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あるBirthday Partyで。左隣に座った男性と。

続きを。

指定された席に座って食事が始まる前は、皆がワイングラスを手にして立ち話。知り合いを見つけて「久しぶり」と話しながら、そこに知らない人が割り込んできて「初めまして」と挨拶したり。

つくづく思ったのだけれど、女性は余計なこと無駄などうでもいいことを口にしすぎる。私はその会話に飽きる。そのくせ、同時に自分を見定められている、探られているような気がする。男性と話している時にはそれを一切感じない。彼らはシンプルで裏がない。

参加者のほとんどが夫婦。女性同士が知り合いで、夫は妻についてきているパターン。もちろん私の友人の彼女とは夫婦でのつき合いなのだろうけれど、このパーティへの参加が妻による主導であることは間違いないから、男性陣はちょっと居心地が悪そうにしている。

初めまして、と挨拶した夫婦と話し始めたら、奥さんが知り合いを見つけ「ちょっと失礼」と言って離れていき、私は彼女の夫と二人で話すことになった。自然に子供の話になる。二人目の男の子がある工科大学の学生で、そこでCadet Program(士官候補生プログラム)に所属しているという。うちのムスコも工科大学だけど、各種米軍関係プログラムについては、ムスコの友達もムスメの同級生も足を突っ込んでるから、話題をそっちに絞って話を続ける。

突っ込んだことを聞くけど、親として心配じゃない?
うーん。息子は空軍志望でね、もう飛行機に乗ってるんだけど、離陸前にコクピットの中から写真を送ってくるんだ。だから、離陸前じゃなくて着陸後の写真を送ってくれって言ったんだよ。

…..うひゃぁ、わかる。すごくわかる。

ほとんどの女性は自分のことをただひたすら喋りたい。が、私は彼の話を喜んで聞いている。私の反応を見ながら、いつ私が会話を乗っ取るかを待ってるようなフシがある。一方で、男性は女性の喋りまくりに慣れているからか、私が話すのを聞く耳ももっている。だから、ちゃんと「会話」になる。

しばらくして奥さんが戻ってくる。挨拶して、また例の女性的会話が始まり、私は黙り聞く側にまわる。彼はそばで黙って聞いている。

幸いにディナーが始まった。私の右隣はEx.とも何度か会っている知り合いの夫婦 。夏のパーティで会った時に離婚したことは話してある。左隣は初めて会う男性 Dino、その隣に彼の奥さん Christina。挨拶する。

このDinoとの会話が最高だった。ちょっとずつお互いのbackgroundが明らかになる。私が日本人だと知ると何度も日本に行ったことがあると言い、私がウォール街出身だと知ると、自分はFRBの為替部門で働いていたときから日本も含めて世界中のあちこちに出張したのだと明かした。大蔵省や都銀とのミーティングと接待である。同じ金融業界出身だというだけで、連帯意識が生まれるから面白い。会話が軽快に続く。

よく聞くことだけれど、彼も絶対行くべき国の一つがインドだと言った。インフラが整っていないインドに行こうと思ったことはないのだが、某氏の知り合いがGoaにいて何度も遊びにこいと誘われているから行こう、という話をしていたのを思い出す。

Goaって行ったことある?どんなとこ?

すると、Goaのビーチで撮った写真を何枚も見せてくれた。

インドは地域によって食べ物がちょっとずつ違うから、どこへ行っても楽しめるよ。大きな国だからね。

サリーを着た奥さんの写真を見て、その色の美しさに息を呑む。あとで、彼女に聞くと、着せてもらうんだけどね、と言いつつ、手元のナプキンを折ってサリーの着方を教えてくれた。広い世界を見て知ってる人は物腰や口調に品がある。普通人とはちょっと違う。

そして、Dinoっていう名前はどこの出身か、ギリシャそれともイタリアかと聞くと、その間にある旧ユーゴスラビアだという。

へぇ。Dinoって短縮した名前じゃないの?
違う、そのままDino。
Dinosaurだね。
そうなんだよ、Dino the Dinosaurっていうと、皆すぐ覚えてくれる。
あははは。うちのムスコが子供の頃は恐竜博士で、今Bio Engineering専攻してるよ。

そこから。地図を見ながら彼の出身地を教えてくれる。マケドニアが近くにある。

あ、マケドニアじゃん。マケドニアといえば、私はアレキサンダー大王が大好きで何冊も読んだんだけどね。
これはNorth Macedonia。マケドニアとしてNATOに参加しようとしたら、ギリシャがアレキサンダー大王のマケドニアはギリシャに属するってこだわってね、North Macedoniaってことにして、ギリシャのMacedoniaとは別にすることで、加盟が可能になったんだよ。
へぇぇぇぇぇ。

The use of the country name "Macedonia" was disputed between Greece and the Republic of Macedonia (now North Macedonia) between 1991 and 2019.

Wikipediaより。

どんな知識も会話の糸口になると思うのは、まさにこういう瞬間。ポケモンの進化も含めて(あれだけは頭脳のムダだと思ってたけど)なんでも暗記できて覚えていられるムスコには、興味の対象が狭いまま成長しないように、小さい頃からそう言い聞かせた。

彼女のKatyaは、自分は"Overthinking(考えすぎ)"で、彼は"Over Explaining(説明しすぎ)"と表現する。

ムスメは「大体、兄貴が講義モードに入ると、どうでもいいようなことでも、ママはいつだって(ヘぇ〜)って感心して聞くから、ますますOver Explainingになるんだってば」という。

だって、ほんとに聞いてておもしろいんだもん。

途中で、奥さんが彼の注意を引いて、彼はそっち側の会話に入り込んだので、私は右隣にいる既知の夫婦と会話を始めたのだが、パーティの終わり頃、もう一度Dinoと最後の会話を交わした。ちょっと考えて、口にするのを躊躇したようなDinoに気づいて、私は言った。

I know how to contact you.
Yes. If you need any traveling advice, let me know.

誕生日girlの彼女に聞けば、すぐに連絡はつけられる。

(続)


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。