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家と気持ちの大整理。

24年間の結婚生活が、アメリカ人夫の一方的な宣言によりある日突然終わることになり、地下(basement)から屋根裏(attic)までの4層階、キッチンやリビングも入れて11部屋、バスルーム四つとトイレ一つを抱えた私は家の大整理を始めた。

事態の把握ができてない呆然状態の私が許可して、野郎は3回に分けて膨大なウィスキーのコレクションと身のまわり品だけを持ち出した。出ていった時「この家、片付けるの手伝うから。君に押し付けるつもりはないから」といい人ぶった彼。二十歳そこそこの独身の男が数年同居していた彼女と別れるわけじゃあるまいし、話し合いの余地もなく24年間の結婚生活を一方的に終わらせたお前と一緒にこの家の整理をお前のスケジュールに合わせて私がするとでも思ってるのか。冗談じゃない。

まずは目ざわりな野郎の荷物の整理から始めた。「全部目を通してないから捨てる前に一応確認してくれ」という横暴を呑み込んだのは、離婚が成立するまでは全てが共同財産だから。使って気に入らなかったら返品せずにそのまま放置。新しいのを買う。気に入らないからまた放置。そういう買い方をするから同じものがいくつもある。もちろんやっと気に入って愛用してるものは本人がすでに持ち出している。

最初はばか正直に写真撮って送って必要かどうか確認したけれど、そのプロセスで感情的にふりまわされることに気づき、ムスメの提案で庭の端っこにある倉庫(shed)に放り込んで、取りに来させることにした。私や子供たちが欲しいものだけ残し、あとは全て箱詰めに。「なんでアナタが梱包してるの?本人にさせなさいよ!」と何人もの友達に怒られたけれど、彼にはこの家の敷居はもう二度と跨がせないと決めたし、顔も見たくないし、作業させてる間に家を空けるのも嫌だから、私のペースで気が向いた時にひたすら梱包して倉庫に放り込んだ。

家族4人で13年一緒に住んだこのサイズの家を私に押しつけて出ていける神経がしれないけれど「俺は手伝うって言ったのに、断ったのは君の方だ」と言うに違いない。断られるとわかってるヘルプを申し出るのはただの独りよがり。家の整理というのは、まずは明らかにいらないものを処分し、暮らしながらさらに何段階もかけて持ち物を徐々に減らしていくものだ。クローゼットの奥に潜んでいた数々の思い出を手にとり愛でて、老後に備えて捨てるか否かの判断をする。彼はその作業を私にまかせ、一人で新生活を始めた。

Midlife crisis it is. 

地下のホームジムで運動しながら、目についたモノ、エクササイズ狂の野郎が買い揃えた数々のモノを箱に詰めて視界から消した。「ストレス発散のために運動してるのに、あのホームジムがストレス!」と友達に愚痴ったけれど、こんなわけのわからないのまで買いやがって、という苛立ちの対象がどんどん目の前から消えていく。

家の中がどんどんスッキリしていく。私の気持ちもスッキリしていく。

友達がくれた、54歳の誕生日プレゼント。画像1

A wise woman once said, "fuck this shit." And she lived happily ever after.

I am better off without him. (いなくなってくれて幸い)

ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。