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ボストン旅行。カジノと水族館。

三日目の土曜日。
ハーバード大にサバティカルで一年滞在している知人とランチ。メールだけのやりとりを10年以上続けてきて、ついに初の対面。
Cambridge の近く Davis Square のクレープ屋さんで。

電車で行ったのだが、クレープ屋まで Katya が車で迎えにきてくれてそのまま彼女のお母さん宅へ。そこで着替えて準備して、夜に彼女の60歳の誕生日パーティをボストンハーバー沿いにある Encore というカジノで。

私はラスベガスに行ったことがあるけれど、ギャンブルにはまるで興味がない。アホか、と思っている。ラスベガスに行ったのは20年以上前の話で、規模自体がアメリカでは最大だし、ほんとに1セントでスロットマシーンが使えて$5 で長々と遊んだもんだった。

Encore に足を踏み入れてまず驚いたのは、すべてがデジタル化してたこと。ルーレットまでデジタル。ブラックジャックはデジタルとテーブルと二種類あったけど。マシンが現金を吸い込む。マシンによって一回最低いくらから賭けられるかが違うのだが、例えば最低40セントのスロットマシーンはそれを二倍三倍、$1$2に変更することもできる。

そして。あとは、ボタンを押すだけ。文字通り、押すだけ。
あれじゃあ、携帯でゲームやってるのと変わらない。

$5札を入れたら、1分もたたないうちに$10.40 まで増え(二倍だよ!)3分もたたないうちに、残り$1を切った。
"Cash out"のボタンを押すと、Voucher がでてくる。
これをどこかで現金に換金できるはずのだけど、隣のマシンに飲み込ませて賭け続けることもできる。$20まで遊ぶつもりだったけれど、あまりにバカバカしくて、そこで止めた。この Voucher はムスコに本の栞にするようにと渡したら、「それはいい」と笑っていた。

フロアではアルコールが無料。お酒飲みたい放題で、騒音とけばけばしいライトの下で、せっせとお金を使うわけだ。
土曜だったけれど、ほぼ満員満席。すごいよねぇ、と変な感心をする。

どこにお金を使うか。こればかりはほんとに人それぞれ。

50代60代となると、いわゆる "Bucket List" の一つとして30代40代だった頃には考えもしなかったようなことを死ぬ前にやりたい、みたいな話になる。
大抵、遠くの国に行ってみたいとか、ヘリコプターからパラシュートで飛び降りるみたいな命の危険を侵すようなことをしたいとか。ギャンブルとか美容整形なんかもありかもしれない。

だめだ。私にはそういう発想はまるでない。
子どもたちに遺産を残さなきゃという発想もない。親の遺産をアテにするような人間には育てていない。


四日目。日曜日。
朝から水族館。

ムスコは昔から恐竜とか昆虫とか生物系が大好きで、だから大学の専攻も生物工学。水族館のツアーガイドにしたら一流なので、私にとっては彼と水族館に行くなんてのは、とっておきの楽しみ。ムスメは、兄貴の長々とした説明や、どうでもいいような知識に耳を傾けて楽しむ余裕がないから、「ママが、いちいち『へぇ〜』とか『ほぅ』とか感心するから、話が長くなるのよ!」とよく怒っていた。

今回はムスコと二人きりで水族館。わくわくである。電車を乗り継いで行くから遠足気分。彼にとっては友達と、そして一人で行ったのも含めて4回目だったそうな。ベテランだ。

真冬のボストンで誰が水族館に行くんだろうと思っていたら、家族連れでいいっぱい。三連休の日曜だったから、小さい子供連れの若い夫婦が血相を変えていた。

エレベーターからぞろぞろと数家族が降りてきて、お母さんが子供を数える。
"One, two, three, four…we have everyone!!" と叫んでいた。

わかるんだよ、わかる。

そんな小さい子達に混じって、私は水槽の前にぺたりと張り付き、その後ろからムスコが指差しながら説明をしてくれる。水槽のなかで「隠れている」ように見える小さな生き物をムスコはすぐに見つけ出して教えてくれる。

かなり小型のペンギン。

ペンギンがよちよち歩き、水に飛び込んですいすい泳ぐのを見ながら、スイマーだった、ちんこたいムスメのことを思う。
長い足?尻尾?を絡ませたクラゲがゆらゆら浮いているのを見ながら、さんざんムスメの絡まったネックレスを直してあげたことを思いだす。

