100日後に生きかえるワテ43日目
海を見て,自由であることを実感
心が解き放たれた瞬間を感じた
私は自由だ
私は自分でしたいことをする
私はやりたくないことは断る
私はできないことはできないと言う
これはわたしにとって最高の贅沢
今まで頑張って生きてきたご褒美
仕事を辞めた
苦渋の選択だった
仕事は決して苦痛ではなかった
むしろプライドを持っていた
天職だと思っていた
人と関わる仕事は楽しいと感じていた
いつの日か
それが
できなくなっていった
仕事ができない自分をさげすんだ
私はダメ人間だとさえ思い
自分の存在を否定し始めた
私は壊れかけていた
仕事を休むたび
自分を否定し
仕事に戻るたびに
周りに頭を下げていた
「申し訳ありませんでした」と
そんな自分が嫌で嫌でしょうがなかった
そんな時
「リセットしよう」と思うようになった
リセット・・・
仕事を諦める勇気がなかなか出なかった
でも
仕事を休み始めてから
青い空を見上げ
外の匂いを感じることもなかった
足元さえ見ることもなかった
小さな花々にも目を向けることができなくなっていた
誰かに背中を押してほしい
連れ出してほしい
堂々と外に行きたい
風を感じて
外の色を見てみたい
それだけを願っていた
きっかけはある日突然訪れた
「本が読みたい」
そう強く思った
自宅には僅かばかりだが
書棚に本は並んでいる
いつでも手に取ることできた
うつ病になり
本を読むことがままならない日々が続いていた
「本が読みたいんじゃない
外へ出かけたいんだ。
歩きたいんだ。」
私が目指したのは
図書館
今までなら
決して徒歩で行こうとは思わなかった場所にある
街を抜け
少し小高い場所にある
図書館
「歩いていく」
そう決めてから
心は踊った
歩く
歩く
歩いている間は
何も考えなかった
自分には
目的地がある
それだけで
幸せだった
橋から川を見下ろし
知らぬ家の草花に目をとめ
通りすがりのカフェから漂うコーヒーの匂いに喜び
私は生きていると感じた
誰も私を知らない
誰も私を見ない
誰も私に気が付かない
あ,自由なんだと感じた
いつの間にかはしゃぐ自分に気が付いた
私の心は
リセットに向いていった
毎日歩くようになり
心の中のもやは
晴れていった
いつしか
海を見たい
そう思うようになった
あの日
津波に飲まれ
海におびえていた
高くそびえたつ防潮堤によって
身近だった海は
見えなくなった
海が
遠くなった
あの日以来
海を見たいと思ったことはなかった
心が解き放たれた今
海を見に行くことが
自分に課したけじめのようなものだった
目の前に
海が見えたとき
怖さは感じなかった
むしろ
会いたかった人に会えた感覚を覚えた
リセットした瞬間だった