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免許とったムスメ、独り立ちの始まり。

ムスメが免許をとって一人で運転するようになった。あんなに出無精だったのに、嬉々としてスターバックスやスーパーマーケットやモールに出かけていく。早朝の自主練も、水泳クラブの夜の練習も、一人で行けるようになっり、私は友達とのランチから帰ってきて、もう明日まで外出することはないから、もうパジャマに着替えてワインが飲めるってことか、と思わず笑った。

独り立ち、である。

ムスコの時と違う。彼は後方カメラが付いてないモデル、父親のお下がりだった大きめのSUVを学校通学とサッカーの練習に使っていたけれど、友達と出かける時には友達の車で出かけることの方が多かったし、一人で出かけることも少なかった。性格の違いだろうか。

ムスメに車が必要となった時、小柄な彼女に合った、後方カメラ付きのSUVに買い換えるべきだと私は強く主張した。白羽の矢が立ったのは、Subaru Forester。あのサイズなら、狭い道路も駐車場も縦列駐車も心配しなくて済む。あと2年で大学を卒業したら車が必要になることを想定して名義はムスコにしたが、在学中は必要ないので、高校生のムスメ用になった。

Loanの息子もうちのムスメと同じ年で、最近免許を取ったのに全然運転したがらないと、両親揃って不満そうである。ベトナム戦争の後、10代の時にアメリカにBoat peopleとして移住した二人は、幸せな家庭を築き経済的にも快適に暮らしている。子供たちに自分達が直面した苦難を味合わせたくないのはとてもよくわかるし、良い子に育った二人が自分達の育った環境に感謝しているとは思うが、私から見ていわゆるハングリー精神がない。成績のいい気持ちのいい子だが、タマなしRyanと似て目的に向かって突進する活力がない。豊かな環境での子育ては難しい。

浪費家の父親がいなくなったから、私とムスメは節約すべきところで節約し、かといって貧乏くさい生活はしていない。大学に行ったら仕送り生活になるとわかっているムスメは、今は自分が払うわけではないのに、洋服を買うときも、セールや割引クーポンやポイントを駆使して、「ママ!聞いて!こんなに安く買えた!」と鼻の穴を広げて報告してくれる。

さて、仮免とって路上試験を受ける前のこと。そろそろ運転にも慣れてきたし、家とプールの往復だけじゃなくて、どこか遠出させたいなと思っていたら、ちょうど医者のアポでちょっと遠くまで行くことになった。

あいにく雨の予報。それも結構激しい雨。40分足らずだが高速にも乗る。嫌がるだろうけれど、いい練習の機会。今の彼女なら問題ない。

そう思った私は天気予報のことは何も言わず、運転させた。一般道路でも行ける場所だが、あえて高速に乗るルートを選ぶ。予報通り、すごい豪雨になりワイパーのスピードは最高速度。顔面引き攣ってる風のムスメ。一言も発しない。ちゃんと車間距離をとって、制限速度もあまり気にしないように声をかける。トラックの後ろについて、跳ね返りの雨が襲う。何も言わないのに、トラックから距離をとり車線変更した。ほら、やっぱりちゃんと考えて運転してる。

目的地について車を駐車すると、汗だらけの手のひらを洋服で拭いながら、すごい表情で睨む。

I WILL NEVER FORGIVE YOU FOR THIS! (こんなことさせて、一生、許さないからっ!)

吹き出した私。

何言ってるの。上手に運転できたじゃないの。この経験があれば、いつどこの高速で突然豪雨にあっても、あの時もそうだったけど大丈夫だったし、って自信もって運転できるよ。今のアンタはもうちゃんと運転できるってママわかってたから、雨の予報でもさせたんだよ。お見事でした。

案の定、春休みの大学訪問Road Tripで、ワイパー速度最高の似たような目にあったが、全く問題なく会話も続けられた。

そして。先日、スターバックスに出かけて行った直後に、スーパーでちょっと買い物してきてくれ、とテキストを入れたのに、それを見ずに帰ってきた。今日の夕食なんだけど、というと、じゃあ行ってくると車の鍵を手に取った。

運転、したいんだわねー。

イタリアンソーセージとモッツァレラチーズと生クリームしか頼んでないのに、大騒動になった。

もちろん何度も一緒にそのスーパーには行っている。が、ムスメはまるで注意を払っていなかったし、自分用のお菓子とヨーグルトくらいしか探したことがないから、肉の種類もひき肉とかたまり肉の場所の違いもわからない。涙まみれ困惑のテキストのあと、電話がきた。

ママ、全然わからない!

と写真を送ってくる。

違う、そういうソーセージじゃなくてひき肉のコーナーにある奴。普通のでもチキンソーセージでもいいけど、イタリアンソーセージ。スパイシーじゃない奴。
うぇーん、わかんないよぅ。挽肉ってどこ?
ビーフ、ポーク、チキンの他に、挽肉って札が下がってるでしょ。
……あったぁ!

独り立ち、の道のりは長い。でも、一歩ずつ。

ある週末。友達からランチの誘いがかかった。ワイン一本持ってこいとのお達し。

ねぇ、送ってくれないかなぁ。帰りも迎えに来てくれない?
いいよー。

二人でワイン一本空けて、ムスメが車で迎えに来てくれて、助手席にてほろ酔い気分で帰宅したのでした。







ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。