クラゲって幻想的。
Starfish=ヒトデ。太ももからすっとふくらはぎにかけて細く..なんて風に見えてしまう。
鮭ってさ、中身がピンクとは思えないような怖い顔つきだよね。

ロブスターとか Bass とか鮭とか、普段食べる魚を見ては「美味しいよね〜」と言い合う母とムスコ。牛豚鶏は食べないけど魚は食べるなんてのは主旨が徹底してない奴ら。でも Vegan には到底なれないと、二人で笑う。

そんなに大きくない水族館でたっぷり2時間満喫。
「すっごく楽しかった!こんなに楽しかったことない!」と何度もムスコに伝える。


時々むしょうにハンバーガーが食べたくなる私は、前日に、水族館の後のランチに何が食べたいかと聞かれて、とっさにハンバーガーと答えていた。

ムスコによると、Boston Burger Company がボストンでは一番美味しいという。

手前が私のチーズバーガー。向こう側のがムスコので、
ハンバーガーに加えて、BBQ pulled porkとべーコンがのっている。

さて。ここのバーガーは確かにスーパー美味しかった。

まず。Medium で頼んだ牛肉が見事にジューシーである。ハンバーガーはケチャップ等を塗ってからパンに挟んでぎゅぅっと押して「薄く」して両手で鷲掴みにして一気に頬張る。食べ終わるまで、手からバーガーを離してはいけない。崩れるから。ここのバーガーが優秀だと思ったのは、柔らかさを売り物にしたパンが途中でちぎれて崩れることが多いのだが、このパンは最後までしっかりと形を保ったまま。手指が全然汚れなかった。ホームメードのチップスも、カリカリで歯ごたえある厚さ。

超大満足で、帰宅。そして「ハガレン」


夜は、友達とフランス料理。会話が弾む。

前菜に Duck Liverのパテ。カリカリにまでは干あがってないブドウをノセて。絶品。
こんな風に調理されたSoleを食べたことはない。絶品。いんげんの火の通り具合が完璧
チョコレートムースと、タルトタタン。

このときは、お腹はほぼ 100% までふくれたけれど。
つくづく思う。量が多い。

前菜のパテは半分が限界。メインの皿は完食。
デザート。私は自分の分としてそれぞれ半分食べたけれど、友達は数口しか食べなかったと思う。

そうそう。
メインはすぐに決められたけれど、前菜をどうするか、このパテと Leek, Prosciutto & Gruyere Tart とで迷った。ウェイターが注文を取りに来て、その瞬間にあることを思い出した。

この本のあるシーンで、伯爵が「メインを決めてから、それに合わせて前菜を決める」と説明する。読んだ時、うわぁと思った。考えてみれば、そりゃそうだ。ビーフなら赤ワイン、魚なら白ワインというのはわかるけれど、前菜とメインの関係には気づかなかった。

当たり前といえば当たり前なのに。

Sole をメインにしたいのだけれど、前菜はどっちがいいかしら、と聞いてみた。すると、彼女は「パテがいいですね」と即答した。

何が食べたいかというのはもちろんあるけれど、どっちがいいかなと迷った時、メインと前菜の組み合わせで考えればいいんだ。

小説のなかで語られる小説(もちろん、古典であることが多い)を読むようにしている。古典は「基礎的な教養」なのだが、そうであるだけにあちこちで「引用」されるということ。何度も出くわすと、やっぱり読まなきゃと思う。

先日は、"The Namesake" (by Jhumpa Lahiri) という小説の中で、大きな役割を果たす "The Overcoat"(by Nikolai Gogol) を読んだ。"The Namesake" の登場人物が「ドストエフスキーが、ロシア文学者はすべてGogolから生まれた、と言っている」と言う。へぇ、そうなんだ、と思った。そして、ふと前述の ”A Gentleman in Mosow" で、伯爵が「ロシアが生んだ芸術家達」を列挙するシーンを思い出した。トルストイも、チャイコフスキーも、ドストエフスキーも、皆ロシア人。

ロシア文学に触れてみようか。「これは読んだほうがいい」とムスコとムスメの二人に言われて、私は「戦争と平和」を英語で読み始めたところ。

若い頃、あのぎこちない和訳が嫌で、一切の翻訳作品を読まなかった。

6時半に待ち合わせて、お店が閉店の準備を始める10時過ぎまで。

アパートに戻り「ハガレン」。エピソード18まで観た。
続きは、ムスコが3月の春休みに6泊で帰ってきたときに。

ここで終わらせようかと思ったけど、次が最終編。


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。