントに行ける自分、選ばれた自分」という満足感をかき立てる

などが考えられます。とてもファン心理を分かっている&大切にしているマーケティングだな…と脱帽の極みです。(ため息)

(※ただし、ここ半年は開催されていないようです。マッチングアプリやファンコミュニティ「東カレ倶楽部」の方に投資しているのかな)

またもう1つコミュニケーションの好事例として、東カレのアプリでは記事にコメントできる機能があります。

コメントの種類は多岐に渡りますが、連載ドラマ・エッセイのストーリーや登場人物に対して感想や意見を述べたものが多く、感情移入している読者が多いのだな…ということに驚かされます。

よく「好きの反対は無関心」と言いますが、どうでもいいコンテンツには反応もしないもの。ポジティブでもネガティブでも強い意見を生み出し、時に共感や論争(?)さえ巻き起こさせるコメントらんは、いかに東カレがユーザーの心をとらえてしまっているかを浮き彫りにしています。

※※ここまでが本編となります。前編はこちら※※

付録:ファンマーケティングが必要な理由&成功させる秘訣

ここまで、東京カレンダーに見るデジタルブランディング成功の10の秘訣をまとめてきました。

ここからは、東京カレンダーの成功に大きく寄与している「ファンマーケティング」について、菅野社長の話をベースに以下のテーマで書いていきます。

1.なぜファンをつくるべきなのか?3つの理由
2.ファンマーケティングを成功させる考え方の秘訣2つ
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