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息子が結婚する時

「食べものを飲み込むチカラがなくなってきたわ。これが歳を取るということか…」
夫婦で食事をしていると夫がつぶやく。
そして、
「にみりさんは歳を取ったなと感じるような身体の変化はない?」
と聞くので、

「お顔の老化が気になりますわ」とわたしがぼそっと答えると
2秒間目が合った後、
「なるほどなぁ」という夫。

………えっ???
なんか違うような…。
違わないような…。

こんなわたし達夫婦も2024年、6月に義理の娘ができることになった。

去年の9月に次男から
「家を買った」
とラインで一言、事後報告をされてからが始まり。横浜に庭付き一軒家をどーーーんっと買ったらしい。

どういうこと?
と尋ねると、
「結婚するわ」と、これまた、たった一言の説明があったが、わたし達夫婦はその時、次男のお相手の顔も知らなかった。

《順番ちゃうやん。
彼女に会わせてくれ。》

それから数ヶ月後の今年の1月に、ようやくお相手の彼女に会うことができた。

次男のプロポーズ


幸せオーラ大全開の次男が話してくれた。
まるでインスタライブの画面の端からハートが噴出されるイメージ。
ピンク色のハートが次々に次男の頭から出ている…感じで。

東京ディズニーリゾート40周年“ドリームゴーラウンド”というイベント中、ミラコスタに宿泊。その額一泊9万円。
次男は彼女の誕生日に有休を取り、彼女もまた有休を取ってその日を迎えた。

昔どっかのアクセサリー会社がCMでうたった「婚約指輪は給料3ヶ月分」を律儀に守ったのか、はたまた彼女におねだりされたんかは知らないが、なんとひゃ、ひゃ、ひゃくにじゅうまんえんのプロポーズリングを胸ポケットに忍ばせた次男は、ディズニーランドの異世界を上から一望できる高級ホテルの一室で、彼女の前にひざまずく。

「         。」
鍵かっこの中身は聞いてない。
てか、教えてくれんかった。

「君の味噌汁を毎朝飲みたい。」
なんてプロポーズだったらば今の世の中、張り倒されるだろうが。


ひざまずいて差し出した指輪のケースが開いていて、涙と共に彼女がそれを手にする…


次男よ、やってくれるわ。

もう勝手にやってくれ。

30数年前の自分の時を思い出した。
わたしが夫からもらった婚約指輪は

2万4千5百円だった。

初顔合わせ会食


今年のゴールデンウィークに彼女のご両親と初顔合わせをした。

京都の和食で和室の一室。鴨川近くのなんとも風情がある場所のお店を選んでくれた息子たち。
会食の費用も全て息子たちが支払うという。ありがたや。

もうすでに、彼女のご両親は到着されていた。後から来たわたし達にまずは手土産をと、彼女の母親が正座で差し出してくれたので、わたしも正座で持ってきたものの説明をしながら、「おも、重たいものばかりですみむせん…」とあたまを下げた。
「すみむせん。」誤字ではなく緊張のあまりの「すみむせん。」

わたし達が用意した手土産はジャムとうどんと大吟醸。
重たいもんのオンパレードである。
見た目がでかいもんが豪華、という概念で責めたのは大きな間違いだった。おばちゃん根性丸出しである。

相手のお母様からは少量で高級なものを上品に差し出され、これからはそれを見習っていこうと固く決心した。
「これからよろしくお願いしむす」と
ガタガタしながらあいさつを済ませて食事をした。
相手のご両親は上品なイエガラがひと目でわかる。
スーツにネクタイをした彼女のお父様に対し、うちの夫はなんてことでしょう。ティシャツにカラフルなシャツを一枚はおっただけのいでたち。
ドラえもんみたいなタテジマのシャツだ。
後から気がついたが、わたしは、カバンにドラミちゃんをつけていた。

記念に両家で撮った写真には、カバンにぶら下がるドラミちゃんが笑っていた。

彼女のお父様は温厚で誠実そうなイケオジだった。
お母様もまた気さくで聡明な女性オーラを放っていた。

彼女も愛されて育ってきたんだろうな。
申し分のない女性だ。
1月に初めて彼女と会った時より少しリラックスしている感じだった。

こりゃこちらはトークで盛り上げるしかないわ、と積み上げてきた薄っぺらなコミュニティ能力を発揮しようと必死こいた。
あまり喋りすぎず、相手を尊重しつつ、彼女、お母様、お父様と満遍なく話しをふる。そしてじっくりと相手の話しを聞いてその内容に質問したり感心したりしよう。

……なんてわずかな時間にシュミレーションをしたが、実際は何も考えずともスムーズに会話が弾んだ。
相手側の柔らかい雰囲気と自然な会話に引き込まれ、まんまと私たちは楽しい気持ちにさせられた。

また会いたいと思った。
その一言で全てがわかる、今回の印象。

両家がお開きした後に次男が京都を案内してくれた。さすが学生時代を京都ですごし、おおいに遊びまくり人間関係をはぐくんできた若者よ。

穴場っちゅう穴場の京都の裏や
知られざる観光名所を見せてくれた。

それからここもおもしろい。(下記写真)
歩いているだけでワクワクする。
商店街内のところどころに神社がある。「京の台所」と称されるそこは、鮮魚、生鮮食品や加工食品、京料理の食材など、京都ならではの珍しい食材がならぶ。


京都観光オフィシャルサイト
京都観光Naviさんより写真をお借りしました


息子と歩く京都。このなんとも言えないほのぼの感。

だけど…

幸せオーラ全開の我が息子を背にした時、
イチミクロンほどの寂しさを感じる。

あぁ、結婚しちゃうんだ…

子どもが結婚する直前の親の大概は、そんな気持ちを感じたことがあるだろう。

わたしより少し先を歩いている人生の先輩方にお聞きしたい。
この気持ちに名前をつけるとしたら
何と呼べばいいだろう。

小さかった可愛いかった我が息子が…

あぁ、涙がでてしょうがない…

お顔の老化を嘆きながらも人生のエモーショナルを盛大に感じつつ、感傷に浸っていると、

我が母からラインがきた。

『入院することになったから戻ってきて。』


いや、言い方よ。


一回でいいから
「にみりの都合もあるのに、ほんとごめんやけど、お世話をお願いできないかしら?」
と言われてみたい。

まあ、皆無だが。

わたしは実母がひとりで暮らす四国と夫が単身で暮らす関西を数ヶ月ごとに移動するスーパーおばさんである。
行ったり来たりの2拠点生活は周りから言わせりゃ、すげーハードなことして頑張ってるのね。って言われるが、母にとってのそれは

あ、た、り、ま、え
なのである。
自分は尽くされて当然というへんちくりんなポジティブ思考は、ある意味うらやましい。
どこから湧いてくるんだ?
その自信。

現在、次男の結婚で顔合わせなどいろいろあって関西で生活していたが、また難儀な生活へひきもどされることになった。
母との生活を「難儀」というのは
にみりnoteによくご訪問くださる方は知っていらっしゃると思いますが
うちの母をよく知らない方へ、
我が母(我がママ)のジコチューぶりをイラストにしたのでぜひ見てください。


母が背後から、
小走りに走ってきて、


「アタシが入るよ!」
と言い放つ。


どうやらドアの向こうでは用足しが、すでにはじまってるようで…


わたしが
「なんで横入り?」

とドアの外から聞くと、

…と、聞いてもないことを答えてくれはりますねんわ。
水を流す音にも負けないくらいのでかい声での答えが返ってくるのでありますねん。




あんたのうんこ事情なんて

知らんがな!

「3日以上うんこを体内に溜めている方は優先的にご入室できます。」

とか、都合のいい張り紙でも見えてんの?


数分後、スッキリ感満載の顔した母が
わたしの横を素通りする。
むろん、
「ごめんね」などの言葉なんて

あるわけ

ない。


****************

っと、まあこういう人なのである。

とにかくほぼ全て自分のために地球が回っている。

「アタシの価値観は世界の標準」
をモットーにしてはりますねん。

だから、
また
苦悩の日々が始まるのだ。

あぁ我が次男よ
わたしの分も幸せになっておくれ………。


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